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2016年3月12日土曜日

栃木女児殺害事件の冤罪可能性について

 はっきり言えば現時点でこの問題について何かしらコメントするというのは材料不足も否めないし事実と異なっている可能性もあるだけに予想するのはハイリスクであるのですが、それでも今この段階で言わなければ自分は後悔するだろうと思うので、他に抱えているネタを差し置いて優先して取り上げることにします。

栃木小1女児殺害事件(Wikipedia)

 2005年に小学一年生の女児が殺害されたこの事件について先日、容疑者の男性に対する裁判が始められ現在も続けられております。結論から述べると私はこの容疑者の男性は無実で、冤罪である可能性が高いと考えております。

 事件詳細については省略し何故冤罪であるかという理由を中心に述べていますが、数え上げると切りがないのでひとまず下記にリストアップした上で個別に解説していきます。

1、事件発生から9年後の突然の逮捕
2、直接証拠が何もなく、Nシステムの通行記録のみの強引な逮捕
3、強引な取り調べ
4、自白内容と遺体殺害状況の不整合
5、???

1、事件発生から九年後の突然の逮捕
 この殺害事件自体は2005年の発生ですが容疑者の逮捕は2014年です。しかも逮捕された男性は偽ブランド品所持で母親ともども逮捕されるといういわゆる別件逮捕の形式を受けており、そこからさらに裁判まで約2年の取り調べを受けてきたということになるわけです。

2、直接証拠が何もなく、Nシステムの通行記録のみの強引な逮捕
 1番の理由とも重なりますが、9年間も犯人が見つからなかった迷宮入り事件でなぜ突然犯人が捕まったのか。理由としてあり得るものとしては犯人の出頭、目撃者や関係者の証言、もしくは決定的な証拠の出現の三通りしかありません、というよりこれ以外は普通はないでしょう。
 然るにこの事件の容疑者逮捕の根拠として使われたのはNシステムの通行記録のみです。Nシステムについて説明は省略しますのでわからない方は自分で調べてもらいたいのですが、栃木県警は犯行時刻付近に近くの道路を容疑者所有の車が通行したというNシステムの記録を以って容疑者であると判断して逮捕し、自白を得たと主張しています。

 説明するまでもないでしょうがこれには疑問が二つあります。一つは近くを通行した記録が何故即座に犯人へと導く証拠となり得るのか、具体的なアリバイはどうなるのかという点。もう一つは何故この事実が9年後に明るみとなったのかという点で、通行記録であれば事件発生直後にもすぐ調べられる記録であってもしこれが本当に犯人特定の根拠となり得るのであれば既に逮捕できているはずでしょう。逆に言うなれば、逮捕するに当たってほかに真っ当な根拠がなかったということを指示しており、裁判開始後も自白以外の証拠を栃木県警は提出しておりません。
 なおNシステムの証拠採用について前田恒彦がなんかほざいていますが、ほかならぬこいつが知った口して捜査や裁判について語っているという事実を今回初めて知りました。過去にやったことを考えるとこの人はこういうことを発言してはならないし、またメディアも何を言おうが取り扱うべきではないと思うだけに非常に不愉快に思います。

3、強引な取り調べ
 こちらは目下リアルタイムで報道されている内容ですが、容疑者である被告の証言によると他の冤罪事件よろしく今回も警察官や検察官が怒鳴ったり、机を叩いたり、家族を引き合いに出すなど以前のあらゆる裁判で違法とされる取り調べ行為が行われていたと述べ、これに対し検察はそのような行為をしていないと否定しています。しかしまぁ、この検察の主張についてははっきりとした証拠、それこそ取り調べの状況をフルタイムで映した録画記録でも出さない限りは信じるまでもないでしょう。理由は後述で。

4、自白内容と遺体殺害状況の不整合
 ここが非常に肝心なところですが、被害者の解剖を実際に行った法医学者が被告の自白内容と殺害状況が一致していないと裁判で証言しています。

遺棄現場での殺害は「ありえない」 遺体解剖の法医学者が証言(産経ニュース)

 これに対し検察側は別の法医学者を出廷させて矛盾はないと証言させておりますが、素人の判断ではありますが首の可動角度などの面で検察側証人の意見にはちょっと無理があるような気がします。車のシートの上で殺されたわけではないのに死後硬直が始まってから動かしたとなると、かなり異常な行動ですし。

5、捜査・取調べを行ったのが栃木県警だから
 メディアで誰も指摘しないのが不思議でしょうがなく、わかっているから誰も言わないのかなどとも考えているのですが、今回この事件を捜査しているのはあの足利事件を生んだ栃木県警で、この事実一つとっても冤罪と疑うに足ると私は考えております。足利事件についてはもう何も語りませんが今回のこの事件も足利事件のDNA証拠と同じく、Nシステムの通行記録という証拠一点のみで自白を得て裁判にもつれ込んでおり、他に犯行を示唆させるよう補強証拠が何も見当たりません。
 ふつう私の感覚から言えば、足利事件のような冤罪事件を生んだ手前、捜査にはある程度慎重を期す態度なりを示すと思うのですがこの事件の捜査ではそのような態度は微塵も感じられず、むしろ懲りずに薄弱な根拠ひとつで無理矢理有罪に持ち込もうとしているというのはいくらなんでも反省が足りないのではという気がします。そもそもこの栃木女児殺害事件でも当初はDNAを使って捜査を行っておりましたが途中で現場で検出したとしていたDNAは捜査関係者の物だったとわかって諦めており、恐らくこの時点でなりふり構わず証拠を取り立てようとしたのでしょう。ってかむしろ捜査関係者を逮捕しろよ。

 栃木県警は上記の足利事件に限らず1999年の栃木リンチ殺人事件でも常識はずれな行動を取っており、しかも問題行動を取った警察官に対して「停職14日間」で済ませているなど警察組織としては大阪府警と並んで私は最も信用しておりません。足利事件でも結局真犯人は見つからないままですが地道な取材で冤罪を明らかにしたジャーナリストの清水潔氏は「犯人を特定した」と述べており、またその事件で殺害された女児の遺品も頑なに母親への返却を拒むなど、あらゆる面で理解を越えたことをやってのけます。
 この事件の裁判はまだ始まったばかりですし将来自分も見方を変えるかもしれませんが、現時点においての考えを述べるなら冤罪の線が濃いというのが私の意見です。

  追記
 遺体状況を巡る議論についても記事を書きました。

栃木女児殺害事件の遺体状況を巡る矛盾

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

被告のPCには児童ポルノや猟奇趣味画像が保存されていたらしく、偽ブランドを売った前歴もあるそうです。
人は疑わしい要素の集合でその人を犯人扱いすることができます。でも警察がおんなじことしてたらマジで警察いらないでしょ。日本の警察は犯罪抑止に熱意がなくても重大事件には全力を以て必ず犯人を見つけ出してくれる「本気出せば強い警察」だと評価していましたが、犯人の真偽を確かめようともしない警察なんて市民の敵としか思えません。本当に失望しました。


警察学校でのいじめ、警官のピストル自殺にパワハラなど警察の不祥事には枚挙にいとまがありませんが、事件の捜査への誇りすら失って力だけが残った組織と成り果てたことに絶望すら覚えます。

花園祐 さんのコメント...

 コメントありがとうございます
 過去の犯罪歴など疑わしい要素は確かに参考にすべき情報ですが、それだけで逮捕していいかとなると話は別です。あくまで証拠で以って追求しなければならないにもかかわらずこの体たらく、しかも足利事件を引き起こしてもいるということを考えると、私としては腑に落ちません。
 警察も私が子供だった頃はかっこいい職業でしたが、頑張っている景観もいるとは思う一方、ちょっとどうかと思う事件が多すぎます。変な話ですが、そう遠くない未来に自警団みたいなのが出てくるかもしれませんね。