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2009年7月8日水曜日

ウイグル暴動について

 本日友人からリクエストを受けたので、現在も報道が続いている中国新疆ウイグル自治区の暴動についてコメントします。最初に断っておきますが私は中国関係の解説には自信がありますがこのウイグル問題についてはこれまであまり扱ってきたことがないため、本当はコメントするだけでもおこがましいのですが現在持ち合わせている知識と知見から今回の騒動について書かせていただきます。なのであまり内容は鵜呑みにしたりせず、あくまで一つの意見としてご覧ください。

 まず本日届いたばかりのニュースですが、今日から行われる予定だったG8サミットこと世界首脳会議に出席する予定で開催地のイタリアにまで来ていた中国の胡錦濤首席が今回の新疆ウイグル自治区にて起きた暴動の影響を受けて急遽帰国しました。サミットには代理の人間が出席するようですが、今回のサミットは発展途上国の中でも世界への影響力が近年非常に高まっている中国が北朝鮮の核問題ひとつとっても重要な位置となると見られていただけに、それをキャンセルしてまで帰国することとなったのは相当の事態になっていると見ていいでしょう。
 その帰国するきっかけとなったウイグル自治区での暴動ですが、死者数などが百人を超えたとすでに中国系のメディアも報道していますが元からこれは信用できない数字なので、実際にはこれの倍以上が死亡している可能性が高いと見ています。現地の映像はイランでの選挙後の混乱時ほど海外のメディアにはまだ流れていませんが、一部で報道されているウイグル人の証言によると暴動に参加していない成人男性も片っ端から連行されているらしく、まぁ中国ならやりかねないと私も思います。

 それでこの暴動の背景についてですが中国政府とメディアは今回の暴動は外国の独立派、というよりウイグル自治区を中国から分離独立させて中国の弱体化を図ろうとしている団体の扇動によって引き起こされたと主張していますが、この見方についてはやや見当はずれではというのが私の意見です。元々ウイグルはかねてより中国からの独立派がいて海外に亡命したウイグル人などは人権問題を主張して中国からの分離独立を長い間唱えていますが、別に現地へ武装蜂起を行うようにバンバンと銃火器を送っているわけでもなくただ国際社会に訴えているだけで、今回の暴動(政府が公開した映像を見る限りはそういった銃火器は見られない)に対してはオーバーな表現だと言わざるを得ません。第一、中国は本国、それも同じ漢民族の農村などからも暴動が起こる国なのですから説得力自体が疑わしいものです。
 ただ中国政府としたらこの地域が分離独立されると困ると言うのは間違いではありません。というのもこの地域には最近になって天然ガスなどの資源が豊富にあると判明し、意外と資源が不足している中国としたらむざむざ手放すには惜しい地域でしょう。

 ここでちょっとウイグルの歴史について軽く解説しますが、元々ここは漢民族とは異なる突厥系(チュルク系)の民族が住んでいた地域で、チベット地域同様に中華人民共和国の成立後に人民解放軍によって事実上侵略されました。侵略後は現地の住民の土地は片っ端から収奪されて漢民族の入植が進んだというのは他の自治区と同様なのですが、この地域の特有の歴史と言うのが核汚染です。
 なんでも中国が核爆弾を研究する際にこの地域が実験場として選ばれ、数十回の核実験によって相当な地域が汚染されただけでなく被爆によって数万人のウイグル人が亡くなったと言われております。

 これだけのことをされたらそりゃ暴動も起こって当たり前だろうと思えるのですがさらにこの地域における特別な要素として、ウイグル人の宗教がイスラム教という点も見逃せません。知っての通りにイスラム教はその戒律の厳しさゆえに他の文化の慣習となかなか馴染まないところがあり、現在のイラクやアフガニスタンのように抵抗活動が始まるとなかなか終結しない傾向があります。元々宗教勢力というのは日本の一向一揆でもそうですが非常に根強い団結力があり、宥和政策ならまだしも強権によって屈服させるのは至難の業です。

 先に書いた通り、中国政府は今回の暴動が外国の勢力によって引き起こされたと主張していますが私はこれは中国政府にとって非常に大きなミスとなる発言だと思います。そう強がって発言するしかないというのもわかりますが、仮にこのまま国際的な注目がどんどん集まってアフガニスタンなどにいるイスラム教の国際テロ組織などがウイグル独立派を本格的に支援することとなれば恐らくその被害の大きさは今回のものとは比べ物にならなくなるのは確実です。
 去年の北京五輪前にもウイグル自治区のバスが連続で爆破された際に「トルキスタン・イスラム党」なる団体が犯行声明を出しましたが、本格的に銃火器などが密輸されることとなればそれこそアフガニスタンの二の舞となる可能性があります。

 そのため今回の暴動に対しては海外からの扇動という言葉は使わずに現地住民の一部が暴徒化したという表現に止め、適当な人間をでっちあげてもいいから見かけだけでも話し合いの姿勢を見せる必要があったと私は考えます。もし政府の言っている通りに海外からの扇動が今回の暴動の原因であったとしても、その扇動を跳ね除ける現地住民の慰撫策が失敗していることをもっと認識しなければますますこの問題は拡大するでしょう。

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