2008年11月15日土曜日

最近なくなったコールドスリープの話

 週末なので、適当な記事でもバンバン書く気力があります。というより、ここ数日は細かいニュース解説が多くてちょっと疲れ気味だったのもありますが。

 それで本題ですが、90年前後のSF作品にはよくあったのに最近はすっかり見かけなくなった話の類型として、今回タイトルに上げた「コールドスリープ」があります。これは人間を意図的に極低温状態に置くことで生命を維持したまま生体活動を停止させ、時間をおいた後で文字通り再び解凍による再蘇生をすることで、若さ(肉体年齢)を保ったまま解凍時の世界に舞い戻るという技術です。俗に言う、浦島太郎物のSF技術ですね。

 これを題材に取った歴史的に古い漫画作品というと、まず上がってくるのは手塚治虫氏の「火の鳥」の、確か未来編だったかな。この作品では宇宙船にて航行する搭乗員が通常の航行中はこのコールドスリープで眠り続け、交代で宇宙船を操作する場面が描かれています。他の作品も大体こんなパターンでこのコールドスリープを使っており、長い宇宙航行の間に年齢を重ねないための手段としてよく使われていました。
 こういったパターンに対して、より浦島太郎の話に近づけたパターンとして、過去の超技術があった時代にコールドスリープをした人間が移籍発掘などで掘り出され、何千年も後の現代に蘇るというような話もよくありました。

 しかし、大してチェックとかしてる訳じゃないけど、なんか最近こういったコールドスリープが出てくる話を急に見なくなった気がします。ちなみにこのコールドスリープが出てくる話というのは、そのほとんどが悲劇的な結末に終わっていることが多く、これは恐らく話の原型となっている浦島太郎の話がアンハッピーエンドで終わることが影響していると思われ、大体の話の結末は無事蘇ったものの目覚めた世界は自分の暮らしてきた世界とは大きく変わっており、そのギャップにさい悩まされるという具合になっています。一番それをストレートに書いているのは、藤崎竜氏の短編漫画作品の「WORLDS」かな。

 そういったアンハッピーエンドが多い中、唯一これに対抗したのが光原伸氏のこれまた漫画作品の「アウターゾーン」でしょう。これなんか自分より下の年齢の人にはもうほとんどわからないであろう作品でしょうが、この作品は一話完結形式の作品で、その中ででコールドスリープが出てきた回での主人公はまさにこのコールドスリープの研究者で、現在治療できない病気患者を未来の技術に託すために研究をしていたのですが、ある日同僚の研究者に騙され、自ら人体実験を申し出たことにされてコールドスリープの機械に入れられて研究の功績はおろか、恋人までも奪われてしまいました。

 そうして数十年後、眠りに入った当初はまだ不確実だった再蘇生の技術が確立されたことによって主人公も未来の世界で再び目覚め、すわ復讐とばかりにかつての同僚の前に立ちます。しかし既に年老いた元同僚は貧相な生活をしており、彼が言うには主人公がコールドスリープをした後に主人公の恋人を奪ったものの、実はあの女はスパイで、研究功績を奪われた挙句自分は罪を着せられ今はこのようなヨレヨレの生活をしている、それでもいいなら自分を殺しても構わないと言い、それを聞いた主人公も今更どうしようもないと結局何もせずに別れました。

 そうして冷静になったとはいっても、知人も何もないこの未来の世界でこれからどうして生きていこうと悩む主人公に、同じくコールドスリープから再蘇生したばかりの少女が話しかけ、スリープ以前に不治の病を抱えたがある薬品会社がその病を完治させる薬を新開発したので再蘇生し、以前の病気も治ったことを伝えます。その薬品会社というのも、主人公が生前に株式を購入していた会社で、いまや巨大な企業となっていることから、それこそ寝ている間に思わぬ財産を主人公は得ていたのです。こうした事態を受け、またもう一度やり直そうと主人公は再び生きる気力を持ち始める、というハッピーエンドで終わっています。

 作者の光原伸氏もよく自分の作品解説で述べていますが、どう考えたってアンハッピーエンドで終わる話を無理やりハッピーエンドに持ってくることを心がけていたそうです。何もこの話だけじゃなく、割とホラータッチのおどろおどろしい話が多い中、このアウターゾーンは読後が非常に気持ちよくなるハッピーエンドで必ず終わるようになっており、現在でも話作りの際に私が最も参考にする作品です。

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