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2012年6月7日木曜日

東電OL殺人事件の元被告釈放について

 なんか昨日今日とニュースが盛りだくさんでいろいろ書ききれないことが多いのですが、そんな数あるニュースの中で一番に取り上げようと思ったのが今日の東電OL殺人事件で逮捕され有罪判決を受けた、マイナリ元被告の釈放のニュースです。このニュースの私の感想は、遅きに失したとはいえ釈放されて本当に良かった、この一点に尽きます。

 この事件については前身の「陽月秘話」でも確か取り上げていたと思いますが、念のため簡単に問題点をまとめます。事件そのものについてはウィキペディアの記事を参照するか、可能ならば佐野眞一氏の著書である「東電OL殺人事件」を読まれることを強くお勧めします。
 まずこの事件、というより裁判でおかしな点はマイナリ元被告が犯人であるという証拠は全くと言っていいほどない、というより、マイナリ元被告が犯人ではないという証拠や状況の方が多かった点です。マイナリ元被告が逮捕された理由は被害者に生前、不特定多数の一人として接触してたことと、殺害されていた現場ことアパートの一室にマイナリ元被告の遺失物が発見されたという理由からでした。現場となったアパートに出入りしたことについてはマイナリ元被告も認めておりますが、問題なのは出入りしていたのはマイナリ元被告だけではなく、非常に多くの人間が被害者と一緒に出入りしていた点で、現実に犯行現場からは被害者でもマイナリ元被告でもない第三者の遺失物が数多く発見されており、これら遺失物でもって殺害した犯人とする証拠能力は皆無と言っていいほどありません。

 さらに事件当日においては、マイナリ元被告にはかなり確実なアリバイがありました。この点については佐野氏の著書に詳しいですが、当時マイナリ元被告の勤務地である海浜幕張駅周辺から勤務後、被害者の殺害時刻にまで現場に行くことはほぼ不可能でした。何気にこの海浜幕張駅は中学高校時代に6年間通い続けた駅であるためこのアリバイ関連の話は私の中で非常にすっと入ってくるのですが、この海浜幕張駅を通る京葉線と武蔵野線の乗り換えのタイミングは今でこそ改善されているものの当時は絶望的なまでに悪く、どう踏ん張ったって犯行時刻には間に合わないと私も断言していいです。そんな確固としたアリバイに対し検察は裁判で、ちょっと記憶があいまいですが確か、「マイナリ元被告が勤務を終えた時間を間違えて、通常より早く店を出た」と主張していたような気がします。ガキみたいなこと抜かしやがって、ふざけるのも大概にしろと言いたいです。
 また今回の再審開始のきっかけは被害者の死体に付着していたDNAが再鑑定され、マイナリ元被告の物ではないという結果が出たことからでしたが、こんなのも実は事件発覚当時からわかっていたことでした。当時はDNAではありませんでしたが、確か血液型がマイナリ元被告とはっきりと異なっていて、何故こんなわかりきっていた事実から再審が決まったのか、もっと早くに判断できなかったのか悔やんでも悔やみきれません。

 今日、この再審開始のニュースを見た同僚などはマイナリ元被告はてっきり無罪判決を受けていたものだと勘違いしていました。恐らくその原因は佐野氏の著書が一審の判決、つまり無罪判決が出たところで終わっているからだと思いますし、うちのお袋も同じような勘違いをしていました。上記に上げた証拠からアリバイを考えれば無罪判決が出て当然なのですが、実はこの事件の真の闇は第二審、東京高裁にあります。というのも一審で無罪判決が出た直後、「マイナリ元被告以外が犯人である可能性は非常に低い」と声高に主張したある裁判官がおり、通常であれば一審で無罪判決を受けた被疑者は拘置所から釈放されるのですが、国外逃亡の恐れが高いとしてマイナリ元被告には釈放が許されませんでした。
 仮にこれがアメリカ人や中国人など強国の人間であれば、人権侵害であるとして激しい抗議を受けるために釈放されていたでしょう。しかしマイナリ元被告はネパール人であったため、小国ゆえの悲しさか政府を通した圧力は通じず、人道上最低と言わざるを得ない違法な拘置を日本は実行しました。なおマイナリ元被告はその後、自身を犯人で間違いないと主張したその裁判官と対面します。相手は東京高裁第二審という法廷の裁判長として現れたのですが、裁判が始まる前からこんなこと言ってる人間が無罪判決なんか出すわけなく、逆転有罪の無期懲役を言い渡しています。

 この時の裁判長こと高木俊夫氏について、私は彼の多大な功績を紹介せずにはいられません。古くは狭山事件の再審請求棄却に関わっており、東電OL殺人事件の前にはあの足利事件にも東京高裁の裁判長として菅谷さんに無期懲役刑を言い渡しております。私としてはぜひ、今回の東電OL殺人事件もはっきりと冤罪が証明され、数多くの冤罪事件を手がけた裁判官として歴史に名を残してもらいたいと強く祈るばかりです。

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