ページ

2013年9月22日日曜日

戦争と少年兵

 先月の話で少し古くなりますが長寿番組の「世界まる見え!テレビ特捜部」にて、「ジョニー・マッド・ドッグ」(2008年)という映画が紹介されたのを見る機会がありました。このフランスの映画はどんな映画かというと、内乱中のリベリアを舞台に反政府軍の少年兵を描いた映画なのですが、特筆すべきはその少年兵の俳優たちで、なんと実際にリベリアで戦闘を行っていたた元少年兵たちを起用しております。

 まる見えの紹介によると、この映画の監督は元少年兵を起用することでリアリティを出すとともに、彼らが映画撮影を通してどのように変化していくかを見ようと考えたそうです。そのためか彼ら元少年兵が撮影所にやってきた直後にカメラの前で自由に話させてその映像も残しているのですが、彼らの初録画はお世辞にも上品な態度とは言えず、皆それぞれ鋭い目つきと共に非常に物騒なことを口にするだけでした。具体的にはどこそこの戦闘で何人殺したのか、隠れているスナイパーを見つけて逆に撃ってやったとか、捕虜の指を一本ずつ切り落としてやったなどと、こんなセリフを15歳前後の少年が話すのかと正直にショックを覚えました。

 こうして始まった映画撮影でしたが、最初に彼ら元少年兵の演技指導を施したところやはりというか難航し、また字も覚えていなかったことからスタッフによる口述で暗記させたとのことです。そうした演技指導の傍ら、元少年兵の俳優たちには共同生活を行わせた上に、彼らの世話役には大人の女性を配置して疑似的な親子関係を作らせたそうです。
 こうした取り組みが功を奏したというか監督の目論み通りというか、撮影が進むにつれて元少年兵の俳優たちには徐々に変化の兆しが見えるようになってきたとのことです。それが最もあらわれたのはフランスでの試写会の際で、かつては自分が「兵士」としていかに優秀であるかしかアピールできなかった彼らが涙ながらに、世界には自分たちの様な少年兵が存在して戦っていることと、映画の中にある少年兵の姿だけが自分たちではないということを訴えるまでに成長しました。

 さっきも同じ表現を使いましたが、非常にショックなシーンの連続でした。確か漫画家の西原理恵子氏が言っていたと思いますが夫であった鴨志田穣の話しとして、「戦場では大人に銃を向けられるよりも子供に銃を向けられる方が怖い。何故なら子供はその引き金を引けばどうなるのかをきちんと理解していない」と紹介しており、元少年兵たちの最初のシーンなどはまさにそれを連想しました。
 そのような意味で言うと戦争というのは理性のある大人が実行するからまだ保っていられる、子供が戦争に出たら、最後の最後というような理性のラインすら踏み越えてしまうのではないかという懸念がどうしてもよぎります。私はまだ「ジョニー・マッド・ドッグ」を見ていませんが、機会があれば是非とも見てみたいと思える映画です。

 もうすこし少年兵というくくりで話を続けると、「機動戦士Vガンダム」というアニメ作品が私の中で挙がってきます。Vガンダムは有名なガンダムシリーズの一つなのですが、主人公のウッソ・エヴィンは若干13歳で兵器に乗り、敵の殺害を含めた戦争に参加します。作品中でウッソは天才的なパイロットセンスを持つことから周囲の大人に持て囃され、より積極的に戦うべきだなどと言われ続けるのですが、これに対してある大人の女性一人だけがウッソを戦争に参加させるべきじゃない、こんなのおかしいと言い続けます。
 私がこのアニメを小学生の頃に見ており、当時は主人公がことごとく敵機を薙ぎ倒す姿を見て胸が湧き、より戦争に駆り立てようとする周囲の大人たちの発言は当然だと見ておりました。当然、戦争に参加させるべきじゃないという先程の女性の話は対局的なものなので、なんでこんなことを言うのかと疑問に感じたわけです。

 時は経ち現在に至ると、やはりあの世界はおかしかった、あの周囲の大人はなんていう事をしているのだという気がしてなりません。私も大人になったということでしょうか。
 ちなみに、先ほどの「ウッソに戦争をやらせてはいけない」と言っていたキャラはカテジナ・ルースという名前で、最終的には敵味方問わず撃墜し、わけのわからないことを叫び続けるなど一番おかしな人になります。恐らく、まともな人も戦争ではおかしくなるっていうのがテーマだったんだと思いますが。

  おまけ

 上記動画は私がよく見る「エキプロ動画」というもので、あるプロレスゲームであらゆるゲームキャラクターを再現するという企画の一つですが、今日取り上げたVガンダムのキャラクターの面々も見事に再現されています。特に例のカテジナさんに至ってはバージョン別に3キャラも作られており、「お色直し2回」というコメントが妙に笑えました。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

ガンダム作品の中に0080ポケットの中の戦争というものがあります。これは初代ガンダムの外伝で10歳の少年
アルが主人公です。彼はかっこいいモビルスーツの活躍にあこがれる少年でしたが、そのモビルスール同士の
戦いで親しい人間を失います。そこで彼はかっこいいとあこがれていた戦争の真の現実を知るわけです。
物語の最後にアルは涙を流しますが、その涙の理由を知らない友人は「泣くなよアル、泣くなよ戦争は
またすぐ始まるって今度はさ もっともっと派手で楽しくて、でっかいやつだぜ きっと」と
的外れな慰めをするわけです。
ちなみにこの作品、OVAなのですが、モビルスーツが活躍するシーンのある巻の売上が高かった
そうです。そのため後続作品の0083はガンダムの戦闘シーンを大幅に増やしたそうです。
この事実をふまえてアルの友人の慰めを聞くと大いなる皮肉としか思えません。
ガンダムの主人公は殆どが少年ですが、主な玩具購買層である小中学生の興味を引くためには主人公を
同世代をにしなければならず、大人を活躍させづらいのでしょう。活躍できないどころか勝手な連中
としてしばしば描かれています。 ジュドーに殴られるブライトさんなど。もっともブライトさんは
ジュドーの怒りを理解しているためあえて鉄拳を受けていますが。 
一応大人が活躍しているロボットアニメとして「太陽の牙ダグラム」というのがあります。
この作品で物語を動かしているのは政治家,軍人、財界人などの大人ばかり、主人公は政治家の
息子だがその立場は一兵卒同然。 最後は政治判断によって大勢がきまるというあまりにも現実
すぎるロボットアニメでした。
これは初代ガンダムのヒット後のリアルロボットアニメブームの時に作られましたが今では
製作は無理でしょう。

花園祐 さんのコメント...

 「0080」はもちろん見てますよ。あのラストシーンは涙なしには見ることはできません(ノД`) ちなみに一時期、何か相手が言う度に「嘘だと言ってよバーニィ!」ってセリフを言ってました。
 低年齢の視聴者層を意識することからロボットアニメには少年兵がつきものという話、よく分かります。「太陽の牙ダグラム」は見たことがありませんが、もう少し大人の存在感をアニメに出した方がいいのかもしれませんね。