昨日に引き続き、前に出した派遣マージン率に関する記事の取材における舞台裏を書いてきます。今日は取材を完全拒否してきたライクスタッフィング(旧ジェイコム)についてです。
ここには都合、二回ほど電話をかけており、一回目の電話で相手になったのは比較的声は若そうな女性でした。代表番号にかけて出てきたので恐らく総務スタッフではないかと思うのですが、広報につなげてほしいとすかさず、「現在外出中で戻りません」と即答。ならばといつ戻るのかと尋ねたら、「予定が不安定なためわかりません。明日以降も同様です」という風にすらすらと答え、この時点で「手ごわい。こいつ、エースだ……」と感じました。
最終的な結末はともかくとしてこの時の女性の受け答えは企業広報(恐らくは総務スタッフではあるけど)としては非常に理想的です。具体的にどこがいいのかというと断言している点で、たとえば先程の回答で「今日は恐らく戻らないかも」という回答なんてしたら、「今日中に戻る可能性は有るんだな。だったら携帯にでもかけて夕方前に必ず返事寄越せ」というツッコミを出す隙を与えてしまいます。
その後の回答も完全に「無理」と言わんばかりに全部断言口調で、曖昧に回答されるのと比べると記者側からしたら非常に攻めづらい相手でした。それでも一応嫌味半分で、「常にオフィスにいない広報なんてあり得るんですか?それで仕事回せますか?」と攻めかかってみたものの。「ええ、頻繁にグループ会社間を回ってるので」という風に返されるなど、正直手も足も出ませんでした。
仕方ないのでならメールで聞いたら回答してもらえるかと尋ねて、「それであれば担当者にお伝えしておきます」という風に話をまとめられたこともあり、質問を後ほどメールで送るから返信をくれと伝えて第一ラウンドを終えました。
恐らく、「フリージャーナリスト」と私が名乗った時点で広報には繋げないように判断したのではないかと思います。悔しいですが大手メディアと比べると中小メディアではこういうことは多々あり、取材を暗に拒否されることも少なくはないのですが、こと断り方に関してこの時の女性は非常に手ごわく、ここ数年で相手した中では間違いなく最強でした。ほかの会社で広報している方にもお伝えしますが、回答は基本的に断言口調で二の句を次がせない言い方のが強いです。
その女性との激しい一騎打ちから一週間後。いくらか想像はしていたもののライクスタッフィングからはメールの返信は来ませんでした。やっぱりと思いつつまたあの女性と第二ラウンドに臨める、今回はメールでの返信もなかったことから攻める材料も十分だし今度は負けないぞとばかりにいくらか楽しみな気持ちを持ちつつ電話をかけたところ、生憎電話に出たのは前回の女性とは別の比較的若い男性の声でした。
今回も電話に出るや取材のため広報につないでほしいと開口一番に言うと、その若い男性は一旦電話を置き、相談でもしてたのか戻ってから、「すいません、広報担当者は今外出中です」とまたも同じ返事を出してきました。しかし今回は二回目の電話、しかもメールの件もあるので、「先週電話をかけた時も同じ回答でした」と述べた上で、既に質問メールを送っている、質問内容は貴社のコンプライアンス違反である、このまま全く広報を出さないなら取材拒否としてこちらは扱うと強い口調で述べたところ、「しょ、少々お待ちください」と、少しよろめいた様な口調で再び電話を置きました。
しばらくしてから別の人間、今度はやや年かさを感じる女性が電話に出て、用件は何かと私に尋ねてきました。しかしこの時点である程度結末は予想していたので「御社は広報がいつまでたっても出てこない、メールで聞いても返事こない」と伝えた上で、「真面目に答える気あるのか?」と、一言を入れました。これに対しその女性は、「代わりに私がお伺いします」というのですが、「あなたであれば私の質問に答えられるのか?」とまた強い口調で言うと、一瞬ためを置いて、「回答できるかどうか、まずはご質問を伺えればと思います」というので、質問してやりました。
質問内容はこれまでも書いてきている通り、派遣マージン率を何故公開しないのか、コンプライアンス的にどうなのかというこれまでもいろんな会社に繰り返してきた内容を伝えたところ、「誠に申し訳ありませんが、ご回答しかねます」と、案の定回答を拒否してきました。
ただこっちとしてはマージン率を公開していない企業が悪質だという風に書ければ問題なく、またほとんど想定通りの対応だったため話を締めようと、「では、取材拒否として受け取ってもよろしいでしょうか」と最後に確認した所、「構いません」と即答され、最後に「ご協力(されてないけど)ありがとうございました」と言って第二ラウンドを終えました。
第二ラウンドはともかくとして第一ラウンドは触れられたくない情報を隠す上ではほぼ理想的な対応と口調であったことから、マイナビに比べればまだメディア対応はしっかりした会社だなというのが私の感想です。とはいえ第二ラウンド、ひいては広報を全く出さないのはやはり問題で、取材や回答を拒否するなら拒否するでメールで返答しておけばリスク回避の上でも有利なのにその辺の詰めの甘さは感じます。メールで拒否しておけば電話かけられても、「既に返信した通りです。以上」と切れるのに。
こうした対応だったからなるべくとっちめたかったのが本音ですが、肝心のマージン率の記事がそれほど反応がよくなく、どちらかといえば今回は私が敗北したとみるべきでしょう。情けないことを承知で敗因を述べると、Yahoo記事のコメント欄を見ていて感じたこととしてどうも、派遣労働者当事者の反応が薄いというかあんまり読んでないのではと感じる節があり、これまでのマージン率関連の記事全体でもそうですが、部外者の人間しか読まない上に当事者が反応ないということでこの問題はいまいち盛り上がりに欠けてしまうのではという気がしてなりません。
2 件のコメント:
記事について
こんにちは、
派遣マージン率記事取材の舞台裏~ライクスタッフィング編 について
派遣労働者当事者の反応が薄い。あんまり読んでない。との事、
いまのところ、記事の反応が少ないようですが、陽月氏は若いのでコツコツやった仕事の引用回数が、ある時期に爆発的に増える経験がないかもしれません
この記事で陽月氏の右に出る人はいませんし、着眼点はとても素晴らしいと思います。
そして、労働、給与実態調査、介護、社会保障等、あらゆる分野の講師が、マージン率について知りたいと思ったら、必ず、陽月氏の記事に行きつきます。
あきらめない人間ほど始末の悪い人間はいない。
負けを認めなければなければ、負けない人間が最後に勝ちます。
ところで、お願いですが、陽月氏の
データ対象企業:株式会社リクルートスタッフィング
データ対象期間:2014年4月1日~2015年3月31日 事業所数:31拠点を
私の講習会の資料で引用させていただきたいので、よろしくお願いします。
私は、FPの講師でプロを教えるプロです。
2月と3月で、それぞれ題名は2月「税制から見る貧富の差の広がる社会」3月「ピケティ解説と日本の格差」です。
陽月氏の人材派遣業界のマージン率とそのデータ 2017年版のブログと記事をくまなく拝見しました。特にニチイ学館のマージン率は驚きです。70ページの資料も見ました。
陽月氏の支持者は2017年版の丁寧な仕事は分かると思います
私の勉強会では、分かり易く、インパクトがある簡素なデータが好まれます。
そこで、データ対象企業:株式会社リクルートスタッフィング データ対象期間:2014年4月1日~2015年3月31日を使いたいのです。
このデータは上から下まで見ても、時間はかかりませし、一か所赤字でマージン率の高いところの表示は目を引きます。興味のある人は自分で勉強してくれます。
そして、陽月氏の記事に行きつくかもしれません。
もしよかったら、お時間があるときに2017年版で、1,2枚のインパクトのある簡素版を作ってください。
入れたいデータはいろいろあるでしょうが、特徴的なデータで表一枚25サンプルぐらい、解説一枚で、主張は1つに絞って、バッサリ資料を切ったものがほしいのです。
対象者は、あまり勉強好きではなく、ふつうに、時間のない人が自分のマージン率の興味を持つような入門記事がほしいです。
詳しい資料は、興味を持った人が探して読めばいいと思います。
よろしく、お願いいたします。
マージン率記事についてご感想ありがとうございます。
記事やデータの引用についてはサイト右上の「このブログの扱いについて」で書いてある通り、基本リンクフリーの立場を取っているため特に問題なく、むしろ紹介いただけるだけでも光栄です。
ただ「1~2枚の簡素なデータ」の作成依頼について、ライターとしての矜持として基本的に書いたものがすべてであり、書き上げた後で記事に使用したデータをその他の目的のために加工するというのは独立性の観点からも受け入れられず、誠に申し訳ありませんがお断りさせていただきます。もっともマージン率データだけであれば配信しているPDF版以外にも、個人的にご連絡いただければExcel版のデータでも差し上げるので、それをもとにそちらで加工していただく分には構いません。メールアドレスはこれまた右上に書いていますが、念のためこのコメント欄にも書いておくので必要であればご連絡ください。
アドレス:miyamakikai@gmail.com
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