鳩山首相が就任直後に向かった遊説先のアメリカにて、CO2排出量をを90年基準で2020年までに25%も削減すると発表し、国内外において賛否両論、というよりは、「そんなの出来っこない」という大ブーイングを招いたのは記憶に新しいかと思います。私も当時にこのブログにてその発言を取り上げましたが、どうせ欧州諸国も目標を立てたところで達成できる国などほとんどないだろうから、一時とはいえ言うだけ言って注目を浴びただけでも良かったのではないかと、やや肯定的にこの鳩山宣言を評価しました。
しかし世の中とはなかなか広いもので、イタリア史作家の塩野七生氏は文芸春秋のコラムにて鳩山氏のあのCO2削減宣言について以下のように評していました。
塩野氏はアメリカを始めとした先進国、中国を始めとした発展途上国(最近なんだか新興国と言う表現を使うようになってきたけど)に先駆けて、日本は環境問題に真剣に取り組むという姿勢を強く打ち出した鳩山氏のあの宣言は今後の日本の外交にとって大きなイニシアチブになるとまず褒め称えました。CO2の削減目標の達成の実現性については塩野氏もこれははっきりと無理だと言うものの、鳩山首相のあの宣言の冒頭に、「アメリカや中国が歩調を合わせるのならば……」という一文が混ざってあった事に着目し、要はこの二カ国が日本同様に削減目標を持たなければ実現しないでもよいという逃げ道があの宣言にはあるとして、今後はこの両国の参加という前提条件を他国が忘れないように繰り返し言い続けるだけで環境問題に対し、ほぼ無傷で国際社会で相応の地位が保てると分析していました。
こう言われてなるほどと思い、もし塩野氏の言うような意図であの宣言を行ったと言うのであればなかなか大したもんだったとあの鳩山首相の宣言に対して私も見直したのですが、となると肝心になってくるのは前提条件となっているアメリカと中国の対応で、果たしてどんなものかと今日の世界の気候変動に関する会議である「COP15」を前々から楽しみにしていたところ、開催前には中国も具体的な削減目標を設定してくるという報道があったものの今日の会議においてはいつも通りに先進国がまずもって削減する必要があり、発展途上国はまだその段階にないとインドとともに主張してきました。このまま行けば、塩野氏の言うように日本の目標達成の前提条件は崩れてくれます。
また日本側もなかなか周到なもので、会議開催前の昨日の段階にてすでに、「京都議定書の単純延長には調印しない」と発表しており、うまくいけばあの削減目標を無視しながらこれまで日本を縛ってきた京都議定書の呪縛から解き放たれる事ができるかもしれません。
今日の段階でこのCOP15はこの調子だと何も決まらずに終わりそうだという事で、最終日に首脳同士の会合にて何らかの合意を得て終了するのではと報じられていましたが、開催直後の今日になって面白いニュースが飛びこんで来ました。
・TBSの動画あり 約2週間以上のおくれで日本でも報道が始まった模様です
上記リンクは相互リンク相手のdotcom07さんのページですが、このページにて紹介してあるニュースというのも世界の温暖化を始めとした気候変動の調査に対して権威のあるイギリスの研究所のメールが流出した所、温暖化にそぐわないデータの改竄やら隠蔽をほのめかす内容が多数見つかったそうです。時期も時期なのでこれは一種のブリティッシュジョークなのかと思うくらいのタイミングの良さですが、これからCOP15がどう転ぶか、またdotcom07さんの言うように日本のメディアがどう報道するか観察のし甲斐はあるかと思われます。
追記
その後中国はこのCOP15で、
「中国は過去15年間、単位GDP当たりの二酸化炭素排出を47%削減した。2010-2020年にはさらに40%-45%引き下げる」(サーチナ)
と一応目標を設定したようですが、単位GDP辺りって総量だといくらになるのか、多分その辺にいろいろロジックを組んでいるのを見越して各国も批判を行っているようです。
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