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2020年8月12日水曜日

香港の民主化活動家逮捕に関する中国の報道

封印されしドラえもん

 今朝、以前に香港で戦っていた(ブラック企業と)後輩から香港の民主化活動家の逮捕などの弾圧について、中国ではどういう風に報じられているのかと聞かれたので、この点についていくらかまとめます。結論から書くと、まず多くの日本人は中国の報道規制を過大に考えている一方、日本のメディアの報道を何か勘違いしてみているのではと思っています。

 まず最近日本で大きく報じられている、民主化活動家の周庭氏と「蘋果日報(アップルデイリー。「ひんかにっぽう」と書いているメディアもあるがセンスがないと思う)」創業者の黎智英氏の逮捕ニュースについては、中国でももちろん大きく報じられています。なお余談ですが、アップルデイリーは知ってる人には非常に有名なメディアで、世界で最初に鄧小平の死を報じたメディアでもあります。その報道時に使われた写真は病院のドアの隙間から盗撮した写真で、報道が出てから間もなく中国政府もその死を公式に発表しました。

 話を戻すと、恐らく大半の日本人は上記逮捕事実は中国では全く報じられていないと思っていたのではと思います。しかし実際には日本で報じられている内容はほぼすべて中国でも報じられており、誰でも簡単に閲覧することができます。それこそ、周庭氏が取り調べ中に日本の欅坂の歌詞を思い出したと発言したことも普通に中国共産党直系メディアの環球網も報じているし、むしろ英ITVの特約記者が逮捕されたとすぐ報じているあたり、日本以上に香港国家安全維持法関連の報道は充実しています。まぁこれは中国が包み隠さず報じているというよりかは、日系メディアが何も独自に取材して報じていないというのが種明かしなのですが。

 日系メディアの報道の出典等をよく見ればわかることですが、基本的に現地メディアの報道を翻訳して流しているだけで、独自の取材活動に基づく報道はほぼありません。いくつかは地元香港人へのインタビュー記事などありますがそこまでニュース価値があるわけでもなく、また香港情勢に詳しい専門家よりも、よくわからない日本国内にしかいない政治学者とかへのインタビューの方がよく出てくる辺り、お里が知れるところでしょう。
 この点は自戒も込めて書きますが、海外報道というのは基本的にほぼすべて現地メディアの情報を引用するだけで、現地メディアが報じる以上の内容は日本のメディアが報じることはほぼありません。それどころか、現地の突っ込んだ報道こそ裏付けが取り辛いこともあって、引用報道はされなくなる傾向があります。

 その点で言えばむしろ中国本土の方が取材ネットワークが香港もカバーしていることもあって、日本以上に現地の情報を拾ってくることが多いです。また現地香港メディアの報道も同じ中華圏ということもあって、引用報道の本数は必然的に日本以上に多くなります。

 ここで最初の話題こと、中国は民主化活動家逮捕などに関して報道規制しないのかについてもう少し触れますが、別にそこまでシビアな話題でもないし、そこまで中国がSFなパノプティコン国家というわけでもありません。香港国家安全維持法についても、中国メディアはその法的意味と価値を盛んに訴える一方、日本などを含む諸外国から批判されている点についても報じています。むしろ日本と米国の視点からでしか報じない日系メディアよりも、中国メディアの方がもっと他の国からの批判も取り上げているだけ日本以上に報道の幅は広いです。

 その上で言うと、諸外国から批判を受けていることを知った上で中国人は、この香港国家治安維持法を支持しています。理由は単純に香港のデモは暴動でしかなく、民主化を叫んではいるがその実態は社会への不満の憂さ晴らしと、米国の陰謀だと考えているからです。
 香港デモが激しかった頃に日系メディアがほとんど報じなかった内容の一つとして、香港デモの活動費の源泉に関する話題があります。中国メディアなどは香港の米国大使館などからでも関係者、民主化活動家らに資金が流されていると報じ、これらデモを米国が裏で糸を引いている、若しくはわざと拡大させていると報じていました。

 この報道を真実と取るかはそれこそ人に拠るでしょうが、私は規模はわからないけどまぁ米国はやっていただろうなと考えています。というのもちょっと前の米国における黒人差別デモにおいて米系メディアは、デモの主催者らに中国大使館が資金を流していると報じていたからです。
 世の中平和なんてことはなく、こうした相手国で内乱を誘発させたり拡大させたりするのはどの世界でも日常茶飯事です。ましてや米国なんてイランで昔CIA使って国ごとひっくり返したこともあり、むしろこの分野では最先端をひた走っています。そういう意味で米国も中国も、香港デモと黒人デモでお互いにでも主催者を応援していたと言われても別に私は不思議に思いません。っていうか、「やること似ていて米国も中国もお互い仲いいじゃん(^ω^)」とか思ってます。

 話を戻すと大半の中国人は香港デモについて、民主化を叫んではいたがその実態は外国からの支援を受けた内乱誘発行為でしかないと信じ切っており、香港政府が抑えきれなかったのだから中国が強権を使って抑え込むのは仕方のないことと考えています。なので外国から批判されたとしても、批判している国は内乱を誘発させたい国、若しくは現地の実態をよく知らずに発言しているという風にしか思っていないでしょう。
 ある意味で、こうした中国人の見方は正しいと私も思います。少なくとも日本のメディアに関しては香港デモ、そして今現在の香港の状況について現地報道を引用する以上の報道はほとんどしておらず、自らその実態を探るような動きは私には見えません。方針を見定めるには、絶対的に取材、報道量が足りていないというのが今の日本の状況です。

 というのが香港に関する報道の私の見方ですが、単純に香港としてみた場合、今や完全な衰退期に入っている地域というのが私の見方です。香港だからこそあるという特色やメリットは年々小さくなっており、観光に関しても今はコロナで国境移動が制限されているけど、コロナ以前は中国人も海外旅行に行きやすくなったことからやや色が薄れてきており、遅かれ早かれ厳しい立場に追いやられる地域であったという風に見ています。
 それがたまたま去年のデモで早まっただけ、というのが現実的な見方です。もしも本気で運動を成功させたかったのであれば暴徒が出ないよう徹底する必要があったし、それに失敗した時点でもう負けは決まっていたでしょう。

 ただ、中国政府も中国政府でここで香港を急激に締め付ける必然性は感じられません。それこそゆっくり時間をかけて骨抜きにしたりする方が穏便且つ確実であったにもかかわらず、今年中盤にコロナが一段落してからというもののかなり激しく香港の民主派の弾圧に乗り出してきました。
 無論、内乱誘致への危機感もあるでしょうが、それ以上に去年に散々邪魔されたことに対する報復めいた感情が感じられ、ややスマートでないという気もします。だからこそ日本や米国の様にここぞとばかりに批判される口実まで与えてしまうし、私も私で中国政府は意外と余裕がないのかなという風に感じたりします。まぁ素人の一意見ではありますが。

4 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

このドラえもんの表情 切れちまったよaa(アスキーアート)に似ていますね。 
(※ 切れちまったよ とは 本宮ひろ志のマンガ『サラリーマン金太郎』の
  名場面の一つであり、その場面をドラえもんの顔で再現したものです。
  ドラえもんの怒りを表現するために 劇画調のタッチとなっています )
  

花園祐 さんのコメント...

 自分はそのネタだと「珍入社員金太郎」のタイトルが浮かびます。同じ芸風でこれほど長く漫画を描き続けているギャグマンガ家はこの人しかいないでしょう。
 この画像はネットで拾ったやつですが、実際にここにドラえもんが封印されていると言われたらマジで信じちゃいそうです。

上海熊 さんのコメント...

私も花園さんの意見にほぼ同意です。

個人的には最初に報道やTwitterが周庭に対してばかりでアップルデイリーに言及してるのが著名人でもあまり居なかったことに失望しました。

アップルデイリーは経営陣が一網打尽されたのだからメディアの著名人も一人の女の子よりこっちに注目しろよ、って言いたくなりました。

とかく早く大陸へ行きたいです。(最後のコメント香港関係なくてすみません)

花園祐 さんのコメント...

 いつもながらコメントありがとうございます。
 周庭氏が目立っちゃうのはわかりますが、おっしゃる通り中国政府にとっても宿敵であるアップルデイリーへの言論弾圧こそが最も中核ですが、あまりその辺を日系メディアは拾い切れてませんでしたね。また香港の日系企業、社会への影響もあまり取り沙汰されず、いくら何でも現地報道の引用ばかりじゃないかとちょっと呆れます。
 日本もそうでしょうが今の上海はやばいくらい暑くて、今日も室温ですら32.8℃まで行って、普通に冷房ないと死ぬと思いました。仕事一段落して来週から自分も休み取れますが、こんな暑い状態で休みになっても全くうれしくないし(;´・ω・)