先日店頭に並んでいたのでのコミックフラッパーで連載している「殿といっしょ」(大羽快氏作)という漫画の1巻を買ったのですが、内容は戦国大名に題材をとったギャグ四コマ漫画でなかなかディープな歴史ネタが盛り込まれており、女性キャラの書き分けができていなくて見分けがつかない点を除くとそこそこ読める内容だったわけなのですが、そういった内容以上にこの漫画で一番気になったのはそのあまりのページ数の薄さでした。基本的に四コマ漫画はどの雑誌でもページ数が少ない中で連載されるため単行本は薄く、かつ発行ペースも間隔が大きく空きがちなのですが、この「殿といっしょ」の1巻に至ってはなんと127ページしかなく、それでいて値段は他の通常の漫画と変わらず540円(税込み)だと言うのですから、なんというか値段に見合わない気がして読後感は正直言ってとても悪かったです。
この「殿といっしょ」はメディアファクトリー社出版ですが、ここに限らずこのところ漫画の値段の高騰振りが目に付きます。大分前にデフレについて記事を書いた際に日本の物価は消費税5%導入後は総じて低下しているものの何故か書籍だけは上昇を続けていると書きましたが、このところ各漫画出版社が古本屋やインターネットでの不正アップロードによって漫画が売れなくなったと自らの窮状を訴えるのを見るにつけ、そもそも値段を上げ過ぎなのが販売、業績低下の原因ではないかと苛立ちとともに感じていました。
そこで今日は週末で力も入れられるということもあり、ちょっと頑張って如何に漫画の値段が上がってきているのか自宅内で検証してみようかと思います。
まず漫画の値段ときたら、避けては通れないのが漫画雑誌の値段です。ちょうどよくウィキペディアに少年ジャンプの値段の変遷がまとめられているので、早速下記にて引用します。
・週間少年ジャンプの値段の変遷
創刊時 - 1970年6月 90円(100円?)
1970年7月 - 1970年11月 80円(不明)
1970年12月 - 1973年3月 90円(100円)
1973年4月 - 1973年11月 100円(不明)
(1973年11月16日 第一次オイルショックに伴う「石油緊急対策要綱」を閣議決定)
1973年12月 - 1976年6月 130円(150円)
1976年7月 - 1980年6月 150円(170円)
1980年7月 - 1989年3月 170円(180円、または190円)
1989年4月 - 1990年8月 180円(190円、または200円)
(1989年4月1日に消費税3%が導入された)
1990年9月 - 1996年1月 190円(200円、または210円)
1996年2月 - 1997年8月 200円(210円、または220円)
1997年9月 - 1998年4月 210円(220円、または230円)
(1997年4月1日に消費税税率が5%に変更)
1998年5月 - 2004年4月 220円(230円)
2004年5月 - 2008年8月 230円(240円、または250円)
2008年9月 - 240円(250円)
※括弧内は特別定価
自分が記憶している限りでジャンプが最も低い価格だったのは180円で、その頃と比べると消費税が導入されたとはいえ60円も高い240円、率にして13%も上がっているとは、こうしてみると改めて驚きです。とても今の世の中がデフレだとは思えない上がり方です。
ただこの値段の上昇の仕方についてはいくつか意見があり、確かに値段は上がったもののページ数も同時に増えていて1ページあたりの単価はそれほど上がっていないと下記のサイトでは主張されております。
・週刊少年漫画雑誌はここ30年くらい値上がりしていない(情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明)
上記サイトでは時代ごとにページ単価を比較しているのですが、何故かはわかりませんがジャンプやマガジン、サンデーなど複数の雑誌を一緒くたにしているうえに発行年もかなりバラバラなまま比較しているのでちょっとどうかと思うデータではありますが、結論としてはオイルショック後はそれほど変わっていないとまとめております。
しかしこのサイトで紹介されているデータで少年ジャンプのデータだけに注目すると、以下のような変遷が確認できます。
1992年:190円 422ページ 1Pあたり単価:0.450円
2007年:240円 474ページ 1Pあたり単価:0.506円
大まかに言って0.45円から0.50円の、率にして約11%の値上がりが92年から07年の間に行われたということになり、先程のジャンプの価格の変遷で私が挙げた89年から07年の間の13%の値上がりと比較しても遜色がない気がします。
第一、ページ数が数パーセント増えたところで印刷にかかるコストなんてそれほど変動するとは思えませんし、いくらページ数が増えたからと言ってそれが販売価格の値上げに直結するというのは出版社の低の言い訳にしか私には聞こえません。
こうした漫画雑誌の価格に対し、今回私がむかっ腹を立てた漫画単行本の価格はどのような変遷を辿っているのでしょうか。まずは今回槍玉に挙げた「殿といっしょ」と同じ四コマ漫画で価格を比べてみると、今手持ちの漫画だとこの様になります。
四コマ漫画価格比較
・殿といっしょ 大羽快 2007年出版 メディアファクトリー 540円 127P(4.25円)
・うめぼしのなぞ 三笠山出月 1996年出版 エニックス 500円 110P(4.54円)
・あずまんが大王 あずまきよひこ 2000年出版 メディアワークス 680円 160P(4.25円)
・ほんとにあった!霊媒先生 松本ひで吉 2009年出版 講談社 560円 157P(3.56円)
※すべて単行本は1巻のデータ 括弧内はページ当たり単価
我ながらディープな組み合わせとなりましたが、結果をまとめると「殿といっしょ」は極端に高くなく、逆に講談社は非常に良心的であるということだけがわかりました。ただ少し言い訳をすると、「殿といっしょ」と「ほんとにあった!霊媒先生」はB6サイズ(128×182mm)の本に対して、「うめぼしのなぞ」と「あずまんが大王」はA5サイズ(148×210mm)の本です。
というわけで初っ端からしょっぱい出だしですが、今度はまだ比較しやすい同じ出版社から出ている単行本の価格を比較しようと思います。まずはジャンプコミックスからで、折角なので敢えて同じ作者で少年誌系コミックスと青年誌系コミックスを比較してみました。
少年誌、青年誌系ジャンプコミックス価格比較
・エンジェル伝説 八木教広 1993年出版 集英社 390円 215P(1.81円)
・クレイモア 八木教広 1993年出版 集英社 420円 191P(2.19円)
・エルフェンリート 岡本倫 2002年出版 集英社 530円 203P(2.61円)
・ノノノノ 岡本倫 2008年出版 集英社 530円 211P(2.51円)
※単行本はすべて1巻のデータ 括弧内はページ当たり単価
岡本倫氏の単行本については私も以前に書いたように作者自身が値段を抑えようとあの手この手と手段を講じているだけあってさすがのページ単価ダウンですが、八木教広氏が悪いわけではないですが、少年誌系のジャンプコミックスの値段の上がり方はさすがに目に余ります。何度も言いますが、この間日本はずっとデフレで他の物価は下がり続けております。
しかし、こうしたジャンプコミックス以上に私が問題視しているのは何を書くそうアフタヌーンのコミックスで、前にも岩明均氏の「ヒストリエ」が値段が変わっていないのに巻を重ねるごとに薄くなるのは何事かと書きましたが、それ以上に問題なのは藤島康介氏の「ああっ女神さまっ」です。百聞は一見に如かずということで、早速比較を行いましょう。
「ああっ女神さまっ」(講談社)単行本価格比較
1巻 1989年出版 430円 180P(2.38円)
10巻 1994年出版 450円 172P(2.61円)
20巻 1999年出版 530円 241P(2.19円)
30巻 2004年出版 490円 148P(3.31円)
まだ20巻までの変遷は理解できるにしろ、20巻から30巻への高飛び振りはこうしてみるとえらい数字になって調べた本人ですら驚いております。ページ単価でみると2.19円から3.31円への1.12円上昇で、率にして約51%の上昇です。
私個人の意見ですが、いくら人気作家でこの値段でも売れるとしても、作家や出版社はこんな売り方をしていて恥ずかしくないのかと一度聞いてみたいものです。
ここまで手持ちの漫画単行本に対してあれこれ価格を比較してきましたが私の中の結論として、やはり漫画業界はデフレ下の日本においてこの十数年間、一貫として価格の値上げを行ってきたのは確かだと言える気がします。売上げが落ちたから値上げをしたのか、値上げをしたから売上げが落ちたのか、どっちが先かまではわかりませんがその値上げに至るまでに企業内でどれだけコスト削減に取り組んだのかなどが私には見えてこず、こうした一方的で一貫とした価格設定の仕方だけを見ていると古本屋に客を取られるのも自業自得なのではないかと人事ながら感じます。
最後に個人的な意見ですが、確かに読者となる子供の数が減って出版社として本当に苦しい状況かもしれませんが、少年誌系コミックスについてはただでさえお小遣いの少ない小学生がメインの購読者層であることを考え、もう少し価格努力を行って欲しいと願います。
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