2010年4月9日金曜日

マンガ表現における女性の立ち位置の変化

 昔、暇だから取ったジェンダー論の授業(何気に音信の取れなくなった先輩と感動の再会を果たしたけど)にてこんな事がありました。
その授業は各時代ごとのテレビドラマを取り上げては女性の社会的地位の変化を問うという授業で、「初代 白い巨塔」と「現代版 白い巨塔」、そして「東京ラヴストーリー」から「アットホームダディ」などのドラマを取り上げては時代が下るごとに向上していった女性の社会的地位がこうした娯楽作品にも現れて来ていると解説し、その一方、よく見てみると男性陣らより一段下に置かれていて未だ立場を完全に逆転するにまでは至っていないという具合でまとめていました。

 この授業のテスト方式は講師がゆるいということもあってドラマでもマンガでもいいから何かしら題材を取ってその中の男女の描かれ方をまとめよという内容だったのですが、私はちょっと試しに「夜王」という、一応ホストマンガなんだけどいろんな所に突っ込みどころが満載な素晴らしいギャグマンガを取り上げ(詳細は「夜王 用語辞典」を参照)、このマンガに出てくる男性キャラは基本的に学歴も何もないホスト達ばかりで客としてやってくる女性キャラ達よりも明らかに社会的地位が低いものの、ホスト達は自分より地位も名誉もついでにお金もある女性を固定客にすることでホスト界での地位向上を図ろうとしており、いわば女性を手段としてみなしている節があると書いたところ、なんと92点もの高得点をいただけました。

 こういったジェンダーの描かれ方というのは案外意識しないとその変化というか変遷というものは分り辛く、私もこの授業を受けてからいろいろと過去と現代の男女の描かれ方に注意してみるようになったのですが、結論から言えばやはり年代が下るごとにこうしたサブカルチャーにおいて描かれる女性の地位は明らかに向上していると思います。特に近年、私が強く感じるのはマンガやゲームにおけるヒロインの立ち位置で、これなんか私が子供だった頃と比べると明らかに女性はパワフルになっております。

 具体的にどのようなところが変化しているのかというと、恋愛マンガや推理マンガならまだともかく、バトルマンガや冒険マンガにおいては現代のヒロインはほぼ確実といっていいほど男性主人公と同じく戦うなり前に出るなりしており、ただ守られたり見守っているだけのヒロインというのはもはや皆無に近くなっております。それこそゲームだとドラクエ1におけるローラ姫や、さらわれるだけのピーチ姫みたいなキャラを今の作品で挙げろと言われてもすぐにはピンと来ません。まぁピーチ姫はスマブラで戦ったり、マリオカートではキノコも投げつけてはきますけど。

 この言うなれば戦う女性ヒロインの存在ですが、過去の作品においても全くいなかったわけではありません。私くらいの年齢の男の子なら子供の頃に「ダイの大冒険」とか読んでいると思いますが、この作品においては基本的に女性キャラもみんな前線で平気で戦ったりしていますが、やっぱり思い起こすとこういうのは当時はまだ例外扱いで、一時的な参戦やサポート役としての出撃、このほかサブキャラクターの女性が戦うのならまだしもメインヒロインは前に出て戦うというよりも主人公を見守るというケースのが多かったという気がします。古いのを挙げると、戦闘力こそ高かったものの「CITY HUNTER」の槇村香や「乱馬1/2」の天道茜など。

 ではいつから現代の戦うヒロイン像が現れるようになったのかというと、私が思うにターニングポイントとなったのはやっぱり「セーラームーン」、そしてこちらは小説ですが「スレイヤーズ」じゃないかと思います。前者は少女漫画ながら少年漫画の要素だと捉えられていたバトル的要素を取り込んだところ女性読者の中で思わぬ大ヒットを引き起こし、後者は好戦的な女性キャラがヒロインどころか主人公となってアニメ化までして大ヒットした作品です。

 当時としてはまだ女性キャラがメインとなって戦うというのが物珍しく、そのギャップを物語の面白さとして売り出すためにこの様な作品が出て行ったのかと思われます。然るに現代においては先にも述べたとおりにこの様な戦うヒロイン像、下手すりゃ男性主人公より戦闘力のある女性ヒロインも珍しくなく、守られたり見守るだけのヒロインの方が珍しくなるというほど見事に逆転しているように私には思え、かえってそのような弱々しいヒロインを出したりした方が売れる作品が出来るんじゃないかなとこの頃考えているわけであります。

 このようなヒロイン像の変化について友人と話をしたところ、やはり実社会における女性の社会進出が進んだ結果だからではないかという結論に落ち着きました。私としては女性が強くなったとというよりも、それまでも見栄だけだったかもしれませんが男性が弱くなり過ぎたということの方が大きいと思え、体育会系のノリは大嫌いですが一応はもう少し男らしさというものを定義しなおして責任感ある強い男が日本でも増えていってくれればいいなと思います。


  おまけ
 なお今連載中のマンガで私が一番好きなヒロインを挙げるとしたら、ヤングジャンプで連載中の「GANTZ」に出てくるレイカが一番お気に入りです。このキャラも一応戦ったりするけど。

  おまけ2
 戦う女性ヒロインは昔は少なかったと書いたものの、昔から今にいたらるまで「攻殻機動隊」の士郎正宗氏は延々とそういった強い女性をメインに書き続けております。SFやサイバーパンクの世界では昔から女性キャラが強かったけど、それってやっぱり未来を暗示しているのだろうか……。

2 件のコメント:

  1. ジョジョの奇妙な冒険のように知恵と
    駆け引き、特殊能力によって戦う漫画も
    戦う女性を増やした一因だと思います。
    肉弾戦の殴り合いで女性が筋肉ムキムキの男をいとも簡単に叩きのめすというの
    はいくら何でもリアリティがないです。
    ですが「スタンド」や「魔法」といった
    腕力に頼らない、特殊能力と知恵を駆使
    する事によって女性や子供でも、大の
    男と互角以上に戦えるようになりました
    から。

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  2.  masatakaさん、コメントありがとうございます。

     なるほど、おっしゃられるとおりですね。言われてみると逆に、純粋に力だけで戦う「魁男塾」のようなマンガはこのところ減っているような気がしてきます、「バキ」を除くと。

     ジョジョはやっぱり格闘マンガにおいて、限定された特殊能力の駆け引きで戦うという概念を作ったとして大きな一石を投じたとよく言われているそうです。それが女性戦闘キャラの登場にも一役買ったと考えるなら、その影響力はやはり大したものですね。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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