ここ最近で一番、「何やってんだこの人?」と思ったニュースです。ってかこういう人が身近にいればいいなぁ。
話は本題に入りますが先日初飛行を成功裏に終えた日本国産ジェット機のMRJですが、初飛行を終えて大喝采を上げるのはまだ理解できるとしても、「今後の大成功は間違いなし!」、「性能の優秀さが証明された!」などと、少なくとも私から見ていて過剰に誉め過ぎる記事が余りにも多すぎるような気がします。航空業界に決して詳しくはありませんが販売して、営業飛行させるというきっかりした実績を作るまでは過剰に喜び過ぎずむしろ兜の尾を締める様な態度が必要だと思え、今日は少しMRJを取り巻く業界と今後の課題についてさっき勉強した結果を素人的に伝えようと思います。
(東洋経済「三菱重のMRJと海外のライバルを徹底比較」記事より引用)
上記の比較表は東洋経済がリンク先の記事にてまとめた表で、素晴らしくよくまとまっててこの図表だけでもうこの記事も完結しちゃうんじゃないかと思うくらいの凄さです。簡単にこの図表とMRJを取り巻く背景を説明すると、まずMRJは乗客100人前後を乗せる「中小型旅客機」というカテゴリーに属し、このカテゴリー内で競合し合う機種というのが上記表にまとめられているわけです。
中小型機というカテゴリー
ちょっと脱線しますが中小型機というカテゴリーはどんな飛行機かというと、ジャンボジェットなどと比べて軽量かつ小型であることから燃費が良く、離発着が多い中短距離間を結ぶ航路に向いているとされるカテゴリーです。また今後世界市場でも需要が高まるとかねてから予想されていることから日本勢も参入したのでしょうが、それともう一つ日本国内の航路で需要が高いことも影響しているのではと密かに見ています。というのも日本の地方空港は滑走路が狭く大きな機体では入れられないため、こうした地域インフラを維持する上でも中小型機の国産化の必要性があったのかもしれません。
MRJのライバル
話は戻りMRJのライバルたちですが、老舗と呼ばれこれまで市場を握ってきたのはブラジルのエンブラエルとカナダのボンバルディアの二社で、新規参入組となるのがロシアのスホーイ、中国COMAC、日本の三菱重工となります。このうちロシアのスホーイに関してはあまり情報がないのですが、エンブラエルとボンバルディアの機種に関しては既に市場に出回っているものの設計がやや古く、燃費などの性能面ではMRJの方に分があると各日系メディアに書かれてあり私も納得できます。となると気になるのは同じく新規参入組でもある中国COMACのARJですが、隣国ということもあってやっぱお互いそれとなく意識し合う存在でしょう。
中国のARJの実力は?
ARJはMRJよりも早くに開発が始まっており、私も記者時代は開発状況とか受注状況などといったニュースの記事をよく書いてました。ぶっちゃけ書きながら、「ほんまこれ飛ぶんかいな?」と内心思ってましたが。
MRJもそうですが中国にとっては初の国産旅客機開発ということもあって開発は計画通りにとは行かず、これまでに何度もスケジュールの延期を行っております。手元の中国語記事などによると2002年に設計開発が始まり2008年に初飛行、2009年3月に初納品の生産が始まり、2014年12月に当局の合格証を得て、2015年6月に検査で合格し、つい先日に初納入先の成都航空へ納められ近く正式な航空営業証が発行される見通しのようです。
このARJの性能について日系メディアは、はっきり言えば見下した見方をしているのが大半と言ってもいいでしょう。実際に皆さんも検索して記事を見てもらえばわかるでしょうがやれ客室が狭いとか設計がMRJより古いとか開発経験がないとかメイドインチャイナだなどかなり厳しく書かれており、国際評価でもMRJの方が高いとも書かれてあります。ただこうした見方にはすこし頷けるというか裏付ける状況証拠がないわけでもなく、その状況証拠というのも初納入が成都航空という地方航空会社であるということです。
中国の威信をかけて開発された機種なのですが何故かその初納品は中国三大航空キャリアこと中国国際、東方航空、南方航空ではなく一地方航空会社の成都航空へ引き渡されました。MRJは恐らく全日空か日航が最初に受け取るであろうことを考えるとやや違和感を覚えるのですが、この背景には中国三大キャリアはそれほどARJを高く評価していないためという噂が出ております。一応発注契約は出してはいますが最初は成都航空に掴ませて性能を確かめる、もとい実験台になってもらうという腹積もりがあり、中国政府も多少自認しているのかその案に乗ったためと、あくまで噂ですがこんな話を聞くわけです。
なもんだから日系メディアはARJは中国国内でしか発注されず、海外市場では恐らく売れないだろう、MRJの敵ではないだろうなんてことをよく書いてます。なんせ性能ではMRJの方が圧倒的に上なのだから。
本当にMRJは海外市場で売れるのか?
ある意味この箇所こそ一番書きたかったところになりますが、やはり今の日本のMRJに対する意識は浮かれ過ぎであるような気がしてなりません。特に中国のARJに対しては、「性能では劣るはずがない」と言い切り、非常に強気な態度で見下す以外の目は持ってないように見える。
しかし、性能が上だからといって必ずしも売れるとは限りません。インドネシアの高速鉄道の受注で先日、日本が中国に一敗地にまみれたのは記憶にも新しいでしょう。実績、性能で言えば間違いなく日本の新幹線の方が上でしょうが、この時は負けました。何故負けたのかというと中国が安値で攻勢をかけてきたというのもあるでしょうがそれ以上に政治力、いや販売力に差があったと見るべきでしょう。
鉄道にしろ飛行機にしろ、海外で受注を受けるに当たっては安全性や性能、実績もさることながら何よりも大きく左右するのはやはり販売力です。いい物で値段がお手頃だからって売れるとは限らず、この辺に関する言及が日系メディアに全くと言っていいほど見当たらないことに自分は強い危機感を覚えています。
楽観視はよくない
こと販売力というか売り込みに関しては中国は本当にえげつないところがあり、果たしてそのえげつない中国に負けないえげつなさを日本はMRJの販売で発揮できるのか、そしてをそれを実行に移す人材がどれだけいるのか、いなかったり少なかったりするのであれば今この瞬間にこそ人材をスカウトなり育成なりすることが喫緊の課題であるように思えます。
特に中国の場合、無理矢理海外実績を作るために半端ないダンピング攻勢こと大幅な値下げ戦術を取ってくることも考えられるし、メーカーの赤字分を政府が補填するという裏技も仕掛けてくることだって十分あり得ます。そのような場合に日本側はどう対応していくべきなのか、採算を維持した上でどうやって海外で実績を作っていくのかという戦略なり戦術を今この時だからこそ、相手は性能で劣っているからと言って見下し、楽観視するばかりでなくしっかり戦う準備をして蟻だろうが象だろうが向かってくるものすべてを一撃で叩き潰すくらいの気迫を持って売り込みをかけてもらいたいというのが私の本音です。
結論を述べると、スペックで勝っていることをいちいち自慢ばかりせず、相手が誰であろうとなにがなんでも本気で売り込んで儲けるという強い気迫を日本は持つべきで、浮かれるのにはまだ早いというのが一素人としての意見です。
6 件のコメント:
お久しぶりです、というか数件コメントを書いてるのですが、
今回はちゃんと入っているでしょうか?
(と毎回この冒頭文を書いてから本文に入ってます)
私もARJは今後の日本の工業界の新たな可能性を担っているのは、
間違いナイと思います。それと医療機器はじめ医療技術関連。
ただ花園さんのおっしゃる通りで、
日本の営業力と中国、最近ではインドの営業力は、
言語の文法上の問題もあるのかもしれませんが、
その勢いというか迫力たるや、
まぁ凄いなと「感心」しきりです。
インドの新幹線は日本式を採用するとのことですが、
これも安部総理の「おかげ」というより、
インドにしてやられた感が否めません。
多額の円借款を得て、自腹は切らないでってな商談ですしね。
しかし、このくらい図々しくないと、
これからの国際社会では生き残っていけないことは、
東芝の大量リストラに象徴されているような気がしています。
いいものさえ作れば・・・という希望的観測に基づく、
営業手法だけでは通用しないのが現代の国際社会かと。
ただ、この図々しい感覚。
どうしても日本人には一部の関西人以外では、
理屈としてはわかっていながらできないという、
ジレンマを抱えているワケでして・・・
もっとも中国人ビジネスマンやインド人ビジネスマンを、
日本側の味方につければイイってコトなんでしょうか?
ちょっと複雑な心境ですケド。
早速コメントいただきありがとうございます。
コメント表示の件ですが、たまに文章が長すぎたり、変なNGワードが入ってしまったためかスパムとして認識され保留扱いされることがありますが、表示されているコメント以外は生憎このブログでは受け取っていません。前もこういうことがあり、その際はタブレットやスマホなどから入力したコメントが反映されなかったようなので、なるべくPCから入力していただけると確実ですのでご協力いただけると助かります。
この記事は強い意欲とともに物凄いペースで書き上げたので、こうも早くコメントいただけて正直嬉しいです。やはり日本と、海外での営業の仕事を見ていると明らかに質が違い、担当者同士の親しさというか距離感だけを詰めようとする日本国内の営業ではとこの頃よく思え、部署、会社、国家ぐるみと言ったチームでの売り込みが欠けてるのではという気がします。
MRJに関しては今からでも遅くないからそうした人材をスカウト、または育てた方がいいし、何だったら大手商社にいてノウハウ持った人間を移籍させるとか、仰られている通りに外人のビジネスマンをそのまま持ってくるのがベターでしょう。生憎自分は売込みが下手なのでこの方面では力になれないのですが、せめて注意喚起くらいはできるかなと思ったのがこの記事を書くきっかけでした。
私も同感ですし、以前書評を書かれていた英国人から見た日本の観光産業の指摘と重なるような気がするのは私だけでしょうか。新幹線でもそうですし、捕鯨の判決でもそうですが、楽観しすぎというか日本人の思考・視点の悪い癖みたいなのを感じます。
さらに言えば、中国や韓国と比較して、技術や性能に関しても前ほどのアドバンテージはなく、もはや逆転している部分も多いはずですし、コンプライアンスについても・・・・・な一年でした。
どうせ追いつくはずがないと高をくくっていたらいつの間にか逆転されているということにならなければいいと危惧しています。
歩行者さん、コメントありがとうございます。
私の意見に賛同とのことで、もしかしたら「素人がほざくなっ」みたいな意見も飛んでくるんじゃないかとこの記事には思ってただけに、同じ意見の方もおられるのだと思って非常にホッとしました。
日本人の楽観視に関しては戦前の軍部が、「一番起こってほしくない事態は起こらない前提」で作戦を練ってたということを聞いて、案外これは日本人の宿阿ではないかと思え最近こういう見方を強く取っています。仰られている通りに新幹線や捕鯨、あと2016年のオリンピック誘致の際も、「もう日本の勝利で決まり!」みたいな意見が多過ぎ、悲観視するべきとまではいわないまでも、冷静な分析が減りつつあるのではと危機感を覚えています。
最後に中国の製造業技術についてですがコンサルの友人曰く、「多分やですで日本は中国に追い抜かれている」と言ってて、特に日本では技術継承が全く行われていないためあと10年でひっくり変わると予言しています。私も日系の中国工場に少しいましたが、品質管理では分があるもののこと量産や試作においてはもうダメだろなと匙投げました。
インドネシア高速鉄道に関しては他のインフラも開発しなければならない、という中で財政負担が発生しない中国案にインドネシア側が魅力を感じたのが強いかな、と思いました。
あと、ある記事で安倍首相と李克強首相が高速鉄道のコスプレして殴りあってる風刺画を見つけましたが、なんとなく気に入りました。
http://global.dwnews.com/news/2015-09-30/59685433.html
費用面のハンデはあったものの、それを上回る販売力と政治力がインドネシアの案件では見たかったですね。聞くところによると日本の計画丸パクリの中国案だったそうですし、「延伸する時は日本もよろしく」と言ってた辺りはインドネシア政府に日本は舐められていたでしょう。
最近の日本の風刺画はなんかユーモアより嫌らしさが強く感じることが多いので、自分も中国の雑誌や新聞の方が見ていて楽しいですね。
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