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2014年5月4日日曜日

野ざらしの屍を弔った男たちの末路

 先日書いた「中国四大美女について」の記事で楊貴妃について紹介しましたが、この際についでだから彼女にまつわるある寓話を紹介しようかと考えたのですが、仮にのっけたらかなりの長文となって全体の構成が崩れると思い見逃しました。そしたらコメント欄でちょうどその寓話について指摘してくれるコメントを頂け、個人的にも気に入ってて是非紹介しようと思っていた寓話なので今日はそのお話を私の方から紹介しようと思います。

 この話はショートストーリーをまとめた中国明代の書物、「笑府」に載せられているエピソードです。

 昔々あるところ(もちろん中国)で、一人の農民が野ざらしとなっていた屍を見つけました。不憫に思ったその農民はその屍を丁寧に弔って家路についたところ、その夜に男の家の門を「トントン」と小さく叩く音が鳴りました。
 男が門を閉じたまま、「どなたですか」と尋ねると「フェイです」という答えが返ってきたので、男は続ざまに、「フェイさんって、どこのフェイさんですか?」と問うたところ、「妃(中国語の発音で「フェイ」)です。楊貴妃です」と返ってきました。男が門を開けてみると確かに歴史書に出てきそうな衣装と類稀な美貌を持った楊貴妃が立っており、一体何故こんなところにと聞くと、

「私は安史の乱の際に処刑されて以降、屍はずっとあの場所に放置されたままでした。それを今日、あなたが丁寧に弔ってくれたので今宵一晩のお供しようと参りました」

 と説明したので、この際幽霊でもいいかと割り切った男は楊貴妃を家に招き入れ、楽しい一夜を過ごしたそうです。

 男はこの不思議な体験を近くに住む男に話したところ、その男も同じ思いにあやかりたいと思って野ざらしとなっている屍を探しました。散々探し回った挙句ちょうどいい具合に放置されている屍を男は見つけたので、最初の男同様に丁寧に弔って家路に着きました。するとその夜、「ドンドンドンドン」と、まるで借金取りが取り立てに来たかのように激しく家の門が叩かれたので、「ど、どなたでしょうか」と男が門越しに尋ねると、「フェイだ!」という大声一声。「ど、どちらのフェイさんでしょうか?」と続けざまに尋ねると、「フェイだよフェイ。張飛の飛(中国語の発音で「フェイ」。何気にさっきの「妃」と同じ第一声)だっつの!」と野太い声が返ってきました。
 男は恐る恐る、「ちょ、張将軍がこんなあばら家にどんな御用で……」と問うと、「おう。俺は死んでからずっとあの場所で屍が放置されたままだったんだ。それを今日お前がきちんと弔ってくれたんで、一つお礼に一晩付き合ってやろうと来てやったんだ」と話し、嫌がる男と共に熱い一夜を過ごしたとのことです。


 この寓話は後に日本で翻案され、落語の「野ざらし」の下地になったと言われております。あとkの寓話が我々に教えてくれる教訓としては、二匹目のどじょうを拾うようなことはよくないってことと、どんなエピソードだろうと張飛の濃いキャラクター性はどこでもいかんなく発揮されるんだなってことです。二番目の男も必死で門を開けまいとしただろうけど、張飛のキャラクター性なら一発で蹴り飛ばす姿が簡単に想像できるし、幽霊でも全然強そうだ。

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