2011年8月28日日曜日

儒学の反骨性

 よくネット上などで、「日本は儒学社会だから社畜が多い」などという言葉を見かけます。この言葉の言わんとしていることは「お上に何でも従え」と教える儒学概念が日本では強いため、外国人からしたら劣悪以外の何物でもない雇用環境でも文句も言わず働く日本人が多いという意味ですが、後者の部分はともかくとして前者の部分には「異議ありっ!!( ゚Д゚)」と言いたいです。私は確かに真剣に儒学を学んだわけじゃありませんが、儒学は上意下達な学問ではなく、むしろ反骨心が高い学問だとみているからです。

 そもそもの話として、日本で儒学と言ったらほぼ間違いなく朱子学を指します。この朱子学というのは私の恩師に言わせると、「儒学の中でも極左的なもの」だそうで、中国でも一時国学化されたものの決して全土で流行ったものじゃなかったそうです。しかし何故かその極左的な朱子学は上意下達で為政者にとって都合がよかったことから朝鮮半島、そして日本では流行ってしまい、中国本国とはまた違った儒学がそれぞれの国で発展することとなりました。

 では元々の儒学はどうなのかということですが、儒学と言ってもたくさん学派があるのでひとくくりは出来ないもののその一番のバイブルとなっている「論語」においては結構反骨心が高い記述が多く、むしろ効かん気の強い学問ではないかという風に感じるところが多いです。
 そう思うような具体的な個所をいくつか紹介すると、「もし主君が正道を務めないようであれば諌め、それでも改めなければそっと離れなさい」という記述があります。これは主が間違った行為をしているようであれば批判を恐れず諌め、それでも行動を改めようとしないのであればその主君に付き従ってはならない、むしろ協力するなという意味です。またこれ以外にも間違った方向へは自分の才能は使ってはならないなど、ゆくゆく仕えるべき主君についてあれこれ注意がなされております。

 実際に古代における中国の儒学者の経歴を見ると、頑固というか言うこと聞かない直言居士ばかりが目につきます。当時から一流の儒学者だった司馬遷はもとより、今のアカデミックの主流が反権力を掲げているのと同様に儒学も権力に対して批判的な立場であるのが正位置なのではないかと思います。
 それ故に最初の話に戻るのであれば、今の日本社会は邪教がはびこったせいでいろいろおかしなことになっているのではないかと私は思っている、というか常日頃から主張しています。人間もちろん我慢が出来るというのは美徳ですが、度が過ぎた我慢というのは周囲をも巻き込み全体を不幸にしてしまうと考えます。友人などから話を聞きますが冗談抜きでどうして過労死にならないのか、なったとしても誰も気に留めないのか、年末に毎日のように人身事故が起きても誰も気に留めないのかと思うくらいの今の日本の状況においては、嫌なものは嫌とはっきり拒否する勇気が必要なのではないかと思い、本来の儒教にある価値観こそが今求められているのではという気がします。

 ちなみに日本におけるもう一つの有名な儒学の学派は陽明学がありますが、こちらも日本に伝わる途中でちょっと変遷を受けて「実践第一」が妙に重んじられるようになりましたが、そのせいか著名な日本の陽明学者は吉田松陰、高杉晋作、西郷隆盛、河井継之助、佐久間象山と、反体制思想の塊のような面々が集うようになってしまいました。もし仮に私が為政者の側であったら、朱子学は弊害が大きいと判断して採用しない程度でほっとくでしょうが、陽明学においてはさすがにあれなんで流行らせないようにするかもしれません。

 最後にもう一つ蛇足ですが実践という話ではよく、「義の無き信念は無に等しい」という言葉を私は使ってます。これは原作:武論尊氏、作画:池上良一氏の漫画の「HEAT -灼熱-」という漫画に出てくるセリフですが、セリフが出てくるシーンのネタバレをするとアメリカで弁護士をしていた主人公の父親が世話になったマフィアのボスから、黒人への銃乱射事件を起こした白人の少年の弁護を頼まれます。目撃者も多くいたことから有罪確定とみられた裁判は主人公の父親の腕もあり無罪へと傾きますが、この父親の行動に子供だった主人公は強く反発します。
 そして裁判では最後に無罪判決が下りて裁判所から喜んで白人の少年は出てくるわけですが、主人公の父親はその背後から少年を射殺すると、自分の保険金は事件の遺族らに渡るよう手配していると言って自殺します。その父親から主人公への遺書に上記の言葉が入っているわけですが、頭で考えるだけでも駄目、実践するだけでも駄目という意味でこのエピソードをよく思い浮かべるようにしています。

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