2010年4月13日火曜日

ジェネラリストとスペシャリスト

 よく企業の求人欄などを見てみると、「弊社は多彩な分野に挑戦の出来る、スペシャリストよりもジェネラリスト的な人材を求めております」という記述をよく見ますが、結論を言うと日本企業においてこういっているところはみんな嘘をついていると私は思います。これなんか城繁幸氏などがこっぴどく批判していますが、日本のどの企業も社員を可能な限り、経理なら経理、営業なら営業と専門馬鹿にすることで転職などといった雇用の流動化を抑えようとする所があり、現実に日本の転職市場の幅の狭さと官公庁を初めとした縦割り行政を見ていると私もその通りだと日々感じます。

 そういう意味では日本は素晴らしくスペシャリスト的人材に溢れた国であるはずなのですが、どうも一般の世論などを聞いているとむしろスペシャリストが不足しているという言質をよく聞きます。この点についてはスペシャリストが不足しているというよりも痒い所に手が届くような人材というか、必要とされる職種の人材が不足している一方ですでに飽和している市場に人が集まっているがゆえにそのように見えるかと私は考えています。今の雇用問題も不況の影響が強いというのは否めませんが、介護や溶接といった人材が不足している分野に人が集まるように誘導してこずミスマッチを引き起こした政府の無策も原因しているでしょう。

 では私が日本で少ないとされるジェネラリストはどのような人材かといえば、私の中の定義を述べると分野を横断した思考が出来る人材だと考えております。
 いくつか例を出すと、企業活動においてある部門への投資を行う際、まず投資を行えるだけの余剰資金があるのかと考え、続いてその投資からどれだけ見返りが受けられるかと続き、さらには投資を円滑に運ぶための人材が目下の所いるのかと、すでにこの時点で経理、販売、人事と三つの分野それぞれに立って考える必要が出てきます。さらに実際に行うとなると投資を行う分野とそれ以外の分野との比較も考えねばならず、どこの分野への投資を優先するべきかという風にも考える必要が出てきます。

 この様に派閥横断的に、ある程度自身の利害を超えた思考が出来る人材の事をジェネラリストと私は考えているのですが、今の日本は政治から経済、果てには一般社会においてもこの手の人材がありえないくらいに不足しているように思えます。一体何故不足しているのかという理由を挙げれば切りがなく、国が理系を初めとしたスペシャリストばかり育てようとしている政策然り、企業の社内教育然りと主だった理由はあるのですが、そういった事情に加えて本来ジェネラリスト的な役割が期待される文系大学生の教育があまりにもお粗末な点も見逃せません。

 私は本来、文系学生たるものなんでもかんでもすべてやれとまで言うつもりはありませんが、自分の専門科目や分野に加えて少なくとも二つか三つは一定度の知識を持つ分野を持って当然だと考えております。なにも専門の学生に引けをとらないほど他分野の知識を詰め込む必要はありませんが、その分野がどのような学問で、ある程度専門の学生の話を聞いて理解できる程度に知識があるとないとでは人間性に大きな違いが出てくるかと思います。

 本来、総合大学というのは様々な学部に所属する学生が一同に集まって互いの知識を分け合う場所であるはずなのですが、残念ながら近年は就職事情も厳しいという事もあって入学から自らの専門分野を勝手に決めて資格取得の勉強にばかり走る学生が多く見受けられます。確かにそれぞれの専門分野のレベルを見るととても自分じゃ為し得ないほどの成長速度で近年の学生は学んでいるのですが、その専門分野以外となるとてんで話しにならないほどの知識しか持っておらず、そのあまりのギャップにこのところ閉口することが増えてきております。

 理系学生であれば専門の勉強が厳しいということでまだ私も理解できるのですが、本来総合性を期待される上に時間的余力も多い文系学生までもスペシャリストに走ろうとする近年の風潮はあまり好ましいとは思えません。年寄り臭い言い回しですが、私が学生だった頃は一応の専門を社会学と中国語に置き、それ以外はこれと見かけた他分野の学生や講師に教えを請う事で自分の幅を広げるだけ広げる事に努め、現在振り返ってみてある程度その目標に見合った形で自分への教育を達成する事は出来たと考えております。

 私は文系学問については麻雀の国士無双の十三面待ちばりに幅広く、経済学、商学、史学、政治学、哲学、社会学と学びましたが、法学だけはどうも他より専門性が高くて手が出せませんでした。というよりも法学を教えてもらおうと期待していた友人が、あまりにも人に物を教えることの出来ない天才タイプの人間であったため、最初の時点で躓いたのが誤算でした。
 唯一、その彼から教わったと法学の概念として、刑罰における社会的制裁の概念があります。この社会的制裁という概念をひとつの題材に取った、「犯罪者の家族への社会的制裁について」の記事が本日FC2の方でまた拍手を貰えたのですが、ちゃんと人の話は聞いとくものだとつくづく思います。

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