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2016年8月29日月曜日

続・中国の電子決済市場~微信支付を使ってみて

高コストで不衛生 欧州から姿を消す現金(日経新聞)

 前にも一回論じていますが上記記事の様に世界では電子決済、それもスマートフォン用アプリを介した決済が大流行とのことで、私のいる中国でもマジびっくりするくらいの勢いで普及が進んでおり5年前と比べると別世界の感があります。決して誇張ではなくコンビニのレジ前に立っていたら現金で支払う人の方が確実に少なく、都心部であれば体感的に八割方の人間が携帯電話をかざして決済処理をしており、対応するレジ打ち担当者も作業に慣れたもんです。
 上記リンク先記事によると北欧などでもこうした電子決済が進んでいる一方、ドイツなどの先進国では北欧ほど普及が進んでいないことが報じられています。これはまんま中国と日本の構図にも当てはまりますがこの背景としては日本やドイツでは個人情報が遅漏するのではないかという懸念が普及を妨げているのではと同記事では指摘しており、私もこの意見に同感です。実際、日本人は誰も見てないのにやたら見かけとか気にするし、そこに価値なんてそもそも存在するような人間ではないほどプライバシーとかを気にする傾向があるように見え、便利さは理解しながらもいまいち普及が波に乗らないのはこうした所に原因があるように思えます。

 一方、中国については昨夜友人にも説明しましたが、そもそも国家が個人を監視しているのが当たり前の社会なので情報の遅漏とかそういうのは実害が起きない限りはそんな気にすることもなく、なおかついろいろ話を聞く限り、何気にこうした電子決済アプリの方がクレジットカードとかよりも安全である可能性が高いこともあってか、若い人間に限らず中高年の女性なども率先して使います。なお中国の場合、カード使うとスキミングされる恐れもあり、あと電子決済ならインターバンク回線が使われるというので私もこっちの方が安全だと思います。

 で、その中国の電子決済ですが、現在の主流は二つあり一つは中国最大のEC企業であるアリババが運営する支付宝(チーフーパオ)です。これは元々はネットショッピング時に使う決済サイトとして出発し、クレジットカードの普及が遅かった中国の中で実質的にクレジットカードが果たすべき決済代行の役割を果たしてきたサービスでしたが、近年は各銀行口座と連動し、コンビニやスーパーなどの小口決済から公共料金の電子決済まで幅広く対応するサービスの比重が高まってきています。
 もう一つの電子決済の主流は、中国版LINEっていうかLINEをまんまパクったテンセントという会社の「微信(ウェイシン)」というSNSアプリの中にある機能の「微信支付」で、これも支付宝と機能はほぼ同じですが、実質的にほぼ全スマホユーザーがインストールしている超人気アプリに付属していることもあって勢いを感じるのはどっちかっていうとこっちです。でもって私も最近になってこちらを使用し始めてみました。

 先に言い訳っぽいことを述べると、支付宝も微信支付も使用開始するに当たっては銀行口座でネットバンクを開設する必要があります。私の場合は四年前に一回開設したもののその後一旦日本に帰り、もう二度とその銀行口座とカードを使うこともないだろうとか思っていたら上海に来て転職先から、「上海の銀行カード用意しろよ」と予告なしに言われて再び使う羽目になり、既にIDとかパスも紛失していた上に登録携帯番号も変わっていたので更新するまで使えなかったという理由があります。なんか窓口にこの辺りの下りを説明するのも面倒なので先月に友人に来てもらってようやく更新を済ませ、微信自体は既に使用していたことからすぐに銀行カードを登録して使用を始めました。

 くどくど説明するのもよくないので、微信支付の特徴を以下に列記します。

・決済、振込手数料はほぼタダ
・店頭決済時は簡単に出せるQRコードをレジのバーコードに取らせ、暗証番号入力して終わり
・店頭決済は一回当たり500元が限度
・公共料金の支払いもいつでも自由にできる
・登録している友人知人に直接送金できる
・定期預金もいつでも買える
・銀行口座から直接支払えるが、微信支付内のウォレットにチャージしてそこから払うことも可能

 一番上の決済、振込手数料についてはまだ完全に把握していないので「ほぼ」と書きましたが、店頭決済から自分の銀行口座への振込、友人への送金時には一切手数料は発生しませんでした。次に店頭決済時はどうするのかというと、アプリで「お支払」みたいなコマンドを押すと一分ごとに更新されるQRコードが表示され、これをレジスキャナで取り込んだ後で登録した暗証番号を携帯に入れると送金が完了するという仕組みです。私はこれで、コーラを買いました。
 定期預金とかは近々試そうかと思っていますがまだやってないのでこれ以上の言及は避けますが、やはり便利なのは友人知人への送金で、昼飯代とかまとめて払ってくれた同僚に立て替えてもらった自分の代金を微信支付で直接支払うことができ、釣銭とは端数を気にせず決済できるのでこれはほんとに便利です。あと今の部屋の公共料金は大家が支払ってくれているのですが、携帯電話代もこれで携帯電話そのものからチャージできるので非常に楽でありがたいです。

 一方、聞くところによると日本発のオレオレ詐欺(「母さん助けて詐欺」とは誰も言ってないような。「まみー、へるぷみー詐欺」じゃないからダメなんだと思う)が中国でも大流行しており、この微信支付とかもその支払いの手軽さから相当悪用されているのではないかと密かに思います。もっとも中国は日本みたいに甘くはないから、注意喚起はそこらじゅうのポスターでされてはいるものの騙されたら騙されたで注意力の足りない自業自得扱いされてしまう気がしますが。

 この電子決済の普及は傍目から言ってもメリットが非常に多く、特に中国は未だに偽札が横行している社会なだけに電子決済によってそのリスクとコストが減るだけでなく、政府や銀行も金の流れが電子化されることでチェックしやすくなって不正も摘発しやすくなります。そしてなによりも現金貨幣を使うよりも決済コストが大幅に減るため、社会全体でプッシュするだけの価値はあるでしょうし、銀行、公共機関、企業揃ってこの方面の連動は傍目にも見事なものだとため息が出るほどです。

 友人によると日本でもLINEに簡単な送金機能は付けられているもののあまり普及していないと聞きました。日本の場合は「おサイフケータイ」のサービス開始は非常に早く利用者からは好評だったものの、いかんせん最初に話した情報遅漏への懸念からか普及は進まず、現時点においてこと電子決済では中国に大きくリードされた状態のように見えます。私自身の勝手な予想で話せば突破口となるのはSUICAを始めとしたチャージ式電子決済カードで、これが中心となって銀行口座との連動、アプリとの連動が始まるのではと思いますが、生半可にクレジットカードが普及していることもあるからまだまだ時間かかるかもしれません。

 最後にそのクレジットカードについて述べると、アプリにはない延払い機能があるためなくなりはしないでしょうが、単純な電子決済機能は今後はこれらのアプリに淘汰される可能性があり営業収入に影響が及ぼす可能性が高いと見ています。実際に自分今回使ってみて、中国国内に限ればこれと銀聯カードあればクレジットいらないなと本気で実感しました。

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