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2009年7月4日土曜日

佐野眞一講演会レビュー

 本日私の地元にてノンフィクション作家の佐野眞一氏の講演会があったので、友人と共に行ってきました。まず簡単に佐野眞一氏の経歴を紹介すると日本におけるノンフィクション作家としては事実上最巨頭であり、過去に取り上げたものとして東電OL殺人事件や甘粕事件、そのほか石原新太郎東京都知事や中内功氏などの人生を優れた著作として残しています。私もいくつか読ませていただいたのですがどれも面白く、何よりも佐野氏のこだわりすぎではないかと思わされるほどの綿密な取材には毎回頭が下がります。前述の甘粕事件を取り上げた著作の取材においては中国東北部こと旧満州地方を回って非常にハードだったと述べてましたが、あの年齢でそれだけ取材するだけでもたいしたものです。

 そんなわけで実際の講演内容についてですが、これは友人も言ってましたが結構話が二転三転していました。もともとカバー範囲の広い方ですのでこうなることは予想しており、私もカバー範囲の広さが武器ゆえに話が次から次へと飛ぶのが特徴なのであまり気にならなかったのですが、友人の方はというとあんまりにも飛ぶもんだから聞いてて疲れたと後で言ってました。

 まず最初に話したのは政局についてでした。これは本人も宣伝だといってましたが来週7/10発売の文芸春秋に鳩山邦夫氏とのインタビューと評論を書いたそうで、その際のインタビュー時の話や鳩山家の因縁、そして次回の選挙の歴史的意義について話をしていました。
 私が聞いていて面白かったのは、鳩山邦夫氏の立ち位置についてです。佐野氏が言うには鳩山邦夫氏は皆さんも知っての通りに過去四度の自民党総裁選で一貫して麻生現首相を応援し続けるだけあって非常に麻生首相に近い存在である一方、自民党の対抗馬である民主党の現代表である鳩山由紀夫氏の実弟であります。麻生政権が発足した後はその論功として鳩山邦夫氏は総務大臣となりましたが例の郵政会社社長の任命問題によって罷免され、それがきっかけとして明らかに麻生政権の支持率は低下し、意識してかしないでか兄弟の阿吽の呼吸によって自民党政権崩壊のきっかけを作ったと評していました。

 この辺も長いので次回に鳩山邦夫論でもまた私から書こうと思いますが、このほか話していたのは昭和から平成へのパラダイムや、日本の立ち位置についてです。昭和から平成へのパラダイムは言うまでも無く昭和天皇の逝去ですが、この年にまるで天皇とあわせるかのようにして美空ひばり、松下幸之助、手塚治虫といった昭和を代表する人物らが逝去し、日本人の価値観にぽっかりと空白を作ったことがその後に大きく影響したと指摘していました。
 この辺については私もほぼ同意見で、このブログで連載した「失われた十年」の元の発端は最終的には昭和天皇の死にあると思います。その上で佐野氏は今の日本の根元はどこにあるのかと必死で考えた挙句、最終的に満州と沖縄の延長線が交錯する点にあるのではないかと考えて最近の取材を行うようになったそうです。

 結構ややこしい話もあって変に誤解したところを書くのもあれなんでこの辺で止めておきますが、講演自体は期待通りに非常に面白く、知的刺激を満面に受けられたいい講演でした。ただ去年の田原総一朗氏の講演同様に集まったのはお年を取られた方が多く、自分と友人のような二十代くらいの若者は本当に数えるほどしかいませんでした。さすがに田原氏みたいに凝視されることはありませんでしたが、帰りに友人とも話しましたが今時十代や二十代の若者の九割くらいは佐野氏のことを知らないだろうと思います。著作はどれを読んでも面白いので、もし興味があれば是非佐野氏の本をお手にとられるのをお薦めします。

 なお帰りにファミレスにて「クリームあんみつ(抹茶)」を食べて帰りました。昨日に300円で売っているところを見つけられたのでこれからも利用したいと思います。

2 件のコメント:

SOFRAN さんのコメント...

うらやましいですね。私も、可能であればいきたかったです。佐野氏は、ジャーナリストとして、着眼点が優れてますよね。

花園祐 さんのコメント...

 私も佐野氏は、他の人が取り上げないけど非常に重要な内容をよく取り上げいると思います。多分佐野氏がいなければ取り上げられた事件や人物らは今とは全然違った評価になっていたでしょうね。