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2013年3月30日土曜日

暗殺者列伝~山口二矢

 このところ「暗殺教室」、「AZUMI」という暗殺に関わる漫画ばかり読んでて「暗殺」という言葉に対していろいろ思うことがあるので、実在した暗殺者を取り上げて皆さんと一緒に考えてみたくなりました。そんなわけで、「猛将列伝」に続く列伝物のカテゴリーとして今日から「暗殺者列伝」っていうのを始めます。栄えある一発目は物知りな友人も知らなくて「ヨッシャヽ(・∀・ )ノ」と思った17歳のテロリストこと、山口二矢(やまぐちおとや)を取り上げます。

山口二矢(Wikipedia)

 恐らく自分と同世代の人間はまず間違いなくこの人のことを知らないでしょう。自分よりやや年上の世代でも同じかもしれませんが、1950年より前に生まれた人であればこの名前を見るだけでピューリッツァー賞も受賞したあの写真の情景が浮かんでくるかと思います。この山口二矢がどんな人物か簡単に述べると、17歳時に当時の日本社会党委員長である浅沼稲次郎を刺殺し、逮捕後は東京少年鑑別所内で首を吊って自殺した人物です。

 山口二矢は1943年、戦後になってからでしょうが父親が自衛官という家庭に二男として生まれます。幼少の頃から軍国主義的な性格の兄の影響を受け右翼思想を持ったとされ、高校に入学後は右翼団体とも交流を開始し、高校を中退してからは正式に愛国党という党員になります。

 彼が行った暗殺は既に記してある通り、浅沼稲次郎の暗殺です。左派勢力に反感を抱いていた山口二矢は自宅にあった脇差を忍び、日比谷公会堂で開かれた自民党、社会党、民社党の3党党首演説会で壇上に立った浅沼稲次郎に飛びかかり、彼の胸を2度突き刺して暗殺しました。この暗殺時の情景はネットで検索すれば出てくると思いますが、毎日新聞の長尾靖カメラマンが見事に収めたことによって後に彼を日本人初のピューリッツァー賞受賞へと導きます。
 もっともこの時の撮影については以前に誰かが、当時はまだフィルムが貴重な時代でほかのカメラマンは演者がみんな登壇した時に撮影して使い切っていたところ、長尾カメラマンは仕事を横着していたことからたまたまフィルムを残しており、うまいこと撮影に成功出来たと書いておりました。本当かどうかはわからないけど。

 話は戻りますが、刺された浅沼稲次郎はほぼ即死で、山口二矢はその場で自決を図りますが警官に取り押さえられています。取り調べに対し山口二矢は比較的落ち着いた態度だったとされており、警察は何かしら背後に暗殺を指示した組織があるのではないかと問い詰めたものの本人はあくまで単独犯だと主張し、暗殺理由については浅沼稲次郎個人に恨みはないものの、社会党の指導的立場にいることから決行したと証言したとされます。
 そして逮捕から三週間後、山口二矢は鑑別所内で首を吊って自殺します。壁には歯磨き粉で「七生報国 天皇陛下万才」と書いておりました。こうした鮮烈な一生であったことから死後は右翼勢力に祭り上げられたそうで、未だに追悼祭なども開かれていると聞きます。

 私はこの事件を高校生の時に知りましたが、正直に言ってびっくりするような強い印象を覚えました。当時の心境を言うと、当時の自分と同じような年齢でこんな大それた事件をやった奴がいたのかと思うのと同時に、今現在イラクやアフガニスタンで起きているような政界重鎮の暗殺がこの頃の日本に起こっていたのかなどということを思ったのを今でもよく覚えています。ただ山口二矢の行動に関しては間違いなくテロそのものであり肯定する気にはなれず、尊敬とか崇望みたいな感情はついぞ覚えることはありませんでした。

 しかし、ちょっと表現し辛いのですが、尊敬や崇望はしなかったものの、少なからず共感は感じました。こう書くとなんか自分が危ない人間に思われる懸念はありますがありのままに書くと、あの時の共感は十代における思い込みの激しさや、まるですがりつくかのように一つの思想・概念に凝り固まりやすい時期だったからじゃないのかと、今現在思います。

 大分前にも書きましたが、私も中学から高校の一時期はやや表現が古いですが軍国少年っぽい思想を持ち、政治とかにも興味を持ってわかった振りして吹聴し回ってたのですが、ああいう風になるのは反抗期の影響が強い気がします。自分の周囲も自分ほど極端ではなくとも、親とか教師とか学校とか既存の概念に対して反感を持つ一方、国家とか宗教、オカルトみたいなとかく巨大で一見確固としてそうな概念に魅かれる、しかもかなり思い込み激しく傾倒するところがあったように思え、あの年代というか10代の中盤から後半ってのはそういう時期だと考えてます。
 ただそうした思い込みはあくまで思い込みに留まり、実際の行動として出てくるのは中二病と呼ばれる痛い行動程度なのが一般です。それだけに、暗殺というとてつもなく恐ろしい事を本当に実行してしまったという点で、高校生の自分は山口二矢に対して感じるところというか、自分みたいに妄想だけで実行しない臆病者とは違うんだなと思ったのでしょう。無論、そんな臆病者で自分はよかったと、年を食った自分は思うわけなのですが。

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