昨日の今日ですが、昨日書いた「カルテル連続摘発の報道について」で私は何故一斉にカルテル摘発に捜査機関が取り組んだ動機がわからないと述べましたが、今日ひょんなところからその疑問のヒントが出てきて、ある仮説が浮かんだので早速紹介します。
そのヒントというのも、あるメキシコ人からのメールでした。この人は別に私の知り合いでも何でもないのですが彼の英文のメールにて、「値上げっつったって、お前らが理由にしている原油価格はむしろ下がっているじゃないか!」と書いていたのを見て、はっと今回の仮説に気がつきました。
彼がこのメールを寄越した背景には、日本のあるメーカーから原油価格高騰を受けて自社製品の値上げを彼のいる会社に通知したのですが、そのメキシコ人からするとこのところは原油価格は逆に下がっており、原油価格高騰による原材料費の高騰、及びそれがしばらく続くとの予測を理由にした値上げには納得できないということをメールで伝えてきたというわけです。
言われてみるとなるほど、例のリーマンショックのあった9月13日直前に1バレル140円台に達するピークを迎えてから原油価格はその後どんどんと下がり、現在に至っては去年前半に匹敵する1バレル50ドル台をうろつく程に、率にして実に約三分の一になるまで下がっています。しかもそれがここ二ヶ月の落ち込みで起こっているのですから、今年前半の高騰時異常の変動幅で下がっております。
ちなみにあのリーマンショックが起きた頃に雑誌とか読んでいると、エセ経済学者とか相場屋が証券市場は下がる一方だがその分原油や金といった先物市場にお金が回ってくるようになり、逆にどんどん上がっていくといったことを知った風な口をして言ってましたが、市場にあるお金が株価の全面安によってある日突然消えてなくなったんだから私はそんなの上がるはずがないと思って見てましたが、案の定というか金の先物価格を今調べてみたら原油価格ほど極端ではないにしろ、ほぼ同じ形のグラフを作って今も下がり続けています。金に至っては貴金属買取業者がやっぱりこの下落で非常に苦しい経営を迫られており、下に貼ったニュースにあるように違法な出張買取が横行し始めているそうです。うちの近くの古本&中古ゲーム屋もリーマンショック頃から店の前にでっかく金を買い取る看板を出していたけど、多分今頃大損こいてんじゃないかな。まぁあそこはこの前に店舗改装してから店の雰囲気が気に入らなくなったし、この際潰れてもらっても構わないけど。
・「貴金属出張買い取り」に注意! 群馬県内で急増中 知らぬ間に違法行為(YAHOOニュース)
さて例の如く非常に前置きが長くなりましたが、私が今回カルテル摘発が相次いだ背景にあると思う仮説というのは、ずばり値上げです。去年から現在に至るまで昨今の原油高騰によるコスト高のため、おそらく世界中の全産業で値上げの嵐が起こっています。幸いというか日本ではガソリン代を除いて消費者レベルに至るまでその値上げが大きく反映されるものは少なかったのですが、企業間の取引ではどこもかしこも10%程度の値上げは当たり前で、以前に話を聞いた鉄鋼会社の方などは値上げの交渉が多くなり、交渉の場で担当者同士が黙り合うことも非常に増えたと話しておりました。
ここではっきり言いますが、この値上げの嵐に乗じていくつかの企業は必要以上の値上げを行っていることでしょう。もちろん大半の企業では相当に苦労して身を切りながらわずかながらの値上げをやっていることに間違いないでしょうが、今回カルテル事件化した鉄鋼、液晶、ガラスの三産業において摘発された企業などは値上げが目立ちにくいこの機に乗じて相互に協議し、不正に一斉に値上げを行ったために今回摘発の対象となっています。ニュース記事を読んでもらえればわかりますが、摘発理由はどれも「不正な値上げ」です。
それでこれは私の予想ですが、もし原油高があのまま続いていれば今回の摘発は見逃されていたかもしれません。
というのも最初に挙げたメキシコ人の言う通り、現実には原油価格は下がる一方、というより底が見えないほど下落を続けていますが、原油価格が上がっていた頃に達成された企業の値上げは今もそのままの状態です。実質全産業において価格が上積みされたままでコストは高騰以前に戻っているままという、現在の状態は一部の企業にとってかなりおいしい状態といえます。しかし我ながら異様に深読みし過ぎかもと思うのですが、もしこのままの状態が続けば確かに企業間取引において一部の企業の一取引あたりの利益は大きくなるものの、価格の増大によって全体で取引件数は減り、なおかつ一次、二次加工品を扱う、原油価格の下落の恩恵を受けられない中小企業にとってすれば値上げされたままの苦しい状態が続きます。もちろん、こんな状態では全体の景気にも悪影響を及ぼしかねません。
そういった懸念を背景に、すでに繰り返された値上げ価格を現在ではむしろ世界的に引き下げる必要性がある、という具合に国際間の政策決定者たちは認識したのかもしれません。そのためひとまず事件の証拠をすでにある程度抑えており、他の産業も目を引く大規模かつ示威的効果もある国際カルテルによる値上げ事件を一斉に処罰した、というのが今回カルテル摘発が相次いだ原因ではないかと私は考えました。
今回の仮説は過分に私の予想が含まれており、むしろ陰謀論めいた面白おかしい話に仕立て上げた感もあります。しかしこの中で書いた事実は少なくとも現実のものであり、今後の世界経済の動きを見る上でお役に立てるのではないかと思います。特にすでに行われた値上げの問題は非常に根深く、一度上げた価格を原油が下がったからまた皆で一斉に下げ合うことなんてできるはずがないので、ボディブローのようにじわじわと長く効いてくると思います。
今日の参考サイト
・WTIリアルタイム原油価格チャート(商品先物取引ポータル)
・東京金&価格チャート(岡地株式会社)
2 件のコメント:
国際カルテルを一斉に検挙したのはなにかしら、意味がありそうですね。いや、しかしどんな大企業でも違反ってしちゃうんですね。それだけ、今は景気が悪いって事なんでしょうか?
不正をやる、やらないに、大企業も中小企業も関係は私はないと思います。どっちも、経営判断を下すのは数人の人間であることに変わりはないんだし。
でもサカタさんの言うとおり、こうした不正が増える背景には景気が悪いってこともあるかもしれません。逆を言えば不況の中で相当の利益を出すところは何かしら不正を働いていると思ってもいいでしょう、ここで実名までは挙げませんが。
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