2017年1月11日水曜日

最近の取材なき報道を見て

モーニング編集長が読者に謝罪 朴容疑者は「進撃の巨人」担当ではなく「掲載誌の創刊スタッフ」(スポーツ報知)

 例の講談社の漫画雑誌編集者が逮捕された事件についてそれほど興味は持ってなかったのですが、上記の記事を見て別の意味でなんじゃこりゃと驚きました。というのもこれまで度の報道でも逮捕された編集者は人気漫画「進撃の巨人」の担当編集者だったと伝えられていたにもかかわらず上記のスポーツ報知の報道では、

「『進撃の巨人』の立ち上げ担当と報じられていることは事実でないと否定。掲載紙『別冊少年マガジン』の創刊スタッフで、『進撃の巨人』を担当したことはない」

 と、同じ講談社の編集者のインタビューが載せられてあり、同じ掲載誌の起ち上げに関わったものの「進撃の巨人」自体は担当していないと書かれてあります。そうなると一体これまでの報道は何だったのかと思うと同時に、これまで誰も取材してこなかったのかという意味で二重に驚きました。
 私個人の記者経験から述べると、このような間違いは報道に置いては本来絶対に起こり得ないはずですし、絶対に起こしてはならない初歩的なミスであります。その理由を説明するため、取材を絡めた記事作りの過程を簡単に説明しましょう。

 まず普通の新聞社などでは自前で拾ってきた情報というのは案外少なく、大半のニュースネタは企業が出すプレスリリースや、共同通信や時事通信などの通信社が配信するニュースリリースであったりします。そうしたリリースによる第一報を受け取った後、編集部内で誰が書くか担当者を決めて、決まった後でその担当者は情報を再確認するための取材を行います
 この過程が一番大事なのですが、仮に共同通信のリリースをそのまま使用するというのであれば「共同通信はこのほど~」といったようにネタ元が共同通信であることを示す必要があります。しかしこれではメディアとしてややかっこ悪く、ただの聞き伝えでないことを示すためにもよそが報じているニュースであろうとニュースネタの当事者に取材して、直接話を聞いて情報を得る必要があるからです。そうやって当事者から話を聞ければ、今回の場合だと「講談社はこのほど~」という風に記事が書けるようになります。

 実際に私もそうした取材を何度もやっており、一番多かったのはプレスリリースのない日経新聞のスクープネタの裏付け取材でした。こうした報道だとネタ元は日経新聞しかないため「日経新聞はこのほど~」と書いたりすると非常にかっこ悪いだけに、そのスクープの当事者である企業広報に電話して、「おう、日経がこない報じとるけどほんまかいな?」と聞かなければなりません。その際に気を付ける点として、すべての用語や数字について一言一句確認を取るというのがあります。
 投資話であればその投資額は○百万円で本当に合っているのか、実行はいつなのか、合弁相手の名前は正しいのか、たとえ日経新聞がそれら情報について既に記事で書き記していても絶対に直接確認しなければなりません。ちなみに確認すると意外と相違があったりして、「おいおいちゃんと取材してくれよ日経さん」と言いながら記事書いてました。

 話は本題に戻ります。今回の講談社の事件に関して言えば講談社に対して直接事実確認していれば「進撃の巨人」の担当編集でなかったことは絶対に事前に確かめられたはずです。しかし実際にはほぼすべてのメディアで上記の誤報を掲載しており、中には連載起ち上げに関わった後で現在は担当を外れているという報道もありましたが、一体何故みんなして間違った情報を流してしまったのか。結論から言えば第一報を報じたメディアもしくは警察発表に対し、どのメディアも裏付け取材を行わず、そのまま自分で取材確認しないまま無断で引用して垂れ流したからでしょう。

 上記で述べた通り、私が記者だった頃は既報であろうと必ず裏付け取材を行っていました。しかし今回の一件を見ると最近のメディアはそうした取材をやっていないということになるわけですが、この事件に限らずともこのところの報道見ていると取材したあとが全く見られない報道が多く、真面目に今現場はどうなっているのかと疑問に思うと共に物凄い危機感を覚えます。

 何気にそうしたほとんど取材せずに既報や会社発表だけを垂れ流す昨今のメディア状況に付け込んで書いたのが、昨年末の上海大江戸温泉の記事でした。それ以前に報じられている内容を見ているとどのメディアも取材したあとが全くなく、オープンしているにもかかわらず中に入って詳しくその状況や従業員に話を聞いたりするメディアが見られなかっただけに、「ああこれ突け込めるな」と直感的に思って書きました。
 何気にあの記事、入浴から熊本県庁、日本大江戸温泉への取材、執筆、編集、配信を一日以内ですべてやってのけた記事でしたが、他のメディアは多分、日本大江戸温泉に対してすらもそれまで全く取材していなかったのではないかという気がします。あくまで勘ですが、広報担当が質問に答える時の声が明らかに慣れていない感じしたし。

 私自身、何も取材だけが報道じゃないと考える立場ではありますが、最近のメディアを見ていると必要な取材すらサボっている現状が見られ、記者自身というよりもそれを統括するデスクや編集長などは何をやっているのかと強く疑問を覚えます。二年くらい前ですがテレビ朝日が自分で全く取材してないにもかかわらず週刊誌の記事を無断で引用して報じるということがありましたが、メディアの倫理観とかそういうレベルの話じゃないのに何故こんなことが起きるのか、メディア全体でこの方面についてもっと危機感を覚えるべきでしょう。むしろ取材姿勢について新聞、テレビメディアは、もっと週間誌を見習うべきかもしれません。

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