前回に引き続き、国家モデルの類型について今日は解説します。前回は国家の立ち位置を決める上で非常に重要な要素となる軍事、外交に着目して分類を行いましたが、今日は国家の権力体制に着目して分類を行います。そういうわけで早速、今回は量が少ないですがモデルを一挙に並べるとします。
1、中央集権国家(旧ソ連、現中国)
2、地方分権国家(アメリカ)
3、NGO混在国家(欧州諸国)
この三つの分類は厳密にどの線で分けるのかが非常に難しく、一応中央集権国家の代表例として旧ソ連と中国を挙げてはいますが、この両国は見方によっては今の日本以上に地方分権国家的な性格を持っており、あくまでどのような体制かをイメージする程度に見てください。
それでは各モデルを細かく解説していきますが、まず一番目の中央集権国家からです。恐らくこのモデルが今の日本に最も近く、今の選挙での一つの争点となっている地方分権議論はこのモデルから脱却するか維持するかという議論といってほぼ差し支えはないでしょう。
この中央集権国家モデルというのは文字通り、国家を運営する上で中央官庁、日本であれば霞ヶ関の官庁に権力を集中させて領域内の全国において画一的な政策を取るべきという考え方で運営される国家体制を指します。そのためこの国家モデルに属する国家はどこも白いものを黒としてしまうほど中央官僚が強い権力を持つ傾向がありますが、経済や国家運営が円滑に動いている際には物事を運ばせやすいために概して攻めに強い体制だと言えるでしょう。
しかしその一方、やはり中央が強い権力をいつまでも保持し続けてしまうために権力の自浄能力が低く、今の日本の官僚同様に権力が腐敗しやすいという弱点も抱えております。事実旧ソ連などはチェルノブイリ原発事故で一気に明るみに出ましたが当時の管理体制は非常にガタガタだったそうで、官僚機構もどこもかしこも穴だらけでみんながみんなでいい加減に国家を運営していたそうです。現中国においてもその傾向は強く、腐敗官僚の汚職や贈賄事件などは日本の例がかわいく思えるほど桁外れなものが近年表出しております。もっとも中国はエリート教育が割合にしっかりしており、また経済も絶好調なので大きく国内が混乱するにまでは至っておりませんが。
こうした中央集権国家に対してアメリカに代表される地方分権国家、というよりも表現的には連邦制国家というのは向こうが攻めならこっちは守りが強い国家体制ではないか私は考えます。知っている人には当然ですがアメリカでは各州の自治裁量権が大幅に認められており、州ごとに軍隊もあれば教育制度も自由に決めることもできます。確かニューメキシコ州だったと思いますが、親が希望するなら児童を小学校に通わせなくても良いという条例があった気がします。
この制度の強みは何かと言うと、実際に政治を切り盛りしている政治家や官僚たちを選挙民は割と間近に見ることが出来、アホな奴なら片っ端から選挙で引き摺り下ろせれば画期的な提案を行う人材もどんどんと議場に送り込むことが出来ます。また中央集権国家のように領域全土に画一的な制度を敷く必要がないため、やれるものならどんどんと自分たちの領域に政策を繰り出せることから悪い状態から一気に抜け出すことも出来ます。
この例で有名なのを挙げると、90年代におけるニューヨーク州の例が最も適例でしょう。以前のニューヨーク州は犯罪率も高くお世辞にもあまり住みよい町ではなかったそうですが、9.11テロ時に市長をしていたことで有名なジュリアーニ氏が街の美化運動や市警改革を行ったことにより劇的に治安を回復させることに成功しました。まぁこういう風に劇的に良くなる一方で、劇的に悪くなる可能性もあるということですが。
ちょっと今の日本の政治状況と重ね合わせて説明すると、現在の日本の税金は全国各地から集められてその用途をほぼすべて中央の官庁が決めております。そのため大阪の橋本府知事が吠えているように、中にはありえない無駄遣いに税金が使われるのをこれまで地方は黙ってみることしか出来ませんでした。そうした状況を打開するために、地方が自分で集めて自分で使える税金の割合を広げ、地方という現場においてその用途も決めるべきだと言うのが知事会の主張でして、私としてもこれ事態が徴収コストの圧縮につながることからこの主張に賛同しております。
このように権力体制で見れば恐らく日本人からすればほぼこの二者択一なのですが、私もあまり勉強していないものの欧州ではこれに対抗する第三の国家モデルこと、NGO混在型国家があるのではないかと私は考えております。
聞くところによると欧州では貧民援助や国際貢献活動を政府とは直接的に関係のないNGOが大部分においてカバーしており、国家としても自分たちでそうした活動団体を組織するよりはずっと安上がりということで、彼らNGOに税金から活動資金を与えることでそうした社会的役割を代替してもらっているそうなのです。これをもう少し分かりやすく言い換えると、社会上必要とされる活動や組織を国がお金を出すことで民間にやってもらうという形で、なんでもかんでも国がやったり経済原理で動かすのではなく国家とはまた別の組織と協力し合って行っていくというモデルです。
あまりこのモデルについては私自身が不勉強と言うこともあってうまく説明できませんが、まさに第三の道と呼ぶにふさわしいモデルでしょう。今後このモデルがどうなっていくのかはなかなか興味があります。
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