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2021年5月23日日曜日

ブラックラグーンのロックとレヴィの関係

 作者の休止による未完という「ベルセルクショック」の余波でガラスの仮面やヒストリエなど、連載がなかなか進まない作品の完結を懸念する声が各所で広まっていますが、自分がこの方面で真っ先に気になったのは他でもなく「ブラックラグーン」でした。
 2001年に連載を開始してから今や20年経つこの作品ですが、2010年まではコンスタントに連載されていたもののそこで話が一区切りして以降、掲載回数が極端に減り、2009年に9巻が発行された後、10巻は2014年、11巻は2018年の発売と大きく間隔を空けており、作者の広江礼威氏も気にしているようですがかなりの牛歩ペースとなっています。

 どうでいいが「ぎゅうほ」と入力していきなり「牛輔」と出て来たけど、こんな変換使う三国志マニアはそんないないと思う。

 話を戻すと、そんな掲載ペースが遅いながらも完結が懸念される辺りはやはり人気作というべきで、実際こちらのページのようにこれまでの作品展開についてかなり激しく議論されるなど未だその人気に衰えは見られません。私自身も最初に中国行く前に読んでハマっており、時たま古本でまとめ買いした当時のブックオフとか懐かしく感じます。ちなみに当時一緒に買ってたのは「でろでろ」。

 そんなこの作品の主人公は岡島緑郎ことロックで、名前からしてわかる通り日本人です。作品を知らない人向けに説明すると、彼は元は大手商社のサラリーマンで、仕事で重要書類とともにタイ近海を船で航行していたところヒロインらに書類を強奪された上、身代金目的で誘拐されました。その後、彼の勤務先の大手商社は書類自体を「なかったこと」にするため、ヒロインの所属する運び屋グループを主人公もろとも殺害殲滅しようとし、主人公は見殺しに遭います。
 最終的には主人公の機転で殺害に来た武装勢力を撃退し、勤務先もやれやれとばかりに金払って書類を取り戻すのですが、この一件で見切りが付いた主人公はやってきた上司に決別を叩きつけ、そのままヒロインのいる運び屋グループに所属しアウトローへの道を歩むこととなります。

 その主人公をアウトローの道に引き込んだのは前述の通りヒロインのレベッカ・リーことレヴィなのですが、このロックとレヴィの関係がやっぱ特殊だと何故かこの前同僚と話していました。どうして特殊なのかというと、一般的な漫画においてお決まりの恋愛関係ではなく、若干共依存的なものがあるからです。
 ロックとレヴィは作中でも名コンビぶりを発揮しており、主に作戦や方針をロックが立て、腕っぷしで圧倒的なレヴィがそれに応じる形でロシアや香港のガチ怖いマフィアのもめ事を次々と処理していきます。両者ともに相手の力量を認めていることから信頼関係は高く、たまにレヴィがロックの甘さぶりに苦言を呈すことはありますが、基本は無茶な要求であってもロックの頼みならとばかりに何でも引き受けてくれます。

 ただ、レヴィがロックの無茶な頼みを毎回聞く背景には、明らかに贖罪意識が作用していることが作中でも明確に書かれています。どういうことかというと、元々日の当たる世界で生きていたロックを、前述の通り身代金目的で誘拐したのはレヴィで、それがきっかけでロックがアウトローに身を置く羽目となってしまいました。
 レヴィ自身は米国のスラム街で育ったことから元から日の当たらない世界の住人ですが、それだけに日の当たる世界への憧憬が強く、自分は仕方ないにしても元からその世界にいたロックをこちらへ引きずり込んだことに対し、何度も後悔している素振りを見せています。

 そうした後悔もあって、ガチ怖いロシアマフィアの姉さん(声優がガチハマり過ぎ)の仕事でロックと一緒に日本に行った際、レヴィはロックに残してきた家族に顔を出せに行けと後押しします。顔を出しにと言うものの、本音ではそのまま日本に残り自分たちアウトローと袂を分かつよう仕向けたのですが、レヴィの思惑とは逆に、ロックは家の前まで行ったものの家族とは合わずにレヴィの元に帰ってきてしまいます。でもってレヴィに怒られる羽目にも。

 上記のようなレヴィの配慮を受けてきたロックですが、彼自身はむしろみかけ倒しの日本人としての生活よりも、現在のアウトローとしての生活の方が生を実感できるとして実は歓迎しています。ついでに言えば他のマフィアの大物にも「元から悪党向き」だなどと評価されています。
 そのような心境から、ロックの方はむしろレヴィに対してくだらない日常から救い出してくれたという感謝のような気持ちを持っているのですが、前述の通りレヴィは逆にロックに対し申し訳なさを覚えており、若干すれ違った共依存のような関係を持っています。だからといってロックも完全にアウトローに染まり切っているわけではなく、その辺の右左にぶれる姿勢もこの作品の見所ですがその点についてはここでは無視します。

 ロックとしてはレヴィの贖罪意識、そして自分自身への配慮をしっかり気づいており、それだけにレヴィに対しては気にするなと何度も伝えているものの、レヴィの側では未だに割り切れない心境のままとなっています。逆にそうした贖罪意識を捨てきれていないのを見てロックもレヴィに寄り添っている感があり、他の漫画では見られない妙な主人公とヒロインの関係が出来上がっているように見えます。

 この関係ですが、あまりはっきりと言及されたり意識されたりするわけじゃないですが、現実の人間関係においてもかなり重要な一端を担うとかねてから考えています。その辺についてはまた次回で解説しますが、改めて自分はやっぱこのブラクラ好きなんだなと書いてて思います。

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