2015年12月9日水曜日

危機を切り抜けた名パイロットたち その三

 少し間隔が空きましたがまた航空事故の特集です。

7、エアトランサット236便滑空事故(2001年)
事故内容:燃料漏れ  乗客乗員数:306人

 カナダのトロントからポルトガルのリスボンへ向け大西洋を横断するルートで離陸した同便は離陸してからしばらくは問題なく飛行し続けましたが、離陸から約4時間後にタンクから燃料が漏れ始めるというトラブルが起こり始めました。燃料漏れの原因はエンジンの整備不良で、旧仕様から新仕様へと切り替わった際に一部の部品が切り替わっていたにもかかわらず、手元に新部品がなかったこととと数ミリ単位の寸法の違いしかないことから旧部品を取り付けたため燃料配管とエンジン本体が接触することとなり、飛行中の振動で配管に亀裂が生じてそこから燃料が漏れることとなりました。
 燃料漏れが始まってすぐ機長と副機長は燃料ゲージの異常な現象に気が付いたものの、当初はゲージの誤作動と考え特別な対応をしませんでした。片方のエンジンがとうとう停止したことで事態の急を知ったものの、それからしばらくしてもう片方のエンジンも止まり、燃料切れによって完全なエンジン停止状態で着陸先まで飛行しなければならない事態へと迫られました。

 現在の大半の民間航空機にはラムエア・タービンという非常用風力発電機が備えられているため、無線や舵の操縦に使う最低限の電力は確保されていました。ただ動力が完全に使えなくなったため飛行できる距離は制限され、近隣にあった大西洋上にあるテルセイラ島のラジェス空軍基地へ途中で高度を調整しながら向かい、そのまま無事に一人の死亡者も出さずに着陸してのけました。

8、中華航空006便急降下事故(1985年)
事故内容:5Gの急降下  乗客乗員数:274人

 台湾のフラグシップキャリアであるチャイナエアラインの同便は台北からロサンゼルスへと向かっていた同便はロサンゼルスまであと550キロメートルという太平洋上で乱気流に遭い、機体の速度を自動操縦で慎重に調整しつつ飛行していました。しかしこの時に航空機関士の排気バルブの設定ミスにより第四エンジンが停止し、それによって機体が左右に偏るのを防ぐため自動操縦のシステムは飛行速度を落としたのですが、その結果設定速度のマッハ0.85を大きく下回る0.75まで落ちてしまいました。
 一方、パイロットらは速度の低下に気付かないまま自動操縦でもなかなか姿勢が回復しないので手動操縦に切り替えたところ、ただでさえ落ちていた速度が一気に落ちてしまってそのまま機体は海面へ向かってまっさかさまにきりもみ状で急降下し始めました。その際、搭乗していた人には5Gもの負荷がかかっていたと言われます。

 とてつもない負荷がかかりましたが機体の一部が落下中の衝撃で吹き飛んだため偶然着陸装置が下りたため空気抵抗が増して落下速度が落ち、また機長が元軍用機パイロットで5Gでも操縦できるという強者であったことも幸いし、何とかエンジンを動かして姿勢を戻し、なんと水平飛行を回復してそのまま最寄りのサンフランシスコ空港へとたどり着きました。
 急激な落下であったため機内では怪我人が出たものの幸い死者はありませんでしたが、文字通り真っ逆さまに墜落する直前での九死の一生と言える事故でしょう。

9、カンタス航空32便エンジン爆発事故(2010年)
事故内容:エンジンの空中爆発  乗客乗員数:469人

 シンガポールからオーストラリアへ向かった同便は離陸からわずか数分後、第二エンジンがいきなり爆発しました。爆発したエンジンの破片は周辺の民家などに落ちたものの幸い衝突した住人などはでなかったのですが、その落下物から当初は同便も墜落したに違いないと情報が出たそうです。
 一方、そのころ同便では、パイロットたちが冷静かつ的確に事態へ対応していました。というのも同便には機長に対する定期的な試験のため経験豊富なパイロットが五人も乗っており、爆発を受けてシステムには無数のエラーメッセージが表示されていましたが各自が手分けして対応し、操縦桿を握る機長は操縦にのみ集中することが出来ました。

 ただエンジンが爆発した際に破片が期待を突き破り、配線を損傷させたため燃料の廃棄、並びにエンジンの停止といった操作が受け付けられませんでした。そんな中でもパイロットたちは落ち着いて旋回、並びに着陸をやってのけ、どうしても停止しなかった第一エンジンは着陸から数時間後に消防が消化液を吹きかけたことによって止まり、乗客乗員は誰一人怪我することなく生還を果たしました。
 なおエンジンが爆発したのはメーカーの製造ミスによるものであったため、同型のエンジンを使用していた世界中の航空機が整備・検査のため飛行を見合わせる事態となりました。

10、エアカナダ143便滑空事故(1983年)
事故内容:燃料切れ  乗客乗員数:469人

 なんか今日はやたらと燃料切れ事故ばかり取り上げますがこれもその一つで、カナダ国内のケベックからモントリオールへ飛び立った同便は飛行中、燃料切れが発生して全エンジンが止まってしまいました。
 一体何故燃料切れが起こったのかというと、実は根深いヒューマンエラーが絡んでいました。当時、航空会社のエアカナダではそれまで使ってきた度量衡のヤード・ポンド法をメートル法へと移行を進めており、同便は初めてメートル法によって航続距離、必要燃料を測定して給油される便となりました。空港での給油の際、必要燃料量は正しく計算されたものの残余燃料量の単位計算でミスをしてしまい、結果必要な追加燃料量からかなり少ない量で給油されたため途中で燃料切れを起こしてしまったわけです。しかもコンピューターには正しい燃料量でセットしたため、計器上は燃料に余裕があると表示されてたもんだからパイロットとしてはたまったもんじゃないでしょう。

 突然エンジンが停止したため機内で多くの電気機器が使用不能になる中、機長らはわずかに動く計器類から降下率(一定の高度を降下する間に移動できる距離)を割出し、現在地から着陸できる滑走路を急いで探しました。その結果、副機長のかつての勤務先であるギムリー空軍基地が一番適当だと考えられそちらへ向かったのですが、副機長は知らなかったのですが当時ギムリー基地は民間空港になっており、しかも当日は自動車レースが行われてて多くの家族客が集まっておりました。
 そんな状況もなんのその、元々グライダー飛行が趣味の機長はエンジンなしのまま見事に操縦しつづけ、高度もばっちり合わせて多くの家族客が見守る中で滑走路へ着陸し、無事に停止してのけて見せました。ただ着陸地点からすぐ先には家族客が集まっている場所があり、仮にオーバーランしていれば多くの死傷者が出ていたほどきわどい着陸でした。

 なおこの事故にはオチがあり、乗客乗員全員が無事に生還を果たした陰で、不時着に備え近くの空港からギムリー基地へ向かっていた整備士はその途上、車の燃料切れによって基地にたどり着けなかったとさ。

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