時期的には大体7、8年くらい前頃から、「ギャグ漫画家は精神を病みやすい」というような言葉がネットを中心に散見されるようになりました。こんな風に書くくらいだから私がこの意見に対して疑問を持っていることはわかるでしょうが、サッと検索した所、他にも同じような見解を持つ人も少なくないような気がします。
私が疑問に思う根拠としては言われるほど鬱になったギャグ漫画家を聞かないからです。なんかWikipediaには、「吾妻ひでお、鴨川つばめ、桜玉吉、山田花子、ねこぢる、田中圭一などのギャグ漫画家が深刻な精神状態に追い込まれたことで有名であり、作風からも著者の鬱状態が読み取れる。」と書かれてありますが、なんか見ていて違和感覚えるというか、上の人たちの名前を見ていると何もギャグ漫画家でなくても売れなくなって鬱になるのではという気がしてなりません。「ねこぢる」に至っては、精神病んだ奴が漫画描いてただけで順番が逆だし。
実際に精神を病んだ漫画家で私が知っている人を上げると、「いいひと」、「最終兵器彼女」の作者である高橋しん氏が鬱だと発表して実際に連載を中断したことがあります。もう一人、こちらは「なるたる」だとわかり辛いでしょうが名作「ぼくらの」の作者の鬼頭莫宏氏も、「なるたる」の連載後半期は鬱だったと言われており、当時の作品を見る限り明らかにそうだろうなと納得するくらいヤバイ状態でした。知ってる人には早いですが「なるたる」は全体的にはかわいい絵柄なのに序盤から激しい暴力描写が多く、後半に至っては更に輪をかけてひどくなっており、特にあるキャラの惨殺シーンに至ってはあれ以上の激しい暴力描写シーンは真面目にこの世にないんじゃないかっていうくらいタガの外れた内容になっています。でもまぁこの人、その後で「ぼくらの」を描いてるんだから見事克服した、というよりもあの精神状態を我が物にしたんだろうな。
高橋氏にしろ鬼頭氏にしろ、どちらも代表作品がいわゆる「セカイ系」で共通しているのが興味深いです。「セカイ系」というのは簡単に言えばエヴァンゲリオンっぽい退廃的な世界観と終末的な内容の作品群を指しますが、やはりこの系統の作品を書く漫画家に関してはちょっと精神病んでるのではと思う方がちらほらいます。それだけに何故に「ギャグ漫画家は精神を病みやすい」って言葉が流行るのか、むしろセカイ系だろと声高に主張したかったりするわけです。
ちなみにほかにセカイ系上げろってんなら遠藤浩輝氏の「EDEN」が来ますが、これは途中までしか読んでません。
話は戻りますが、私の興味としては何故セカイ系の作者ではなくギャグ漫画家が精神を病みやすいと言われるのか、その背景というか動機に興味があります。先週からずっとお腹が痛いので簡単にまとめますが私の推測で述べるなら、「ギャグ漫画家は精神を病んでいる、むしろ病んでなきゃできない、病むべきだ」みたいな願望めいた既視感なり偏見があるからではと勝手に見ています。
ギャグ漫画は多かれ少なかれ不条理を作品に取り込んでギャグに昇華する傾向があり、見る人からすれば作者はまともな、常識的な人であるとは思えない、むしろ非常識でおかしな人だという風に考えが言ってしまうのかもしれません。確かに故赤塚不二夫みたいにプライベートでもぶっ飛んでいたギャグ漫画家もいましたがそれを言ったら普通のストーリー漫画家でもぶっ飛んでる人は少なくなく、逆に「クレヨンしんちゃん」の作者の故臼井義人は周囲からは物凄い常識人でまともだったと言われており、一概に「おかしな精神の人じゃなければギャグは描けない」ってわけでもないでしょう。まぁ楳図かずお氏は変わった人だとは思いますが、私の中であの人はギャグ漫画家というよりは哲学漫画家だと思います。
・【衝撃】干物妹!うまるちゃん作者・サンカクヘッドの人生が壮絶すぎる・・・【画像・性別・結婚嫁情報あり】2ch「うつ病で漫画掛けるんか?」「うまるで一生暮らせるんやろな」(NEWSまとめもり)
この記事を何で書こうかと思ったのかというと、上のまとめサイトを見たのがそもそもの始まりでした。このまとめサイトではヒット漫画「干物妹!うまるちゃん」の作者のサンカクヘッド氏が過去に何度も自殺未遂するほど追い込まれていたという話が紹介されているのですが、私の知る限りこの情報には何もソースが見当たらず、検索をいくらかけても同じ掲示板というか同じ書き込みしか見受けられません。では一体何故この出所不明の情報を書き込んだ人は「自殺未遂した」と急に言いだしたのか、考えられる理由としてはサンカクヘッド氏のことが嫌いか、上で書いたようにギャグ漫画家には洩れなく精神を病んでもらいたいというような願望があるのかななどと思ったわけです。
ちなみに私もこの「うまるちゃん」は全巻を購入するほど気に入って読んでる作品ですが、作者のサンカクヘッド氏はサービス精神が旺盛な人のようでどの単行本にも大量の描きおろしおまけ漫画が加えられており、また作者本人のプライベートというか制作風景についてもよく漫画化しています。
ホームページにもプライベートネタがたくさん公開されているのですが、たとえばこれとかこれを読む限りだと、「とても自殺なんてする人に見えない」というのが私の感想です。自分の経験から言うと、男らしさを前面に打ち出す人のほうが自殺しやすく、逆ほどしないです。
2 件のコメント:
以前読んだ大泉実成著「消えたマンガ家」によると、
文中で鴨川つばめ氏が「当たると毎週連載となり、
これがホントに肉体的にも精神的にもキツイ」とのことです。
ネタ作り、締め切り日、また読者アンケートでのランキングから、
順番が変わる→突然の連載打ち切りの恐怖・・・
むしろ月刊や別冊ものでノンビリ書きたいものの、
そんな都合よくいかない現実の中で「おかしく」なっていくそうで、
連載が終わると、ある意味ホッとしつつ、
次への不安から鬱状態になるようです。
そう考えるに、このマンガ業界もまた望んでなった職業とはいえ、
花園さんが前回書かれたような「ブラック企業」群なのかも、
しれませんね。
PS,先週の旅行記、本当に面白かったですよ!
遅るばせながらコメントをばm(__)m
過酷な作業量を締め切りに追われならという、自分のペースが全く作れない仕事内容であることからおっしゃる通りに漫画家自体が一種のブラック産業と労働的には言えると思います。この記事にも書いている通り、ギャグ漫画家に限らずどのジャンルの漫画家も鬱になる危険性は潜んでいることでしょう。
北朝鮮旅行記は折角の場所なんだからもうちょっとパンチのある体験を送り届けたかったものの、なんか普通の旅行記っぽくなってしまってむしろ申し訳ない限りです。ただ、近々ビッグなネタをお届けできるのでそちらにご期待を。
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