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2012年1月2日月曜日

中国の道徳観について

 潮風大使さんから質問を受けたので、今日は中国の道徳観について解説します。どうでもいいですが今日はやることもなかったので一日中ゲームをして過ごしたところ、今なんかやけに眠いです。それにしてもディリータは嫌な奴だ。

 本題に入りますが中国では昨年、路上で寝そべっていた少女が二度も車にひかれたにもかかわらず誰も助けずに放置されるという映像がインターネットに流れ、日本でも大きく取り上げられたかと思います。この事件は中国本土でも大きく取り上げられ、「生活は豊かになっていく一方、道徳観が薄れてきた」と主張する人間が後を絶たず、ちょっとした議論のトピックスになりました。またコメント欄で潮風大使さんも引き合いに出していますが、これ以外にもいろいろ信じられないような不道徳な映像が流れることもそれほど珍しくありません。
 ただこうした事件があることを踏まえた上で言わせてもらえば、私は中国の道徳観が極端に日本に劣っているとは思っていません。我ながら思い切ったことを言うもんだと思いますが、決して根拠のないことを言っているつもりはありません。

 まず中国の道徳観が落ちているかどうかという議論については、間違いなく落ちていると言ってもいいでしょう。これは私の留学中にお世話になった中国人教師から聞いた話ですが、やはり経済成長とともに中国人の他人を労わる気持ちは落ちているとはっきりと述べ、一例としてその先生が大学進学に当たって列車に乗って北京に始めてきた際は若い女の子が一人で乗り込んできたこともあり、周りの人間が荷物を荷棚に載せてくれたりあれこれ声をかけてくれたりしてもらったそうなのですが、現在だとこのような光景はそうそうお目にはかかれないと言っていました。
 またこうした個人的な話だけでなく、教育関連でもよくこの手の話題が挙がってきます。自分が見た本ではこうした道徳観の低下に歯止めをかけるために儒学こと論語の音読を義務教育に復活させるべきではないかという意見が提唱され、新聞とかでもたまに載せられたりします。こういうとなんですが、なんていうかこういう議論は懐かしい匂いがするというかなんというか。

 以上のようなことから、どうも中国人自身も世の中の道徳観がどうも低下してきているということは自覚しているようです。ただ道を譲ったりしないなど一般マナーについては明らかに悪いけど、普段の生活上で観察している限りだと中国の道徳観は極端に退廃はしていない、日本と比べてもそこまで悪くはないという印象を覚えます。
 具体的な例を挙げると、これなんか中国に長期滞在した人なんかはすぐに納得してくれるでしょうが電車やバスに乗っている際に老人や赤ちゃんを抱いている母親が乗り込むと中国人はすぐさま席を譲ります。日本でもこうした光景はもちろん見られますが、はっきり言って日本以上に中国人はこうした際の対応が早く、その他にも具合が悪くなった人などがいるとみんな一斉に声をかけて心配します。

 中国人は日本人と比べると基本的に口うるさい分、やたら他人に対してもいろいろ気に掛ける所があります。私自身もそうした中国人と付き合っていると日本人ゆえか「そんな余計な心配せんでも」と思ったりしてたまにうっとうしく感じる時もありますが、そこらへんは文化の違いと割り切ってなるべく相手に合わせています。また確かに口うるさい分、親身になっていろいろと気をかけて配慮をしてもらえることも多く、私の周りだと今の部屋に入る際に間に立った仲介業者のおっさんとはなんか長々と縁が続いてて、何か世話になる度にたばこを買って渡すという関係が続いています。

 ちょっと回りくどい言い方になってしまいますが、中国人と日本人のこうした道徳観というか気質を比較するならば「ウェットとドライ」という一言が一番しっくりきます。もちろん中には信じられないような詐欺事件とかも起こったりしますがそうした事件については中国人らも真面目に怒りますし、またビジネス面でも「騙したもん勝ち」という風潮がはびこるのを良しとせず、事業で成功した人間についても「散々悪いことして儲けやがって……」などと冷ややかな目で見る姿勢が強いように感じます。
 ただ外国というフィルターもあるせいか、日本にいると目に入りやすい中国人はそうした「やり手の経営者」ばかりでしょうし、またインターネットやらが発達したことから少女のひき逃げ事件のように極端な例ほど注目されやすくなっているところがあります。そういった極端な例が目に入るようになったという意味では確かに道徳観は低下していると言っても過言ではないものの、一般市民レベルではまだそこまで捨てたもんじゃないよというのが私の意見です。

 分けて書くのもあれなんでこのままもう一つの質問こと、今年にそれぞれ総書記、首相に就任することがほぼ確実視されている習近平と李克強についてですが、まず前提として中国では総書記は外交と軍事、首相は内政ときちんと役割分担がなされております。そのため習近平はこのところあちこちに外遊に出たりなどと顔を売っているわけなのですが、中国国内の評価だと私の友人なんかは就任前の胡錦濤同様に「なんか冷たそう」と述べておりいまいち確固とした印象が持たれていないような感じです。対する李克強については次期首相候補として国勢調査の責任者を務めたりなど、国内においては習近平より顔を出す機会が多いように見えます。私自身の意見を言えば、李克強の方がやっぱりメディアで見る機会とか多いせいかなんかこっちの方が優しそうって感じを覚えています。

 それでこの両者の関係ですが、習近平は江沢民をトップとする上海閥というグループに属しているとされ、逆に李克強は共産党青年団出身ということから同じ出身の胡錦濤に近いとされています。そのため二人の総書記経験者がいる派閥に分かれていることからあれこれ憶測も立っていますが、少なくとも表面上はそれほど仲が悪いようには見えません。私の見立てでは確かに数年前であれば次の総書記の椅子を巡って競争があったのかもしれませんが確か二年くらい前に習近平が軍事関係のポストに就いたことから決着は既についており、現時点においては争う余地がもはやなく、また前述の通りに総書記と首相で役割がはっきり分かれていることから対立する要素というものは少ないんじゃないかと思います。

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