私の専門とする社会学には犯罪社会学という分野もあり(○○社会学と言ったらなんでも社会学になってしまうけど)、私はあまり手をつけませんでしたがなかなか面白いことをやっている分野です。具体的にどんなことを研究するのかというと、「何がその社会で犯罪となるのか」とか「犯罪者はどうして犯罪者になるのか」などと、まるで禅問答のような問いに対して如何に科学的に分析するかを取り扱います。聞くところによると成立した当初、イタリアにて犯罪者には何かしら犯罪者となるべき特徴などはないものかなどと真剣に比較研究が行われたらしく、なんと犯罪者と一般市民の頭蓋骨まで比較し合って特徴を探そうとしたことも合ったそうです。
それでこの犯罪社会学ですが先にも言った通りに私はあまり手をつけなかったもののひとつ面白いと感じた一説に、「犯罪は何から生まれるのか」というくだりがあります。非常に適当に勉強してたものですから誰だったか名前も忘れましたけど、確かハーバードの研究者で実際にマフィアと交渉し、一時その構成員となって参与観察を行った人が居り、その人が発表した論文にこんな記載があったそうです。
「犯罪とは、自分の欲求を正当に適える手段がない時に行われる逸脱行動である」
もちろん犯罪社会学には何がその社会で正当な行為か、逸脱行動なのかを議論する分野もありますがそれは今回置いといて、そのアメリカの社会学者は上記のように犯罪が発生する要因をまとめております。
具体的にどういうことかというと、たとえばある男が高級な腕時計を欲しいと思ったものの購入するお金がなかったとします。多分現代では日本の大多数の人はお金を貯めてからその腕時計を購入するのが正当な手段だと考えると思いますが、その男はお金を貯める間もなく欲しいと思ったとしてほかの人からお金を強奪して買う、もしくは店から直接腕時計を盗んだりするとなると犯罪となります。
この話で重要なのは、男が犯罪に走る以前に「腕時計が欲しい」と欲求を持ったことです。そもそも男が腕時計を欲しいと思わなければ盗みなどする必要もなく、このように大半の犯罪が生まれる背景には何かしらの欲求、もしくは不満が存在するのです。それは逆に言えば社会全体で構成員の欲求や不満を減らすことが犯罪の抑止効果があるという考え方につながるわけで、過剰に消費意欲を煽ることは犯罪増加に繋がるのではという話になっていくわけです。
ただもうひとつその社会学者は重要なことを指摘していて欲求を正当な手段で叶えられないからといってすぐに犯罪に走るわけじゃなく、その欲求を叶える脇道的な手段こと犯罪の手法も必要だとしてその犯罪手法を教える犯罪学校の重要性も指摘しております。犯罪学校とは言いますがこれに該当するのは要するにマフィアや暴力団で、一つ例にとるとまだ件数の多いオレオレ詐欺も皮肉なことに警戒するようにと警察やマスコミが手法を公開したことによって続々と模倣犯が生まれていった傾向があり、また日本で発生するようになってからしばらくすると韓国や中国でも同じ手法が使われるようになったとも言われています。
そういう意味で被害に遭わないよう警告するために犯罪手法を公開するのは諸刃の剣のような効果があり、公開するべきかどうかの判断は難しいといえば難しいでしょう。ただオレオレ詐欺の場合は手段が簡単なためにほっといても広がっていく可能性があり、私は公開し警告を促して正解だったと考えております。
まとめになりますが犯罪が生まれるには大きく分けて、「正当な手段で欲求をかなえられない人がいる」、「その欲求を脇道から叶える犯罪手法が教えられる」という二つの要素があり、これらが組み合わさった時に犯罪が発生することになります。ただ基本的に世の中でお金が欲しくないと思う人間はいるはずもなく労せずして稼げる手法がわかればみんな手を出すのが当たり前です。そういう意味でそういった犯罪手法を世に出回らせないことが大きな犯罪対策となりうるのでしょうが、こうもネットが発達した時代、爆弾の製法までわかってしまうのでは難しいでしょう。
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