2010年2月24日水曜日

移民議論の道標~その八、全体賃金の低下

 前回の記事では現在進行形のフィリピン人看護師の問題を取り上げましたが、その際に引用させていただいたサイトの(「看護・安全・守る」)記事にてなかなか興味深い内容が取り上げられていたので、管理人様より許可をいただけたので今日はこの点について私の考えを紹介します。

 その気になる内容というのは「外国人看護師問題」の記事内の「3.3賃金について」のところにて触れられている箇所で、簡単に概要を説明するとフィリピン人看護師の受け入れ要件の中には日本で支払われる賃金は日本人と同等の額と規定されているのですが、この要件が後々ネックになってくるのではないかという指摘です。

 一体この賃金についての用件が何が問題なのかというと、日本とフィリピンでは物価が違うために日本では低い賃金とされる金額でも本国フィリピンでは高額なものと映り、フィリピン人看護師らがわざわざ日本に仕事を求めてきてくれるのもこの賃金の差が大きく影響しているのは予想に難くありません。しかし今の日本国内の派遣労働と似ていますが、もし一般の日本人看護師の人件費より低い賃金でフィリピン人看護師が雇えるのであればどの病院も日本人を雇わなくなり、下手をすれば日本人看護師はみんな職を失うことになりかねません。
 こうした懸念や全国各地で不足している看護師の人数を増やすために上記の「賃金は日本人と同等」という要件がつけられたのでしょうが、引用させていただいた記事でこの要件は下手をすれば、

フィリピン人の賃金を低く設定する→フィリピン人の低く設定された賃金に日本人も合わせられる

 という風に働かないかと、実にうまい指摘をしております。はっきり言ってしまえば、派遣労働でもそうだったのだから私もこうなると思います。

 私の従兄弟(♂)も看護師をしていますが、今の日本の医療は制度が崩壊している中を現場の医師や看護師の熱意や努力によって必死に支えられているとよく聞きます。ただでさえ薄給激務といわれる看護師という職がもしフィリピン人看護師の流入によって賃金が更に低下してしまえば今後ますます看護師を目指す日本人は減少し、最悪のシナリオだと食糧のみならず医療や介護も外国に依存しなければならなくなる可能性すらあります。

 私はよく「水は低きに流れる」という言葉を日常でも使うのですが、このように移民の受け入れによって賃金低下が予想されるのはすべての業界に当てはまります。経営者としては優秀な人材を高い賃金で雇うよりも質は低くとも安い賃金で雇える人材を欲しがるに決まっており、日本と物価に差のある国から来る移民を受け入れた場合は日本人を含む日本人全体の賃金は基本的には低下していくことになるでしょう。
 しかし今の時期だったら説得力もてますが、この様な移民の受け入れを行った場合はまさに亡国の道です。賃金が下がるとともに国内の消費力が低下することでデフレが加速し、また低賃金の移民によって職を奪われた日本人は職業訓練が進まず、国内の技術力や生産性も合わせて低下していくでしょう。

 そのためフィリピン人看護師の受け入れ要件としてあった日本人と同等の賃金保障というのは非常に重要な条件で、これがしっかりと守られなければ移民政策はただ国内の産業を空洞化させるための手段に成り下がることになります。
 ですので極論を言ってしまえば、財界が主張しているようなすでに行われている日系人移民などの低賃金の移民受け入れというのは日本国内だけを市場としないグローバル企業の利益には適っても、国家の利益には適わないという風に考えられます。みんな自分だけが大切なのですから財界がこの様な主張するのも勝手でしょうが、財界人でない自分とするとやはりこのような主張をする人間らとは相容れられません。

 だからといって私は移民政策を否定するつもりはなく、むしろこの様な障害をどのようにして取り除いて受け入れていくかを今後考えるべきだとこの連載を通して主張したいわけであります。
 言ってしまえば移民を低賃金労働者の確保と捉えるのではなく、労働力の不足している産業の補充者として捉えねばならず、賃金は決して日本人へのものと差をつけてはならないというわけです。賃金が日本人と一緒では移民を行う意味がないじゃないかと言われるかも知れませんが、国家が移民を行うのは企業の利益率を高めることではなく労働力を補充するという目的であって、その目的にあった手段をしっかりと実行しなくてはなりません。

 と、ここで私は企業と国家では移民に対して目的が異なってくると書きましたが、そもそも一体何故移民を行おうというのか、その目的を明確に持っておくことは言うまでもなく大切なことです。そういうわけで次回は何故今の日本にとって移民が必要なのかということを解説します。

5 件のコメント:

  1.  私の友人と先ほど移民問題に関する話をしたのですが、友人は反対でした。理由は多くの国が移民を行うことによって、失敗してきたからだそうです。特にオランダは移民の人口がオランダ国民の人口を上回り、EUが問題の解決に躍起になっているそうな。
     また、移民を行うにしても参政権は絶対に与えてはいけないと言っていました。花園さんはこの意見に対してどうお考えですか?

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  2.  オランダの移民問題は今まで知らずにざっと今回調べてみたのですが、私はこの問題は確かに移民によって生まれた問題ではあっても、厳密には宗教問題なんじゃないかなという印象を最初に持ちました。なんかこのオランダの移民問題を挙げているサイトはみんなゴッホ監督の暗殺事件ばかり題材にとってて、いまいち実生活ではどのような衝突が起きているのかというが見えてきませんでした。
     この連載の最初の方でも書きましたが、よく日本はフランスの移民政策は失敗例として扱いますが、私が見ている限りでもSophieさんの書いてる情報を見ても、本当に日本人が言うほど失敗しているような印象は受けません。第一、移民大国アメリカがこの移民議論に出てこないこと自体きな臭く感じますし。

     移民への参政権は、これはこれからの記事に書きますがもしなにも問題がないのであれば私は今のまま参政権を与えなくてもいいと思っています。しかしこの連載の「その六、外国人研修生」の記事で書いたような看過してはならない問題がいまいち大きく取り上げられていないのを見ると、外国人居住者に発言権を与えねばならないのではないかという風に考えるようになりました。折角ですのでそのご友人にもこの連載を読んでいただいて、ご感想を聞いていただければ幸いです。

     あと最後に、オランダの移民人口がオランダ人を超えてて問題になっているのは本当でしょうか? 私が見た下記サイトでは移民人口は17~18%で、アメリカの有色人種割合ですら四割強なのを考えるとちょっと信じ難いです。

    http://ja.wikipedia.org/wiki/オランダ#.E5.9B.BD.E6.B0.91
    http://www.mfa.nl/tok-jp/item_53221

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  3.  オランダ人の人口に関する話は、花園さんの方の情報であっていると思います。私の友人の情報は2ちゃんねるだと思われるので間違っている可能性があります。
     それと友人にも「陽月秘話」紹介しときました。

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  4.  いつも楽しく拝見しています。
     移民の問題は貧困を輸入してしまうことにあります。賃金を日本人と同一にするという意見を紹介してらっしゃいますが、その方が一度失職したり、家族を(合法、違法とりまぜて)呼び寄せたりするとどうなるのでしょうか。
     そのほか、フランスのあの状況を移民の成功例とするなら、失敗している国のほうが少ないでしょうね。
     批判的な内容になってしまいましたが、貴BLOGの理想主義的な内容は好きで応援しています。
     では。

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  5.  匿名さん、コメントありがとうございます。

     ご指摘の通りに、移民で受け入れた移民者が失職した際には国は生活の保護をしなければならず、下手に本国に追い返そうものなら後々の外交に影響しかねませんね。そこら辺は受け入れ態勢をどこまで整えておくかにかかってくるかですが、現状の日本では私も期待が持てず、検討すべき課題かと思います。

     フランスの移民の状況については、私も確かに現地で専門的に調べたわけではないものの、この連載の記事では敢えて反対派の方にも再考してもらうよう疑問符をつけた形で書いております。友人の記事(http://mesetudesenfrance.blogspot.com/2009/12/blog-post.html)にも書いてあるように、日本と現地では報道される情報が異なっており、またフランスが失敗したからといって日本で移民が出来ないわけでなく、お国の事情はそれぞれ違うのだから、前例にとらわれず少なくともどんな形の移民受け入れが日本にとって最も良い形なのかをこの連載で探っていければと考えております。

     割と私生活では悲観主義な正確だとよく言われていて、ブログの内容が理想主義的だと言われてちょっとドキッとしてしまいました。まぁ確かに読んでて落ち込むような記事書いてもしょうがないと思ってやってますが、今後もよろしくお願いします。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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