先ほど友人と一緒に夕食をしながら話をしてきたので、今日はちょっとその際に出てきた大学の定員数にについて話をします。
国立はともかく私立大学では大学学部の定員は自由に決められると私の周りでは信じている方が多いのですが、実際はそうではなくて学部の定員数というのはあらかじめ国によって決められています。特に最近問題になっている医師不足問題の発端となったのは当時の文部省が社会にいる医者の数が多すぎると、実態的には当時でも不足していた上に現在のように高齢化が進んで需要が高まることが予想されていたにもかかわらず、医学部の定員数を増員するどころか政府は逆に毎年徐々に削減していったために、いわば人災的に引き起こされたという面も少なからずあります。
その一方でこれは私が現役の歯科医の方から直接聞いた話ですが、現在歯科医は逆に社会の中で過剰に有り余っている状況で、歯学部を出た若者がいたとしても既に開かれている医院では新たに人員を雇う余裕がなく、かといって自分で医院を開設しても他にも医院は有り余っているのでとても生活することが出来ず、続々と社会に出る歯学部の卒業生たちはどうしようもない状況に追い込まれているそうです。
この話をしてくれた歯科医の方は文部科学省の役人たちは需要予測からこうなることがわかっていたはずなのに、歯学部の定員を減らしていかなかったばかりに歯科医ならやっていけると勘違いした若者を路頭に迷わせてしまっていると激しく怒っていましたが、どうもほかからも伝え洩れる話を聞いていると現実にそのような状況が広がっているらしいです。
このように大学の定員というのは分野ごとに世に送り出す人材数を決めてしまうので、その時代ごとの需要に合わせる形で対応していかなければ後々の社会に対して大きな悪影響を及ぼしてしまう重要な変数なのです。ですがこの定員、実際のところは先ほどの医師の例の様に将来はおろか現実の状況すらもきちんと把握されずに決められているケースが極めて多いといわざるを得ません。
まずその代表格は理系学生の定員です。現在工業分野といった方面の理系の人材が日本で不足し始めていますが、この問題を解決するためとして理系学部の定員数の増加や文系学生より費用のかかりやすい授業費の補助といった対策は私見ではあまり行われていないように思えます。もっとも理系学生については最近の中高生の理科離れの影響もあって一部の大学では定員割れも起きているそうなので、定員を増やしたからといって人材数が増える可能性は非常に低いと言わざるを得ませんが。
ちなみに理系学部の増員という話では、2007年に大阪外語大学が大阪大学に統合される際に外語学部の定員が減らされ、その減らされた分だけ理工学部の定員が増員されたという話を聞いたことがあります。これは各大学ごとに定員数を政府が縛っているため、大阪大学が大阪外語大を統合することで外語大の定員数を得たことにより行えた、言うなれば同大学内の定員調整といったところです。大阪外語大出身の私の先生はこの時に滅茶苦茶怒っていたけど。
このように学部の定員は文科省がいろんな意味で縛っているので、私立であろうとそうおいそれと増やすことが出来ないそうです。基本的に文科省は定員割れを起こしているいわゆるFランク大学の出現を受けてあまり定員の増員は許可しない方針だそうですが、新たに学部を新設する際の定員増員はまだ認めているため、慶応学部がやりだして以降はいろんな大学で新設学部のラッシュが続きました。
ただこの学部新設ももちろん文科省の許可がいるのでそう簡単にはいかないのですが、実は「国際~」とか「政策」という名前の付く学部は比較的新設の許可がおりやすいと言われています。というのも文科省が、
「国際性豊かな人材が今後のグローバル時代には必要」
「プランを具体化して実行する人材が日本には不足している」
という掛け声の元で、このような名前の学部新設を許可しまくっているそうです。そのため中には大学運営のためにまず定員増員ありきで、新設する学部でどのような教育を行うかも何も考えずに学部新設の申請作業を始める大学も少なくないそうです。そのため私が大学受験をする際に予備校の講師から国際と名の付く学部には気をつけろと注意を受けましたが、改めてこのような学部の実情を見るにつけて講師の助言は間違っていなかったと確信しています。まぁ私の行った文学部もあまり人のこと言えないんんだけど。
4 件のコメント:
そういえば、僕の大学でもいろいろな学科や学部が立てられてますね。
理系離れの点では、僕の機械工学科では入学当初170人いたのが現在では120人に減少しています。また、僕の友人が在籍する大学の工学部の学科(私立)では三分の一の人が留年したそうです。だから、入ったとしてもやめていく人もいるので定員を増やしたとしてもあまり効果はないというのには共感します。まあでも、現在の不況では工学部の学生があふれるのは必至ですが・・・ \(T▽T)/ ・・・。
まさにその通りで、理系に進んだからといって将来の旨味があまりにもなさ過ぎるという現実が今のような技術者不足を招いている最大の原因でしょう。
この記事ではわざと曖昧にして書いていますが、文系学部の定員が多すぎる上に学部新設が相次ぎ、適当に大学に進学しようとする人がそっちに流れていってしまっているというのも理系離れに影響しているのではと考えています。言ってはなんですが文系学部で何かにこだわって勉強したいのでなければ、理系学部へとその人材を行かせる仕組みにする方が当人にとっても全体にもいいのではないかと思うのですが。
私なんかは文系に異様にこだわって進学しましたが、もし出来るんなら理系学部に入りなおしたい気もあります。
学校も一企業なんです。だから若者が好みそうなフレーズが必要なんです。
で、問題なのは自発的に国際色のある人間(笑)になろうとしない若者ではないでしょうか?
そもそも国際色豊かな人材とはどんな人材なのかという定義もなく、大学も文科省もわけのわからない学部を新設しているでしょう。私なんかはそうして無理に国際ルールに合わせた人材を作ろうとするより、日本のルールを国際ルールに持っていこうという風に考える方が建設的だと思うのですが。
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