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2025年8月19日火曜日

大学進学はもはや上流に入る条件にあらず

 先日書いた「中間層が消滅した日本」の記事で私は、日本にはもはや中間層と社会で認識される集団がほぼ存在していないと主張しました。これは中間層がいなくなったというよりは、それまで中間層と認識される条件となっていた終身雇用制やマイホーム観念が焼失したことによる影響が大きく、また中間層がそのまま下流層に落ちたというよりは、上半分を上流層、下半分を下流層が上下から吸収しただけで、社会における資産配分自体はそこまで変化はなくボトムダウンでみんな揃って貧しくなっただけじゃないかという見方を紹介しました。
 基本的な主張は以上の通りですが前回記事でこうした階層意識、そして古今から階層移動の重要手段とされた教育こと大学進学について、準備していたにもかかわらず触れるのを忘れていました。大体この手のネタは通勤途中の上海地下鉄の中で考えることが多く、家に着いた頃には大体忘れるのがよくない(;´Д`)

 そういうわけで大学進学ですが、昭和後期から平成初期の中間層を構成するかなり重要な要素だった気がします。というのも

・上位大学に入る
↓↓↓
・大企業に入る
↓↓↓
・結婚してマイホームを持つ
↓↓↓
・老後は退職金で老人ホームに入る

 というのが中間層の理想的人生とされ、中間層が中間層足りうる条件の大きな要素となっていました。しかし平成中期以降、就職不況で最初の上位大学→大企業のルートが閉ざされ、いきなりファーストステップでこける形となりました。そして令和となった現代、はっきり言えば自分の目から見て、学歴が持つその価値は年々低下してきているように見えます。

 そうはいっても大企業は学歴フィルターなどがあると言われ実際そうだと私も思いますが、かつてと比べると大学のブランド力だけで就職が有利になるということはかなり少なくなってきているように見えます。具体的にはようやく日系企業もジョブ型雇用を始めるなど、学生が持つスキルを採用で重視するようになってきており、今後この動きはさらに加速すると思います。
 実際はどうだかわかりませんが高専出身者も優遇されると聞いており、私が専攻した社会学や心理学など、産業に一切寄与せず余計なことを言って社会を惑わす学部の出身者は上位大学であってもあまり就職では有利とはならなくなるでしょう。っていうか自分の時代もあんま有利じゃなかった気がするし、実際自分でもこれら文系学部の出身者は役に立たない気がする(´・ω・)

 さらに続けると、日本の最高学府の東大そのもののブランド力も近年低下してきていることも、大学の学歴が中間層、ひいては上位層へのランクアップに寄与しなくなっている要因としてかなりデカい気がします。
 こんなこと言うと東大出身者に怒られるかもしれませんが、総理就任者の学歴を見てもかつては東大が常連であったのに近年はほとんどおらず、最後の人物もよりによって鳩山由紀夫氏だったりします。またかつてと比べ社会で活躍する東大OBもなんか減ってきているように見え、むしろ早慶出身者の方が目立つというか、私自身も大した人だと感じる人が多いです。逆に、メディアなどで知性や教養を一切感じさせられない発言や振る舞いをする東大出身の芸能人は増えており、東大の権威は年々落ちてきているように感じ、そのこと自体に東大も気づいていない気すらします。

 そもそもかつてと比べるとグローバル化で留学もしやすくなり、先端研究も大学より企業で行われることが増えてきているため、東大の存在意義自体がかなり揺らいできているのは間違いない事実だと考えています。昔は東大に入れば一流企業入りは確定、企業内でも出世が約束されてされていましたが、前述の通り今やその後のスキルの方が重要となってきており、東大の学歴だけで上流入りにとはもはや成立しないでしょう。良くて中流層入りと言いたいところですが、中流層の定義がほぼなくなった現代においてはそうも言えない、つまり下流として認識される可能性も出てきている気がします。

 こうした大学進学の価値喪失の背景理由としては、上記の東大ブランドの低下もさることながら、単純な大学進学率の頭打ちこそが最も大きいでしょう。すでに世代の過半数が大学に進学するほど普及しており、「大学進学=エリート」とはもはや言えません。採用する企業の側も大学生が溢れているので、もはや少数派となっている高卒と比較してそこまで優先して採用する必要もなく、より優秀な人を得るためには前述の通り学歴よりスキルを重視する方が有利に決まっています。

 最初に書いたように、大学進学は昭和から平成初期までは中間層、ひいては上流層に入るためにはかなり大きな条件の一つとされていました。しかし上記のような社会の変化を受けて今や上流層はおろか中間層に入るうえでもそれほど威力を持たず、現実に大卒でありながら自らを下流層と意識している人は少なくないでしょう。その点を踏まえると、階層を逆転する手段として教育が日本ではもはやあまり機能していないところがあります。

 それもこれも、日本政府が中間層を拡大しようと大学の定員を拡大した失策によるところが大きいです。結果的に、下手に大学に進学しなかった方がもっと幸福な人生を送れたかもしれない人をたくさん路頭に迷わせることになったと思うし、社会に求められていた技術系学部の定員などをもっと調整していれば、ここまで大学進学の社会的価値が日本で低下することはなかったでしょう。それ以前に、拡大しようとした中間層が消滅することとなる逆の結果も生まなかったでしょう。

 以上あまりまとまりのないことを書き連ねましたが、シンプルに一言でまとめれば「大学進学で社会で有利になる」という中間層を構成する重要概念が消失したことで、上流層と中間層を分ける定義もあいまいとなって、結果的に中間層の概念が消失することになったというのが自分の見方です。

 ちなみに中国も、今若干同じような動きが出つつあります。ただ日本の東大と違うというか、中国トップの北京大学の出身者に関しては自分が会った相手はいずれも優秀な人しかいません。
 一人例を挙げると、短納期で対応の難しい依頼を私にメールで伝えてきたため「無理!(# ゚Д゚)」とすぐ返事したら、「じゃあここだけやってもらえますか?」と、ギリギリ断り切れず、しかも何とか対応できそうな範囲だけを正確に提示しなおしてきました。その修正範囲のあまりの正確さと、依頼メールの丁寧で且つ断りづらい日本語での文面はすさまじく、後にも先にもメール文を見るだけで冷や汗をかいたのはあれきりです。

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