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2016年6月28日火曜日

何故マスコミは横柄で無知なのか?

 先日友人から、なんかどっかから取材でも受けたのか、「なんでマスコミってあんなに無礼で無知なんですかね」という言葉と共にこのテーマで一本書いてというリクエストを受けました。知ってる人には早いですが私は一時期上海のとある新聞社で経済記者として勤務した経験があるだけにこの手の話についても裏側を書くことが可能で、テーマも悪くないしいい機会なのでマスコミというかジャーナリストにどういう人間が多いかを今日は紹介します。

<何故横柄なのか?>
 つい最近の話ですが、周りからどんな人間がマスコミに向いているかと聞かれた際に私は、「一緒に横歩いている友人を突然どぶに蹴落として指さしながら大笑いする人間」だと答えました。これは決して受け狙いではなく真面目にこの手のタイプの人間ほどマスコミ業界が向いており、逆を言えばマスコミ業界でやってこうならこれに近い事を平気でやれるようにならないと身が持たないと断言できます。一言でいえば、他人の痛みを全く気にせず傷を抉ってこれるようなサイコパスな人間ほど向いているというわけです。

 友人の言う通り、マスコミ業界には横柄で無礼な人間は明らか且つ確かに多いです。一体何故多いのかというとそういう業界だからと言ってしまえば終わっちゃうので真面目に話すと、よくネット上では、「自分たちが世の中を動かす特権階級だと自惚れている」という意見を見ますが、テレビ局員はわかりませんが新聞社の人間はそうでもないかなと言うのが私の見解です。
 では何故新聞社の記者らは横柄なのかと言うと、一番大きな理由としては取材に当たってはぶしつけな態度が必要且つ求められるからです。基本記者と言うのは取材相手の隠しごとを暴いてナンボなところがあり、企業だったら不正情報、芸能人ならスキャンダルなどと当人が暴かれたくない情報こそ拾ってくる価値があります。なので遠慮がちな態度ではなく不必要なまで強気に聞きだす態度が求められ、実際に周りの同僚や上司もそうした物を求めてくる上にそうするほど評価もするので働いていると自然と無礼になってくるわけです。

 こう書くと如何にも人の秘密ばかり暴いて嫌な奴に見えるかもしれませんが、取材においてはそうした態度と言うか割り切りが必要となることも少なくないとここで弁護しておきます。たとえば私の元上司は、「交通事故で死んだ小学生の子供の写真を親に出してくれと言う時は辛かった」と以前に話してくれたことがありました。普段何気なく目にする事件被害者や加害者の写真は現場記者らのこうした罵声を浴びせられるような活動を通して報じられており、良心を犠牲にするというか感じなくさせる必要もあるということも私個人としてはいくらか理解してもらいたいです。

 話は戻りますがこうした取材に当たる心構えともう一つ、基本的にマスコミ業界の人間は集団ではなく個人として働くことから性格が横柄になるということも大きい気がします。チームを組んで取材や執筆することもなくはないですが基本的に記者の仕事は自分で取材して自分で書くのが普通で、なおかつその実力や評価も個人単位でなされます。そのためほかの業種と比べてマスコミ業界は個人主義的な傾向が強く、協調性とか貢献意識とかよりも特ダネ取ってきたり大量に素早く記事書けるような体力の方がずっと尊重されるため自然と我が強くなる、というよりも我が強くないと持たない業界だったりします。
 この辺は私自身が強く実感した所で、私のように商社やメーカーを経験して記者になった人間からするとマスコミ一本で働き続けてきた人らは本当に周りなんて知ったこっちゃないっていう人間ばかりに見え、文字通りに次元が違う世界だとよく感じていました。特にそう感じた点として日本のサラリーマンは社内で誰がどこそこの派閥に属しているかなどという派閥論議を好みますが、大手新聞社は知らないけど私のいた新聞社ではそうした議論はあまり聞こえず、上司にそういったところ、「俺も若い頃、大学の同期と就職してから会ったらあいつらはずっとは派閥の話ばかりしてて、同じ違和感を持った」と言われました。

 なおよく同僚とも言い合いましたが、記者というのは周りはみんな頭のおかしい奴らだと思いながら、自分が最もまともだと信じて疑いません。今こう書いている自分ですらそう思っていましたし。ついでに言葉遣いについては前に書いたように、「(取材で)追い込みが足りねぇんだよこのクソボケ!」 などと、ヤクザ事務所みたいな言葉がリアルに飛び交っています。

<何故無知なのか?>
 記者が何故横柄かという理由については上記の様に仕事上の必要性、並びにそうした人間しか残れないし求められるという土壌が大きいと見ており、基本的に事実で間違いないと言えます。では何故無知なのかについてですが、自戒を込めて言うと実際無知でアホばっかです。
 たとえば経済部で言えば業界専門紙なんかだとさすがに専門とする領域において相応の知識が求められるだけに記者も勉強していますが、総合経済紙だと記者ごとに専門分野持たせようったってコマが足りず、結局各記者がのべつまくなしにどの業界に対しても大した知識を持たないまま書かざるを得なくなります。

 私もこの例に洩れず、今だから言えますが「ホットコイルはトン当たり~元、コールドコイルは同~元」などと毎月鉄鋼の出荷価格を書きながら、「そもそもホットコイル、コールドコイルってなんやねん」と思ってて、ずっとその意味を知らずに書き続けていました(今はわかる)。金融に至ってはもうほんとに専門用語に踊らされるというか何がどう意味するのかほとんど把握しないままそれとなく過去記事やよその記事を参考にしつつ体裁だけ整えてよく書いて出してたものです。
 もっとも、これは大手紙なども基本一緒です。よく見ればわかりますが明らかに単語の意味を理解しないまま書かれている記事が金融系を中心に多く、政治記事でも政策内容に関する説明が少ないというか避けているような書き方がされていればその記事を書いた記者は確実にわかっていないと判断していいでしょう。政策金利についてすらふわふわした感じで書く記者もいるし。

 よく記者というのはエリートで何でも知っていると思われがちですが実際はそうでもなく、下手したらほかの業界を経験せず知らないもんだから世間知らずな人も少なくありません。ちょっと古い話を持ちだすと東日本大震災の折に、「自動車部品のサプライチェーンが海外企業へ移っていくかもしれない」などと当時多くの記事で書かれましたが、自動車業界を知る人間からしたら品質管理上それは有りえないってことは誰でもわかっちゃいます。ついでに書くと、「クロスオーバーSUV」って単語を使う記者は間違いなく素人で、理由を明かすとクロスオーバーじゃないSUVなんてほとんど存在しないからです。

 ただこの点についても弁護というか言い訳をすると、逆に専門的になりすぎると読み手も読んでて意味がわからなくなる恐れがあります。私自身もそうしたスタンスからあまりにも専門的過ぎる内容については敢えて触れずに小さく記事をまとめて書いてたりしましたが、勉強するに越したことはないものの、この辺はバランスも重要です。

 そういいながらでありますが最近日本の記事を読んでて、「日本のマスコミのレベル落ちてるんとちゃう?」と思うことが増えています。どこかとは言いませんが、「シャープ首脳、同業他社に流出」という記事見出しを一見して、「首脳という言葉を産業界で使うか?」と思うと共に何故この記事が出稿される前に誰かチェックして止めなかったのか強く疑問に感じました。なおほかの媒体はきちんと、「シャープ幹部」と表現していました。

 なんか尻切れトンボみたいな感じですが、友人の言う通りに基本マスコミは横柄で無知で間違いありません。態度の優しい記者もいないことありませんがそういう記者はまずもって出世しません。でもって勉強する記者、科学部記者なんかはマジすごいほど勉強している人多いですが、やっぱりこの手の記者は少数でどっちかっていうと体力の方が礼賛される業界のため、みんながみんな賢いわけではなくサイコパスばかりです。

 最後にどうでもいいですが冒頭で述べた「どぶに蹴落とす」という下りについて、さすがに私はこんなことできる人間ではありませんが昔に友人を騙して煮え湯を飲ませ大笑いをしたことはあります。

2 件のコメント:

酷道マニア さんのコメント...

大手新聞社でも、ふわふわした記事が多いですからね....
まあでも専門的な知識がある人間より、愚民に受ける記事をかける記者が重宝されるんですから、仕方ないですね。


花園祐 さんのコメント...

 まさにこの記事で使った「ふわふわとした記事」という表現ですが、結構これは読み手からすると重要で、このように感じる記事はまず間違いなく書いてる記者が内容よくわかってないで書いたと思って間違いないです。逆に、できる記者っていうのはわかってなくてもふわふわしていない文章を書ける記者で、やっぱそういう記者が書く文章と言うのはソリッドにガシッとした文体になります。