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2010年2月23日火曜日

移民議論の道標~その七、フィリピン人看護師

 これまで移民を巡る各問題について日本の現況の説明ばかりしてきましたが、そろそろ私の個人的な意見とかが盛り込まれる内容に移って来ました。そうは言いながらもまず始めに行うのは、去年より本格的に受け入れが始まったフィリピン人看護師についての紹介です。

 このフィリピン人看護師の受け入れというのは、ニュースでも報道されている日本の各病院にて起こっている医師、看護師の不足問題を解決するため、フィリピンとのEPA(経済連携協定)の一環として看護師資格を保有しているフィリピン人女性の日本での就労支援、受け入れのことを指しております。この受け入れに当たってフィリピン人看護師に与えられた条件として主なものだと、下記のものが上げられております。


1、日本の国家資格取得
 フィリピンの看護師資格保有者であって3年間の実務経験を保有していること。日本での看護師国家資格の取得前に国内の病院での就労・研修を行う。
2、日本語研修の実施
 入国後六ヶ月の日本語研修を受けること。
3、日本人と同等以上の報酬
4、看護師の受け入れ枠は当初二年間で400人を上限
 資格取得後の在留期間の上限は三年だが、更新回数の制限無し

 上記条件を簡単にまとめると、まず本国フィリピンで看護師としての資格と実務経験を持っている上で、来日後は日本の病院で研修を受けつつ最終的には日本での看護師資格試験の合格が義務付けられているということです。

 このフィリピン人看護師の受け入れは受け取り方によって定義は変わってきますが、私はこれも一種の移民として捉えているのでこの連載で取り上げることにしました。まずこの政策について私の評価を説明すると、確かに看護師の不足はすぐにでも解決せねばならない問題でその目的や方向性には理解できるものの、残念ながら現時点では早計に行いすぎて失敗に至るのではないかと見ております。

 何故この様な評価をしたのかというと、このフィリピン人看護師を受け入れた各病院からの報告が徐々に報道されるようになってきておりますが、それらの報道で私がよく耳にするのは彼女らの日本語教育が思っていた以上に進まないという報告です。現在来日してきたフィリピン人看護師は日本の各受け入れ先病院で研修を受けつつ日本語を学んでいるのですが、よくドラマかなんかでは働きながら日本語は自然に覚えるように映しますが、そんな簡単に習得できたらどんだけいいものかと私は思います。やはり言語の習得というのは相当にセンスのある人間ならともかく集中的に勉強しなければなかなか身につかないもので、看護師という大変な職業をしながら学ぶというのはやはり難しいのではないかと思います。そしてこのように日本語教育が進まないゆえ、将来的に日本で働き続けるために必要な日本の看護師資格試験の合格も現状では難しいのではないかと見られています。

 このフィリピン人看護師の受け入れ政策で何が一番問題なのかというと、日本の受け入れ態勢が全然整っていなかった、甘い想定をしていたのではないかと私は考えています。これは世界的にどの国にも言えますが移民という政策を実行に移す際に何が一番重要なのかといえば受け入れ後にどう定着させるかという受け入れ態勢にあって、もしこれに失敗してしまうと移民で移って来た人達は人生を狂わされて本国に帰国してしまったり、極端な例だと移民先の国に止まって犯罪集団化する危険性もあります。そのため移民を受け入れるに当たって生活面でのサポート、言語面での教育というのは何にもまして重要な要素となります。

 それが今回のフィリピン人看護師の受け入れを見ていると、やはり外国人慣れしていないゆえか日本はこの受け入れ態勢をしっかりと整備しておらず、きちんとした計画を持っていなかったということが露呈してしまいました。もちろん看護師という厳しい職のために異国である日本に来てくれたフィリピン人の方々に私は深く感謝していますが、残念ながら彼女らの熱意と努力に応える態勢を日本が整え切れなかったのは認めざるをえません。受け入れを行った病院に対するアンケートでも、今後も受け入れを続けるかという問いにNoと答えた病院が多かったそうですし。

 では具体的にどうすればよかったのか。この辺は素人ゆえにあまり大したことは言えないのですが、やっぱりフィリピン本国でもっとしっかりと日本語教育を行った上で受け入れをする必要があったのではないかと思います。その上であまり言語に影響されない病院内の職場の整理など、来日後に問題が起こった後にすぐさま対処できるサポート体制の準備など、やれることはまだまだいろいろあったと思います。
 一例を挙げると、青森県の病院に派遣されたフィリピン人看護師の方が現地の寒さに慣れることが出来ずに一番最初に帰国することとなったのですが、同じ日本人でも寒さに慣れないような場所なんだから、もっと南の病院に移れなかったのかと個人的に思いました。

 ただその一方、やっぱりフィリピンの方々らは根っから明るい方ということで介護の現場などでは入所者らから非常に親しまれているという報告も聞きます。こうしてやってきてくれる方のためにも、もっとお金をかけてでも日本は彼女らをサポートして定着を図るべきなのではないかという気がします。
 そう思う一方、あくまで彼女らが出稼ぎのような日本で数年間という一時的に働くという目的で来ているのであれば、私はこの受け入れ自体を考え直す必要があるのではないかとも思います。その辺についてはこの記事で合わせて書くつもりでしたが、すでに大分長くなっているのでまた明日に回すことにします。

 最後に今回の記事を書くにあたり非常に参考にさせてもらったサイトをご紹介しておきます。

看護・安全・守る

 この記事よりも上記サイトの中の「外国人看護師問題」のページのがこの問題についてよくまとめられているので、興味のない方も是非読んでいただきたく思います。
 それにしても、あまり何も考えずに書いたからあんまりまとまりがないなぁこの記事……。

  追記
 この記事の中で日本が受け入れている海外からの看護師の国籍をフィリピンと書いておりましたが、実際にはインドネシア国籍の方が大半だそうです。私の勝手な印象でフィリピンの方が大半だと誤解しておりました。訂正してお詫びします。

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