ページ

2009年12月20日日曜日

北京留学記~その二五、NEC中国人社員①

 また大分時間が空いての北京留学記です。このところ時期的に急いで書かないといけない内容が多くてなかなか取り掛かれてませんが、このまま年末にラッシュをかけてなんとかこの連載を今年中に終わらせたいものです。

 それでは早速本題ですが、前回の連載記事では私が旅行の帰途であった青島のサラリーマンとの会話を紹介しましたが、今回も同じくサラリーマンで、NRCの中国法人に勤める中国人社員との会話です。
 何故NECの社員と会話する機会ががあったのかというと、留学も終わりに近づいた2006年7月に、私より一足先に日本に帰るある日本人留学生仲間から自分のかわりにバイトに出てくれと頼まれた事がきっかけでした。そのバイトというのもNECの中国人社員と日本語で会話して、彼らに日本語のレッスンを行うというバイトでした。

 このバイトでやる事はそれこそ日本語で適当に話すだけで、会話する中国人社員らも日本での研修を一年近くやってきているのでみんな辞書さえ間にはさめば問題なく会話できるレベルです。一回のレッスンで日本人一人に対して四、五人の中国人が入り、夕方六時から一回約二時間で私は二回ほど代理で出る事にしました。

 まず一回目のレッスンについてですが、この時はNEC側から話題のテーマが「熟語」とあらかじめ決められていたので、私は「完璧」や「矛盾」といった中国発祥の故事成語の一部は日本語にも完全に定着している事を話し、その故事成語がことわざや慣用句とはどう違うのかというのを説明していました。ただこういう熟語ネタだと話すネタもすぐ尽きてしまい、最後の方は何故だか日本の大学制度について説明したりしてました。案外わかりそうでわかりづらい内容なためか、向こうも向こうで真剣に聞いているようでした。

 また最後には三国志の話題に及び、日本では曹操が人気だと教えたところ思った通り、「何で?」と彼らから聞き返されました。そこで私は日本人は自分で意思決定をするのが苦手で、歴史の上では織田信長のような独断専行型の人間を割と好む傾向があるのではと説明したところ、「ああ、なるほど」というような表情をしたように私は見えました。そしたら一人の方がおもむろにノートを取り出し、

「中国ではこの人が人気ですよ」

 と言って、「馬超」とノートに書いてくれました。聞いてはいたが、やはり人気であったか「錦馬超」。

 そしてこのバイトの二回目、かねてから好不調の波の激しい私ですがこの二回目のレッスンの日は非常に調子がよく、レッスンを受けた中国人社員からとても面白い内容が聞きだすことが出来ました。もうすでにこの会話をしてから三年もの月日を経過しておりますが、ここで書き出す内容は現在においても中国を知る上で非常に役に立つ情報だと自信を持って自負できます。

 前回通りにレッスンは六時から始められたものの、彼らも本業の仕事があるために開始当初のテーブルについていたのは三人だけで、後から一人加わって合計四人でした。なお前回は一人女性社員が入っていたものの、今回は全員男性でした。この二回目のレッスンでは前回戸は違って議題は自由とされ、最初はそれこそ何から話したものやらとお互いに手間取ったものの無難に私の自己紹介から始めることにしました。

「私は日本の大学生で、中国語だけを学ぶためにこちらへ留学に来ました。ここ数年のうちに中国語は日本人にとって非常に魅力的な語学科目になり、韓国人と一緒になって今も通っている北京語言大学に毎年たくさん来ております」

 というような感じだったと思います。すると向こうから、中国人にとっても日本語は需要の高い外国語で、たくさんの人間が学んでいると返ってきました。そこで部外者というか第三者というか、中国での韓国語の需要はどうよと私から聞いてみると、やはり中国人に人気はないそうです。
 韓国も近年は中国との取引が急増して中国語の需要は高いものの、日中と違ってその需要は生憎片思いだそうです。日本ほど貿易額が大きくないという経済的な問題もあるものの、それ以上に中国ではかつて満州のあった東北部にいくと今でもたくさんの中国籍の朝鮮民族が住んでおり、韓国人との会話は彼らがやってくれるために韓国語の需要は低いとのことです。

 こうして語学の需要について簡単に話した後、先ほど私が大学生なんて言うもんだから専攻は何かと続けて聞かれ、隠す必要もないので社会学だと答えたついでにレッスン参加者にも聞き返してみると、みんな異口同音にプログラミングだと答えました。
 NECに勤めているんだから当たり前といえばそうですが、これは私の印象ですが、日本ではそうそう専攻がプログラミングだと答える人はあまりいないように思います。今に始まるわけではありませんが中国では投資資金が少なくて済む事からIT分野、とくにプログラミングを筆頭とするソフトウェア産業に力を入れていると聞いており、現に日本のNECがこうして中国人社員を採用してこうして日本語も教育しているのをみると中国のこの方面は相当なレベルなのではないかという気がしました。

 話は戻り、専攻の話をしたのだから日本の大学生についても簡単に話をしました。多少私の偏見も入っていますが、日本の大学は入るのは大変だが入ってしまえば遊んでいるだけで卒業できてしまうと教えて、中国はどうだと聞いてみたところ、そっちは日本と違って勉強が大変だったとこちらも口をそろえて言っていました
 そんな風に話していると、一人が口を挟んでこのような質問を出してきました。

「日本人はいつもすごい真面目で、どんな時に羽目をはずすんですか?」

 なかなか面白い質問が来たと思い、私も俄然力を入れて以下の通りに返答しました。

「よく、日本人とドイツ人は性質が似ていると言われますよね」
「はい」
「ドイツ人も普段はすごい真面目だと言われていますがお酒を飲むとすごいだらしなくなるそうで、日本人も同じく酒の場では多少の無礼も許されます。逆に中国では酒の席といえど一時でもだらしない素振りを絶対に見せてはいけませんが、私が思うにドイツと日本ではその辺が緩いように思えます。これは恐らくドイツ人も日本人もやる時はやる、羽目をはずす時ははずすという切り替えが徹底されているからで、一見真面目そうに見えますが羽目を外す時に思い切り外してバランスを取っているのではないでしょうか」

 実はこの会話文にはいくつか鎌を掛けた箇所があります。それは最初の私の切り出し箇所で、中国人は日本人とドイツ人を一緒に真面目な民族と見ているかどうかです。
 よく日本人は自分でクラフトマンシップとか真面目さとかで自分達をドイツ人と比較する所がありますが、果たして外国の人間はどう思っているのか前から気になっており、ちょっとそれを確認する意味を込めて切り出したところやっぱりすぐに肯定してくれました。

 そして質問に対する返答の本論ですが、これから中国に行こうと言う方にはぜひ知っておいてもらいたいのですが、中国では宴会においてもはっちゃけた行為は一切許されず、大声をあげたり女性にセクハラをかますものなから物凄い非難を浴びる事になります。皮肉な事ですが、これを理解していないのが日本人と韓国人の留学生で、向こうでも留学生のマナーとして一部問題化しております。

 それを踏まえたうえで日本人の切り替え方の大きさを説明したのですが、この説明で理解してくれるのか少し不安ではあったものの概ね向こうも納得してくれているようでした。まぁこのレッスン参加者全員が約一年程度の日本の研修があったことを考慮すれば、決して無理な説明ではないでしょうけど。
 すると今度は別の方から続けてこの関連で質問を受け、私もまた下記の通り答えました。

「(・ω・)/あの、日本人は……どんな風にお酒でだらしなくなるのですか?」
「(´∀` )そうですねぇ。私が以前にアルバイトをしていた喫茶店では、こういったテーブルの上で突然横になって寝始める人がいました」
「(;´Д`)えぇ……(本気で驚いていた)。その、日本人は切り替えというか、羽目をはずす時とそうでない時を分ける、そういう風な教育を受けているのでしょうか?」
「多分、日本人も意識はしていないでしょうが、私が小学生の頃などは先生がよく、遊ぶ時は遊ぶ、勉強する時は勉強するというようなことをよく言われており、他の日本人もこういった言葉を社会で使う事があります。そう考えると、子供の頃からこういった切り替えを知らず知らずに学んでいるのではないかと思います」


 あくまで上記の私の返答は私個人の考えですが、このところ書いている記事といい、つくづく日本人は節操がないなという気がします。中国人は欲望に対して素直すぎるけど。

 ここまで話したところで、ふと気がついて自分の日本語を話すスピードは聞き取りに問題はないかと尋ねた所、少し話すのが早いものの発音ははっきりしているのでまだ聞き取りやすいと返って来ました。同じ日本人からもよく早口と言われるなのでさもありなんですが、外国人に聞き取りやすい発音と言われるとやはりうれしいものです。

「ところで、卒業後はどんな仕事をするのですか?」

 ここで唐突に、仕事の話へと移りました。
 
 本音ではジャーナリストになりたいとこの時から志望を持っていたものの進学先が関西の大学だったと言う事でほとんどあきらめており、わからないけど中国語が役に立つ所と来ればメーカーだからそこで営業の仕事でも探そうと思うと伝えた所、多少は覚悟していたものの、「文系なのにメーカー?」と聞かれてしまいました。
 ここでまた以前から確認したいと思っていた事を思い出し、もののついでに日本の会社トップ、及び政治家はみんな文系だと教えたところ、案の定レッスン参加者はみんなして驚いてくれました。しかもただ「そうなんだ(´・∀・`)ヘー」っていうレベルじゃなく、「マジっΣ(゚Д゚;)」っていうくらいの驚きようだったので、見ているこっちが面白かった程です。

 何故彼らがこれほどまでに驚いたのかと言うと、中国と関わっている方なら当然の事実ですが、中国の各界のトップというのはみんな揃って理系出身なのです。かつての日本でもそうだったように現在の中国では技術職系の人材が尊敬される傾向があり、現在の中国首相の温家宝氏は私が通っていた北京語言大学の正面にある中国地質大学の出身で、主席の胡錦濤氏も日本で言えば工学部卒のダムの設計士でした。そんなもんだから、中国人が文系に進学するといろんな意味で後々大変になります。
 この話題に対する彼らの食いつきようは凄まじく、私が一言発するたびに子供のように何も言わずにうんうん頷きながら聞いているのが見ていて微笑ましかったです。

 そんなわけで書く前から想定していましたが、続きはまだあるもののすでにかなり長くなっているので今日はここまでにします。次回も彼ら二回目のレッスンに参加したNEC社員との会話を紹介しますが、次回で紹介する内容ははっきり言って普通の中国解説本には絶対に載っていない、物凄いレアな情報を公開します。必ずしも役に立つわけではありませんが、中国の歴史とか政治が好きな人には非常に重要な内容なので知っておいてお損はないと保証します。

 では、また次回にて。

0 件のコメント: