2013年3月21日木曜日

海外での人件費上昇に関する考察

 近年、中国では人件費の高騰が著しいことから中国以外の別の東南アジア諸国、具体的にはベトナムやミャンマー、インドネシアなどへ日系メーカーの進出ラッシュが続いていると報じられています。進出目的はやはりコストこと各国・地域の安い人件費にあるのですが、短期的にならともかく長期的には果たしてどうかなと少し感じるところがあるので、今日はほぼすべて私見によるオリジナルな話を展開していこうかと思います。

 まず中国の人件費が高騰していることは紛れもない事実です。この前終わっちゃったけど胡錦濤政権の後半では格差解消が大きな政治課題となっており、実際に中国国内の各地域で最低賃金の引き上げが大々的に実施され続けております。それこそ2005年ごろは500元程度だった最低賃金は現在ではほとんどの地域で1000元の大台を超えており、1500元にも達している地域も確かありました。
 こうした最低賃金の引き上げに伴い、大卒初任給も急上昇が続いております。たとえば上海市内であれは2009年は平均で約2000元でしたが、わずか3年後の2012年には約3000元に達したという調査データが出ております。ちなみに同じ調査データでは、2012年の入社3年後の社員の平均給与は約4500元、つまり3年で給与が2.5倍にまで昇給するというなんだか夢のある話も乗ってました。夢があるたって日本人からすればベースが低すぎるかもしれないが。

 このような中国での人件費高騰は大量の従業員を雇わなければならないメーカーにとって死活問題であり、より人件費の低い国や地域に生産拠点を移転しようというのもごく自然な流れといえるでしょう。中国では昨年にスポーツ用品メーカーの独アディダスが唯一の自社工場を閉鎖し、委託工場への発注も大幅に減らすなど明確な生産移転を打ち出したことが大きく話題になりましたが、日系でもこのところ「中国撤退」という言葉が出て、先程挙げた国に進出するべしという意見がよく出ております。単価の低い商品、具体的には玩具や雑貨、繊維系メーカーなどにとっては実に頷ける話です。
 ただここまで書いておきながらですが、だからと言ってすぐに中国から生産移転をしていいものか、ほかの国に生産移転すればそれで済む話なのかというと少し疑問があります。もったいぶらずに言うと、短期的には安い人件費の恩恵を享受できるとしても長期的には中国以上に急激な人件費高騰を受けるのではないか、という懸念があります。

 私がこのように考える理由は単純に、人口の違いです。言うまでもなく中国は世界最大の人口大国で、豊富な労働力を背景に世界の工場として君臨するに至っております。その中国ですらこの10年の間に人件費が大きく上昇したのが現在の状況ですが、逆を言えば人口が多い中国だからこそ人件費の上昇はこの程度にとどまっていたのでは、具体的には賃金の上昇スピードはまだ緩慢だったのではないかと私は見ております。それこそ、中国ほどではなくともインドネシアなどの国に外資メーカーの進出が相次いだら2~3年という短い間に賃金が2倍、3倍と上昇していく可能性がある気がします。
 参考までにアジア諸国の人口統計を下記に記載します。

中国:13億5300万人(2012年)
インドネシア:2億2900万人(2008年)
日本:1億2600万人(2012年)
ベトナム:8400万人(2008年)
ミャンマー:5000万人(2008年)
※すべてWikipediaより引用

 見てもらえばわかる通りに、ベトナムやミャンマーは中国どころか日本以下、インドネシアはまだ日本を上回っているもののそれでも中国からすれば六分の一程度です。アジア域内で中国に互す人口を抱えているのは唯一インド(11億9800万人)がありますが、インドへの進出はその治安、インフラの悪さに加えカースト制度や宗派対立があるためその苦労は並大抵じゃありません。それだけに向こうで頑張っているスズキは本当にすごいと思うんだけど。

 国にもよるでしょうが、外資メーカーの進出ラッシュが起こることによって今の中国みたいに人手不足がすぐ発生するように思えます。そして不足する人手をかき集めるため人件費も高騰、それに合わせて最低賃金も引き上げへ、この辺の上昇ペースは相当急だと思います。これらの国へ進出するのは日系に限らずさっきのアディダスのように独系、米系もいるからです。
 仮に賃金がこれから急激に上昇していくことも織り込み済みで中国以外の国へ進出するというのであれば問題ないでしょうが、この点を見落とす、現状の人件費水準だけに着目して進出を決め、工場を設立しても投資額を果たして回収できるのかという懸念を覚えます。それであれば既に人件費は高騰しているものの圧倒的な人口を背景に巨大な国内市場を持つ中国に留まるという選択肢も、商品やサービスによってはありじゃないかと個人的に思います。

 今日ここで書いた話は私の完全オリジナル、というか思い付きの話であるため具体的な根拠性についてはやや乏しいです。むしろ問題提起するという意味で書いているので、意見がある方などはどんどんコメント欄に書いていってもらいたいです。
 ちなみになんでこんな話を思いついたのかというと、2005年に出版された中国関連の新書を読んでて当時の人件費が500元前後と書かれてあったのを見てビビッと来ました。我ながら妙なところに反応する傾向がある気がします。

2 件のコメント:

  1. 最近、上海の最低賃金はまた引き上げたので、安い賃金メリットはどんどん失っていますわ。
    むしろ、工場を東南アジアにシフトしたほうがええと思います。
    いや、アフリカはさらに安いですね!

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    1.  俺も調べてみたけど、早速上げてたね。ちょっと面白いし、次の記事で取り上げてみるよ。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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