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2009年4月30日木曜日

大衆消費社会の復権はあるのか

 もうすでにこのブログも解説から一年半くらい経ち、検索ヒットワードを調べてみるとそれこそいろんな言葉が入っていて自分で見ていてもそこそこ楽しいのですが、中には自分が全く意図していなかった言葉が検索数で上位に入っていてしばしば驚かされます。そうした検索ワードの中の一つに、「トリクルダウン」という言葉が入っており、これはそのままの題となっている「トリクルダウン」の記事がヒットするのだと思うのですが、自分としてはこの記事はそれほど意識して書いた記事ではなく、ほかでもこの経済学用語をもっと詳しく解説しているサイトも多いのになんでもって自分のサイトに来るのかといろいろと不思議に感じています。

 そんなトリクルダウン、意味は件の記事でも書いている通りに今は亡きミルトン・フリードマンが生前に唱えた経済論で、要は金持ちをもっと金持ちにすれば経済全体のパイが大きくなって所得の低い人もその恩恵を受けることでみんなで所得が増えていくという主張ですが、この政策を強烈に推し進めてきたブッシュ政権が終わった挙句にこの時のしわ寄せで今大不況となってしまったことから、このところ一挙に死語と化しつつあります。

 その一方で、かつての高度経済成長期に金科玉条とされた経済政策の「大衆消費社会論」は復権するのかといったら、経済誌やテレビでの言論を見ている限りまだあまり大きな動きにはなっていないように私見には感じます。この大衆消費社会論というのは変な横文字のトリクルダウンと違ってわかりやすく、文字通り所得の低い層にお金を使って消費力を高めて中間層を増やすことにより、経済全体のパイを大きくなるという経済原論のことです。
 敢えて比較するとしたら、トリクルダウンは積み上げていって大きくするのに対し、大衆消費社会論は底上げをして経済規模を大きくするというような具合です。

 前回の記事でも書きましたがトリクルダウンは主に南米諸国で政策的に誘導が行われたものの、現象としては実体を伴った経済成長は一度も起こったことはありませんでした。それに対して大衆消費社会論は高度成長期の日本を始め、今現在のお隣の中国を含めて世界各国で経済成長を達成しております。
 もっともこの大衆消費社会による経済成長には限界があるとしてトリクルダウンが提唱された背景があるだけに、これが万能な経済政策だとは私は思いません。しかし現在の日本を見ると若者の失業率が依然と高いままで、また最低限度の生活も保障されずに派遣労働をして食いつないでいる姿を見ると、今であればこの大衆消費社会を誘導するような政策は効果を出せるのではないかと考えております。

 では具体的にどんな政策をすればいいの、かつての高度経済成長期のように政府が税金をばら撒けばいいの、それだったら今度の麻生政権の補正予算は税金使って大盤振る舞いだからいいんじゃないの、という風に考える方もいるかもしれませんが、私は今度の補正予算案は高度経済成長期とは全然逆の志向を持つ、むしろトリクルダウン的な要素の方が強い内容だと思います。というのもハイブリッド車を購入すれば最大二十万円還付されるとか、ETCをつければ高速道路が千円で乗り放題とか、エコ家電を買えばエコポイントが付くなど、どれもそうした自動車や家電を購入できる層にしか恩恵が来ない内容だからです。そうしたものを消費する余裕がない層や、本格的に費用がかかりだしてくる中学生、高校生の子供を持つ世帯ではなく三~五歳の子供を持つ世帯に三万六千円を配るなど、どこかピントがずれた内容にしか思えません。

 格差がどうのこうのと言うつもりはありませんが、一体どんな社会を目指してどんな政策を取るのか、そうした姿が見えてこない今の法案については私は徹底的に反対です。

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