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2020年6月14日日曜日

個人同士を安易に比較する危険性

 今でも夢に出てくるくらい納得いかないと感じる出来事として、高校時代におふくろに姉と比較された出来事があります。それはよく家庭内であるワンシーンで、高校生だった私に対しておふくろが、姉は学校でも常に上位の成績だったのにどうしてお前はそんなに不勉強なんだという小言です。
 この手の勉強に関する小言は姿を変え形を変え何度となく言われ続けており、それ自体に関しては子供の教育を預かる親の立場としては言わざるを得ないし、言いたくなるのも仕方ないと私も思ってて今になって特段不服を言うつもりはありません。しかし上記の姉との比較に関しては高校生だった当時においてすらも、「なんで姉貴が比較上位なんだよ?」と激しく疑問に感じました。

 言っては何ですが高校生だった頃の姉については、中学生だった自分が見ていた限りですらとてもまともに勉強しているようには見えませんでした。購入していた参考書数も見ていて不安になるくらい少なかったし、英単語帳を開いている姿もほとんど見たことありません。挙句には自分には不要と言って、実際はただ単に面倒くさかっただけだと思いますが、センター試験すら受験していませんでした。
 そんな受験姿勢もあってか受験した大学の学部学科のうち合格したのはわずか1校のみで、偏差値50以上の大学にはどこも受かりませんでした。結果的にはその合格した地方大学に姉は進学しましたが、この点についてはどんな進路を進むかは本人が決めたものであり、偏差値の高い低いは本人が納得しているのなら何も問うべきことではないと私自身は考えています。

 しかし姉の進学先はともかくとして、先ほどの姉との私の学力に対する比較については未だ強く納得できず、激しく不満に感じています。結果的には私は姉の進学先と比べた場合は遥かに上位の大学を複数合格しており、高三受験時の学力で比較した場合、私と姉とでは真面目にナッパとラディッツくらいの大きな差がありました。なお比較例は最初「ベジータとラディッツ」でしたが、地球襲来時とスーパーサイヤ人以降でベジータには戦闘力に差があるのでナッパにしました。

 そもそもなんで姉はおふくろが言うには高校内の成績で上位だったのかというと、単純に学校間の差による影響が大きいです。姉は県下の普通科公立高校に通ったのに対し、私は自称進学校の私立高に中学から通っており、自称とは言え通う生徒の平均学力で見れば大きな差がありました。敢えて例えるなら姉の高校の生徒は地球人レベルだったのに対し、私の高校の生徒はナメック星人くらい平均的に強かったと思いますが、いい加減ドラゴンボールでの比較はやめようかと思います。別に肌が緑でもなければ触覚も生えてないし。

 なお私の高校時代の成績は大体上位1/3、っていうか今でも自分で不思議だと思いますが、高校1年から2年の間の定期テスト順位は生徒300人中、なぜか毎回確実に100~109位の間にランクインし続けていました。高3からは文系理系で分かれたこともあって偏差値基準の順位で二桁に位置し続けましたが、1~2年の間の謎の固定的順位奪取に関しては何か表彰されても良かったのではと今でも思います。途中からは、「何か仕組まれてこんな順位になってるのでは?」とMMRっぽい陰謀論すら覚えてました。

 話は戻すと、高校生の時点でそうした学校間の生徒の学力差はおろか姉が受験時においてもほとんどまじめに勉強していなかったことをはっきり理解していたこともあって、冒頭にかいたおふくろの姉と比較しての勉強に関する小言に関しては到底納得できない感情を持ち続けています。私自身もほんまもんの受験エリートと比べれば受験時は不真面目もいいところでしたが、少なくとも姉と比較した場合は、言い方は変ですが比較にならないくらいは勉強しており、「なんで努力している人間が全く努力をしなかった人間と比較された上で下に扱われるんだろう」と思いましたが、どうせ説明しても相手も理解できまいと思ってその場では黙って、受験時の結果ではっきり差を示すことにしました。

 なんで急にこんな古い愚痴を言い出したのかというと、このケースのように個人同士を安易に比較することはかなり危険だということを書こうと思ったからです。上記の私と姉の例の様に、そもそも通っている学校間で激しいレベル差があるとい基本的な比較条件すら一致していなかったというのに、定期テスト順位だけで「姉の方が勉強している」などという結論を出すのは論外もいいところで、それをそのまま当てはめて私に小言を言ったところでそりゃ私もおかしいと思うに決まっています。

 また仮に比較条件が整っていたとしても、やはり他のできる人と比較されてうれしい人間なんてまずいません。それこそ企業内で同期同士を比較する場合、出世の早さは貢献の度合いや担当業務、上司との関係で決まるものなので差がついても当然ですが、業務能力に関してはわかっていても比較されると悔しく感じるのに決まってます。
 それでも10年くらいの期間の結果であればまだしも、入社して半年とか1年くらいの同期同士で能力を比較しようったって、短い期間では潜在パフォーマンスを見極められない可能性も高いだけに、比較するだけ下に下げた人間の恨みをただ買うだけでしょう。下手すれば、下げた人間が比較上位対象に対し逆恨みのような感情を抱く可能性すらあります。

 そうした考えから私は社内では、年齢差のある先輩社員などとは比較することはあっても、同時期に入った人間同士で、「向こうを見習え」等とは言わないように気を付けています。叱咤する場合はあくまで成果や時間のみを基準に、「もっと効率アップしてここまで狙おう」などと具体的な目標を提示するようにしています。まぁ一番いいのは、同じ業務をよーいどんでやって、実力差を敢えて見せつけることですが。

 その上で言うまでもないですが、おふくろがやった私と姉の比較の様に、表層的な数字だけで実態を示さない基準で個人同士を比較することは絶対にやってはならないでしょう。それこそ本当に努力して実力もある人間に対しそうじゃない人間、または一見して差がはっきり見えない人間を見習えだなんて言うと、モチベーションが下がるどころの騒ぎじゃなく流出すら招く恐れもあります。だったら初めから個人同士を比較なんてせず、私みたく具体的なタスクを基準に効率アップを目指すよう伝える方が無難です。

 もっともこんなこと言いながら以前いた新人に、同期で入って来た別の新人の名前を挙げて、「彼の体力マジ半端ない。悪いことは言わないから彼とはケンカせず、同期同士で仲良くした方がいいよ(;´・ω・)」と伝えたことはありますが。実際その半端ない体力ある新人は現在も大活躍していて、この点に関してはちゃんと自分は見抜いてたなとか思ってます。

 最後に蛇足ですが、以前にも書いたようおふくろと姉は反権力志向の塊のような私に対し、公務員が向いていると本気で信じていたそうです。この一点から見ても如何に両者が自分の人物像を把握してない、ひいてはまともに直視していなかったことが窺えますが、おふくろは多分私だけじゃなく姉もちゃんと見ていなかったから、どれだけ自分よりも勉強していなかったのかがまるで把握していなかったのだと思います。それでお小言言われるのだから、私もとんだとばっちりもいいところでしょう。

 一方というか大学時代の友人らは私に対して大学時代から、「君は志望通りに記者が一番向いていると思う」と言い続けていました。友人間の世辞もあるだろうと私は受け取っていましたが、実際に記者になってから同僚や上司から、「芯から記者のような人間」、「記者になるため生まれてきたような人間」と実際に言われるようになって、友人らの言葉は正しかったと改めて思うようになりました。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

books&appsというサイトに「わかりやすくするためであっても、どっちかを上げて
、どっちかを落とす論法は、危険。」というコラムが掲載されていました。
そのコラムによれば、他人に物事を説明する場合、絶対評価よりも相対評価の方が
相手によりよく理解してもらえる。また、説明の中に「対立軸の導入」を組み込め
ば、より相手の興味を引きます。(例えば、ラディッツは髪が長かったから女性
サイヤ人にモテた。 ナッパはハゲだったから強さを貴ぶサイヤ人の中でも女性
サイヤ人からの評判はいまいちだった。)

ただ、この相対評価、対立軸の導入という論法の欠点として 便利すぎるかつ
強力な説得力を持つため適切でない討論についてもこれら(特に対立軸の導入)
の論法を使いがちになる。その結果片方を持ち上げ、もう片方の評価を下げる
という結論になりやすい。その結果余計な敵をつくってしまい炎上することに
なります。

上記コラムにおいては 平田オリザ氏の例を挙げていました。 オリザ氏は
「製造業はいいけれど演劇業界は大変で苦しいのですよ」と発言し、炎上
しました。オリザ氏は悪意はないものの無意識のうちに自分の主張に
「対立軸の導入」を使ってしまった。オリザ氏のような(一応)表現者
ですらその危険性を見落とし無意識のうちに使ってしまうほど
「対立軸の導入」は便利かつ分かりやすい論法でした。

なにはともあれ平田オリザ氏は「他の業界を低く見るいけ好かない奴」だと
思われてしまいました。 彼にとっても不幸な結果になりましたね。

花園祐 さんのコメント...

 オリザ氏はほんとにただ自分の評価を下げるだけしかしなかったのが意味不明でした。でもおっしゃる通り、何も比較せず芸能界に慈悲をと言っていれば、まだ体面は保てたでしょう。
 それにしてもナッパは退場が早かったのに今でもやたら人気なのが凄いと思います。何気にゲームの必殺技に「クンッ」があったのには感動しました。