2014年10月18日土曜日

中国で普通選挙を行わない理由

 先月から今月にかけて香港では民主選挙を求めるデモ活動ですっかり日本のお茶の間でもメジャーになりましたが、ちょこっと豆知識書くと香港市民はかなりデモ好きでいつも何かしらデモ活動が行われるため観光ガイドブックにすら「デモが見物」と書かれたこともあります。ただこの民主的選挙について香港特別行政区という限られたエリアならともかく、中国の本土でやろうとなると現在障害が大きく、一外国人の立場である私からしてもやらない方が良いと考えております。今日はその辺の理由をこの前後輩に行った講義を基にいくつか書いてきます。
 
 まず中国の政体を簡単に述べると、共産党の一党独裁体制によって運営されております。一応、財界関係者による政治協商会議(政協)というものもありますがこれは業界関係者から政府に対して規制や制度改正といった要望を行う場所となっていて主体的に立法を行うようなものではありません。では中国の政治トップは何によって決まるのか、端的に言ってしまえば共産党内部でのパワーゲームによって決まると言って過言ではなく、かつては�小平が幹部人事を先の胡錦濤までほぼ全部決めていましたが、近年は共産党内部の派閥間で調整が行われるなどして決まります。
 この辺、民主主義しか知らない普通の日本人からしたら「中国には選挙がないの?」とたまに驚かれますが、中国で選挙と言ったらAKB48とその姉妹バンドのSHN48の選抜という意味でしかありません、リアルで。無論選挙制度については中国人も理解はしていますが、当の中国人ですら、「アメリカとかならともかく中国ではやらない方が良いよね」とちょっと達観した考えを持っております。
 
 
理由その一、中国人全体で選挙できるほど啓蒙できてない
 かなりもも蓋もない意見ですがこれは大卒の中国人なら恐らく誰もが持っている考えだと思います。今まで私が聞いた中では最低が2割、最大が9割なのですが、この数字は何なのかというと中国人自身がこの世にいらない中国人として挙げた割合です。よく中国人はマナーが悪いとか横柄だとか頭おかしいと日本人は言ったりしますが当の中国人自身はもっと激しく、人間というよりは獣に近いとかまともな神経していないなどと質の悪いとする中国人を批判しています。
 そんな中国人からしたら全員が選挙権持ったらたちまち投票とかで混乱が起こり、またなまじっか人数多いせいか変な人間も議員になったりして下仁田ネギとかで騒いでる場合じゃないような事態も起こり得ます。こうしたリスクについて中国人は割としっかり認識しており、普通選挙なんてもってのほかと言う人もいます。
 
 
理由その二、地方意識が非常に強い
 これはある意味日本だけがやや特別なのですが、日本は何人かと聞かれたら普通は日本人だと答えてわざわざ「北海道人」みたいに出身地方名を関することはまずないでしょう。中国人ももちろん外国なら「中国人だ」と答えるでしょうが中国国内では北京人だ、上海人だ、ウイグル人などと地方名を出し、なおかつ地方ごとに意識や考え方、下手すりゃ言語だって変わってきます。そして何より重要なのは、中国全土よりも出身地方が発展することを強く望みます。
 一言で言えば出身とする地方に対する意識が強く、同じ中国と言っても日本ほどには一体感を持っていないということです。逆を言えば日本は世界でも稀なほど国内の地方同士で文化水準や言語、メディアが共通化していて一体感が非常に強い国で、米国ですらここまで統一できてはいないでしょう。ただ米国は州ごとに地方差が強く出ますが、政党と軍隊、そして経済は統一できているのでまぁ強い国です。
 
 こうした地方意識の強さというのが政治にどう影響するかですが、自分も最近になって知りましたが隣の韓国なんかは如実に出ており、候補者がどの政党というよりもどの地域の出身者かで支持するかしないかが分かれ、大統領選などは地方ごとに得票差が物凄くはっきり出ます。そして、そうやって選ばれた議員らはやっぱり出身地域への利益誘導を強く行おうとすると聞きます。
 こういっては何ですがまだ国土も人口も小さい韓国ですらこの有様ですから、仮に中国で普通選挙をやったら地方間の対立は確実に深まるでしょうし、汚職も今以上に増えるかもしれません。現時点ですら沿岸地域で徴収した税金が内陸部の開発に使われることについて不満を感じるという声が出ており、それぞれの議員同士で税金の使い道や利益誘導を巡ってかなり激しい対立となるでしょう。その点、共産党は汚職もやらかすけどまた地方間対立についてはニュートラルに近いので、中国という国家単位で運営できる組織なのかなという気はします。
 
 
理由その三、極端な人口比
 その二と多少被りますが、中国は地方ごとに人口に大きな差があり、仮に人口で選挙区を作ろうものなら四川省を始めとした開発の進んでいない内陸部出身の議員が議会で多くの議席を占めることとなります。それに対して上海市や広州市はそのGDP貢献度や影響力に比して少ない議員しか送れず、まぁどうなるかは目に見えてきます。
 
 上記までが私が中国で普通選挙を薦めない主な理由となります。共産党の支配が決して完璧だとは言うつもりはありませんが仮に普通選挙による民主制を実施したら今以上の混乱と停滞を招きかねず、行うまでにはもう少し時間をかけるか制限選挙をするしかないと思います。
 逆に日本人に言いたいこととしては普通選挙と民主制によるデメリットをもう少し自覚してもらいたいです。現代日本は先ほども述べた通りに世界的にもまれなくらいに国家統一が出来ててあまり心配する必要はありませんが、男性のみですが普通選挙法が可決してからの大正から昭和前期にかけての議会政治がどれだけ腐敗して混乱したか、そして軍部の増長を許したという歴史をもっと意識してもらいたいのが今日の私の意見です。

4 件のコメント:

  1. 仮に普通選挙を行われば、当然、上海人は上海人を選びます。北京人は北京人を選びます。それも一つの理由となりますわ。地方主義のカラーが強いですわ。

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    1.  せやろなぁ、日本は統一感高すぎて地方意識の差が出辛く、この辺の内容とかあんま実感持たれへんと思う。

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  2. ちょっと前に深セン市で区長・市長を差額選挙(複数の候補を競わせる)で選ぼう、という話があったのですがいつの間に言われなくなりましたね。

    もしかしたら次の総書記の頃に再びこの話が実現して、都市の区長は選挙で選ぶ時代が来るかもしれません。

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    1.  中国で選挙をやるとしたら、私もまず都市単位で実施するのが現実的だと考えています。ただその選挙方法は香港のように、あらかじめ共産党が候補を複数決めて、数人の候補の中から市民に選ばせるというやり方でしょうが。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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