今現在、私が一番ハマっている漫画は何かというと、ヤングジャンプにて連載している岡本倫氏の「ノノノノ」という漫画です。前にもこの「ノノノノ」は一回取り挙げたことがありますが、岡本倫氏の前作「エルフェンリート」に負けず劣らず読者の期待をことごとくいい意味で裏切ってくれる内容で、なおかつ昨今の漫画にしては非常に展開のテンポが良いのでまだ読んだことがない人にも自信を持ってお勧めできる漫画です。なお最新刊の7巻はいろんな意味ですごい内容でした。
そんな「ノノノノ」の最新刊の巻末の作者コメントにおいて、ちょっと気になる内容が書かれていたのでここで紹介しようと思います。全文を引用するのなんなので内容だけを抜粋すると、今回の7巻はこれまでの単行本と比べて一話多く収録したそうです。なんでも話の展開上区切りが良かったのでこのようにしたそうなのですが、作者の岡本氏が言うには単行本のページ数を増やした場合はその分本の値段も上げなければいけないそうなのですが、仮にそうやって単行本の値段を上げた場合、次の巻からページ数を元に戻しても値段を下げることが出来ないのがきまりになっているそうなのです。
そのため岡本氏はいろいろ悩んだ挙句、これまでの単行本では一ページ目にカラーのイラストページを挟んでいるのですが、それを今回取っ払うことでこれまでのお値段据え置きでページ数を増やしたそうです。
この作者の岡本氏は男性ですが、かねてより妙に謙虚なコメントの中にさりげなく「貧乏で○○が買えません」などと混ぜてはよく作者萌えする人だと言われていましたが、今回のコメントでもやっぱり読者のことをいろいろ考えている人なのだと改めて感心しました。ちゃんと私みたいに単行本読者のことも考えてあれこれ気を回すなんて、普通の作家じゃまずやらないでしょう。
ただこうした岡本氏の配慮の一方、個人的に気になったのが出版社の妙な決まりごとです。あまりこの業界に詳しくないのに言うのもなんですが、ページ数を増やした場合に値段を上げるというのはまだわかるにしても、一度値段を上げたら元のページ数に戻しても値段を下げることが出来ないというのは私の常識ではちょっと理解できません。
実際に本屋を周って見ているといくつかの漫画ではまさにその通りとも言うくらいに、以前と値段は一切変わっていないにも関わらず巻数を重ねるごとに大幅にページが減っている単行本を見かけたりします。いくつか例を挙げると、藤島康介氏の「ああっ、女神様」と岩明均氏の「ヒストリエ」です。特に「ヒストリエ」に至っては4巻くらいから急激にページ数が減少したのでびっくりして、それまで単行本を買い続けていましたが馬鹿馬鹿しくなってそれ以降は買うのをやめてしまいました。
どうして一度の値上げ後に値下げができないかについて私の友人は、恐らく「再販制度」が影響しているのではないかと教えてくれましたが、値段を小幅に動かすことすらできず、しかも一方通行な値上げしかできない出版社の慣習だか制度にはそれが存在すること自体に私は呆れてしまいます。また先ほどに挙げたページ数が減っているのに値段が変わらない二つの漫画については別の友人が、恐らくそれでも売れるほどの人気作だから通用するのだろうと感想を述べましたが、私からするとそんな売り方をしていて出版社は商売人として恥ずかしくないのかとすら思えます。
私が以前にアルバイトをしていた喫茶店でマスターの奥さんから何度も聞かされた言葉としてこんなものがあります。
「曲がりなりにもお客様からお金を頂くのだから決して、一杯のコーヒーでも手を抜いてお出ししてはいけないし、体調が悪かろうが忙しかろうがもてなす側はそれを理由に接客の態度を怠っては駄目よ」
確かに漫画家は当たればでかいものの売れなければ非常に苦しい生活を強いられるということはよく聞いており、それでも売れるのだったらページ数を多少減らしてもいいのではないかという意見が全く理解できないわけではありません。しかしそれでも読んでくれる読者がいて、漫画家はその読者に支えられる立場であることを考えると私はやっぱりそうした売り方に対しては好ましくないものだと考えます。
それだけに「ノノノノ」の最新刊にて値段を上げず、話を区切りよく終えようと気を回してくれた作者の岡本倫氏にはいろんな意味で頭が下がります。
私のこの「陽月秘話」もネットにさえ繋がっていればいくらでも無料で見れる一ブログではありますが、せっかく時間を使って見に来てくれるのだから読者の方には可能な限り質の高い情報や内容をお見せできるように日々意識しております。こうした価値観を持つようになったのはやはり喫茶店でのアルバイト経験があったからこそで、こう思うにつけ人間の出会いが本当に重要だと感じます。そういっておきながら、誤字が多いのはなかなか直らないのですが。
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