・平野母子殺害 差し戻し控訴審3年ぶり再開(関西テレビ)
先程速報が出たこのニュースですが、内容を見てすぐにどういう事件だったかも思い出せました。
・平野母子殺害事件(Wikipedia)
詳細は上のWikipediaの記事でまとめられていますが、この事件は2002年に起きた主婦、幼児に対する放火殺人事件で、犯人として当時逮捕されたのは主婦の義父に当たる刑務官の男性でした。この事件は発生当初から冤罪の疑いが強くまさか有罪判決は出るまいなと思っていたら一審は無期懲役判決、続く二審に至っては死刑判決が下りて、大阪は警察もそうだが司法も信用できないなと思わせられたのをまだ覚えています。
ただ、最後の関門である最高裁は合理的な疑いが残るとしてこれらの判決を棄却した上、審理を差し戻すよう命令しました。死刑判決が下りた裁判で審理が差し戻されること自体異例なのですが、差戻審が直近の高裁ではなく地裁となったのも過去にあったかどうかと疑わしいくらい異例中の異例の判断でした。
そうして差し戻された二回目の大阪地裁の判決は2012年に下り、被告に対し無罪判決が下されました。しかし検察側はこれに納得せず控訴したことにより、控訴審が開かれることとなったのです。
そもそもこの事件で何故男性が犯人だと疑われたのかというと、直接的な証拠はなくよくある状況証拠からでした。特に一番大きな証拠となったのは犯行現場のマンション階段にあった灰皿に残された煙草の吸殻72本の中から、この男性のDNAが検出されたことが決め手となりました。男性はそれ以前に現場のマンションに行ったことがないと話していたことから供述と矛盾するとして裁判では有力な証拠として扱われたものの、そもそもそのDNAは男性の物で合っているのかという疑問は最初の審理時からありました。
足利事件然り、DNAが決め手だと言われながら再鑑定してみたら実は違ってたということが実際にはよくあるだけに弁護側は警察に対して再三証拠となった吸殻を提出して再鑑定させるよう要求し続けていましたがこれに対して警察はずっと拒否し続け、事件発生から約二年経って初めて72本中71本を誤廃棄していたという事実を認めました。
誤廃棄の事実自体は裁判が始まってすぐの段階で把握していたもの不祥事の多い大阪府警なだけに知らぬ存ぜぬで黙り通し、証拠開示請求が来るまで公表することはありませんでした。まぁ誤廃棄って言っているけど、大阪府警なだけにそもそもDNA鑑定すらしていなかったという事実を隠蔽するために敢えて捨てておいたんじゃないかと勘繰りたくもなりますが。
この時点で実質的に男性が犯人であるという証拠は存在しないのですがその後の判決では既に述べた通り一審二審で有罪判決が出るというミラクルぶりで、真面目に裁判官の頭を疑うレベルの判決でしたが、幸運なことに最高裁はまだまともな判断を出して死刑執行という取り返しのつかない事態はまだ避けられました。
でもって今回、差戻審で無罪判決が出たのに検察が粘って開いた控訴審ですが何故だか三年間も中断していてようやく開いたかと思ったら、遺体の首に巻かれていた凶器と思われる紐に付着していたDNAが男性とは全く別のDNAだったという鑑定結果が出されました。そもそもこの鑑定、検察側からの請求によって行われたそうですが、一体全体何がしたくて請求したのか理解に苦しむ内容です。それ以前に、どうして事件発生直後に証拠価値が感じられないたばこの吸い殻は鑑定しているのに直接的な凶器の紐は鑑定していなかったのか、構造的に考えると、当時鑑定していたものの男性のDNAとは異なっていたため、男性を犯人にしたいから敢えて無視していたとしか思えません。大阪府警なだけに。
自分が小学生だった頃、日本は検挙率が9割超えてて殺人などをやらかした犯人はほぼ捕まると言われていましたが、その検挙率の背景にはこうした事情が深く存在していたというのが事実でしょう。この前もドラマでタイトルにもされていましたが、日本の刑事裁判における有罪率は99.9%という旧ソ連ですら成し得なかった(佐藤優氏曰く)という神がかった数字してますし。
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