・4大監査法人(Wikipedia)
<四大監査法人の順位>
1位:プライスウォーターハウスクーパース (PricewaterhouseCoopers) - 略称:PwC
2位:アーンスト&ヤング (Ernst & Young) - 略称:E&Y
3位:デロイト トウシュ トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu) - 略称:DTT, Deloitte
4位:KPMG (KPMG)
手っ取り早くWikipediaの記述を引用してこちらの記事に書かれているランキング通りに順番を並び替えました。これを覚えておけば明日の試験もバッチリ!
<四大監査法人って何?>
そもそも四大監査法人とは何ぞやということですが、企業、特に上場企業は年度ごとの業績を市場へ公開するに当たり独立した外部の監査法人から監査を受けなければなりません。その監査を担当するのが監査法人で、その中でも世界でトップ4に入るのが上記の四大監査法人に当たり、そこそこ歴史を持っているのと会計業界の中では明確にグレードが分けられていることによって四大監査法人とそれ以外では色んな意味で大きな隔たりがあります。
特に近年はグローバル化に伴い大企業は世界各地に拠点を持つのが当たり前となっていますが、監査に当たっては国内だけでなく系列の海外法人を含めてまとめて業績を監査して報告しなければなりません。そうした国際監査業務を担えるだけのグローバルネットワークを持つ監査法人は限られる、というか実質的に上記の四大監査法人以外には処理できないため、棲み分けといっては聞こえはいいですがグローバル企業の監査業務は実質的にこの四大監査法人によってほぼ独占されています。
<グローバルネットワークとアライアンス>
四大監査法人のグローバルネットワークについてもう少し説明を加えておくと、各国・地域の拠点を業界用語では「メンバーファーム」と呼んでおりますが、拠点同士の人的交流や情報共有はあっても資本関係は一切ありません。あくまでそれらメンバーファーム同士はそれぞれの国・地域の監査法人が「提携」または「連盟」を組んでいるだけであって、航空業界におけるスターアライアンスなどのような「アライアンス(連盟)」関係に過ぎません。とはいっても、利害関係の衝突から分離したりするようなことはほぼないので、普通に見たり聞いたり接したりする分には通常のグループ会社みたいに思っても問題はない気がします。
<日本における四大監査法人>
経済大国(死語?)である日本にも当然、四大監査法人のメンバーファームは存在しているので以下に各系列の拠点を列記します。
・PwC:PwCあらた有限責任監査法人、PwC京都監査法人
・アーンスト&ヤング:新日本有限責任監査法人
・デロイト トウシュ トーマツ:有限責任監査法人トーマツ
・KPMG:有限責任あずさ監査法人
上記の各法人名は社会人経験者であっても監査法人と関わる業務の人は案外少ないので列記されてもピンとこない人が多いかもしれませんが、最近は大企業の会計不正事件が多いため中には反応できる方も増えているかもしれません。
そんな日本における四大監査法人の勢力図はどうなっているのかですが「公認会計士ナビ」がさすが業界専門メディアなだけに非常にわかりやすくまとめているので以下に主たるデータを引用します。
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | |
人員総数 | 約5,400名 | 6,284名 | 6,185名 | 2,219名 |
公認会計士数 | 3,004名 | 3,386名 | 3,077名 | 767名 |
監査証明
クライアント総数
|
3,325社 | 4,084社 | 3,574社 | 931社 |
非監査証明
クライアント数
|
2,073社 | 3,583社 | 3,526社 | 1,041社 |
業務収入 | 83,157百万円 | 99,175百万円 | 89,177百万円 | 33,310百万円 |
(「公認会計士ナビ」2016/4/25記事から引用)
見ての通り、PwC系列のあらた以外の三法人は割と拮抗する勢力図となっているのですが、あらた一つだけが他と比べて圧倒的に小さい規模となっています。PwCは世界ではナンバーワンなのに何故日本のあらたは四大監査法人ファームの中で最低なのかというと、地味に過去の歴史が影響してたりします。
<あの頃はいろんなことがあった>
あらた監査法人は実は歴史が浅く、2006年の設立でまだ十年ちょっとしか経ってません。ではPwCはそれまで日本にファームを持っていなかったのかというとそうでもなく、かつて1968年設立の中央会計事務所、2000年に青山監査法人が合併してできた中央青山監査法人がPwCの日本ファームでした。
中央青山監査法人は世界同様に出来た当初は日本最大手の監査法人でしたが、中央監査法人の頃を含めると担当していた顧客には山一證券、ヤオハン、足利銀行などと、日本の主たる会計不正事件の歴史を彩る面々が顔を揃えていました。特に2005年に発覚したカネボウの粉飾事件では所属する会計士が粉飾を指南していた(その会計士は後に自殺)として、金融庁から監査業務の2ヶ月間の停止が言い渡されるという前代未聞の事態に発展したことからPwCは中央青山との提携を切り、日本で新たに「あらた監査法人」を設立してこちらを日本ファームとすることにしました。
あらた監査法人の設立に伴い中央青山からは多くの会計士やスタッフが顧客ごとあらたへと移籍しているのですが、ぶっちゃけていうと看板の付け替え以外の何物でもなく、前に話した人も別に否定してませんでした。
一方、提携を切られた中央青山の方はそっちはそっちで提携を切られた後も存続しており、こっちもこっちで「みすず監査法人」と看板を付け替えはしたものの、再スタートを切った直後に今度は日興コーディアルグループの粉飾を見逃して適正意見を出していたことが明るみとなったのが止めとなり、顧客離れも相次いだことから業務撤退を宣言して解体される事となりました。なおこの際、みすずの京都事務所が独立して出来たのがあらた同様に日本のPwCメンバーファームとなっている京都監査法人です。
<業界変動の波>
地味に、といっても関係ない人には全く関係ないのですが、最近会計業界では業界変動が起こっているというか結構揺れ動いています。というのもここ数年、日本でも巨額の会計不正事件が頻発し、それによって一社で何十億って金が動く大口クライアントの監査法人が切り替えられたりしているからです。
最も代表的なのは東芝で、元々新日本監査法人がここを担当していたのですが知っての通り巨額の不正が明るみとなったことで監査業務の依頼先が切り替えられたのですが、この切り替え先が業界関係者にとっては「まさか」と思われたあらた監査法人でした。
・会計士から見た「東芝の監査人の交代」について(プロボノ会計士の日記)
一体何故あらたが東芝を引き受けることに驚かれたのかというと、前述の通りあらたは四大監査法人の日本ファームの中で最も規模が小さく、東芝ほどの巨大グローバル企業の監査業務をピンチヒッターで担当するには圧倒的にマンパワーが足りないと思われていたからです。上記ブログの方もまさにそのような見解だったようで、「以前から、東芝の監査契約を受注するのは人員数的に、トーマツかあずさだと業界内では言われてきました。」という風に言及しています。
このあらたが東芝を担当する件について知人の会計士に話を聞いたところ、これまた過去の会計不正事件が影響していると教えてくれました。曰く、あずさは以前にオリンパスを担当していたため当局が認めず、トーマツに関してはわからないと言っていたのですが、恐らくトーマツは文芸春秋の報道によると東芝の会計不正処理を指南していたと言われ、それが影響して認められなかったのだと私は考えます。っていうか、新日本に監査業務を依頼していながらトーマツにコンサルタント業務を依頼していた東芝も色々とあれだなと思いますが。
あくまで噂レベルですが、東芝を担当することなってあらたの方では人員を増やしたり引き抜きをしているとも聞くだけに、今後もこの流れが続くようであれば会計士業界ではまだまだ変動が起こるかもしれません。企業を生かすも殺すも会計次第と言いますが、案外こうした過去の巨額不正事件と照らし合わせて業界の変動を眺めると楽しいものです。
おまけ
前に会計業界に詳しい友人が教えてくれましたが、合併淘汰が進み現在の形になる前は「八大会計事務所」という言葉があったそうで、この言葉を使い出したのは八番目の監査法人だったそうです。物は言いようだ。
8 件のコメント:
> っていうか、新日本に監査業務を依頼していながらトーマツにコンサルタント業務を依頼していた東芝も色々とあれだなと思いますが。
こちらについてですが、新日本は独立性の観点から、コンサルティング業務を受けれなかったんだと思いますよ。
自分の仕事を自分で監査する(自己監査)になってしまいますから・・・
コメントありがとうございます。言われてみると、確かにそうだ!
j分は当初、東芝の事件をあまりの不正内容から新日本も入れ知恵してたのではと思っていましたが、文芸春秋に報じられた生々しい東芝とデロイトのメールのやり取り、また会計は不正を追及する側よりも隠す側の方が有利という解説を見て一気に考えを変えました。そういう意味では新日本はババを引かされたというのが事件の真相でしたね。
Grant Thorntonという会計事務所がご存知でしょうか?ぜひご紹介頂きたく。
しっとるけど、わざわざ紹介するまでもないな。
PwCあらたの前身をさかのぼると、PWにいきわたり、当時の日本法人(PW青山監査法人)で東芝の英文監査(2000年くらいまで)をしていたので、実力的には遜色ありません。当時の関与会計士も一部残っています。もちろん粉飾があった時代は、EY新日本で単独監査しています。
ご指摘ありがとうございます。青山時代に東芝を担当していたとはこれまで知らず、参考になります。
さすがに単独記事ではかけませんが、この前豪法人で不正会計が発覚した富士フイルム(既に変更済み)など、必ず事件あるところにEYが絡んでいるのが気になります。業界関係者によるとデロイトがめちゃ厳しくて信頼できるということですが、こうした監査法人の違いも日本のメディアは報じた方がいいのになとこの頃思います。
近年、PwCのパワハラ問題が頻繁に報じられていますが、私は、むしろ、PwCの内部通報体制が全く機能していないことを心配しています。金融庁や日本公認会計士協会に対しては、不祥事を起こしているのは、監査法人ではなく、監督外であるコンサルファームであると責任転嫁しているようです。しかし、内部通報に関してはPwC Japan合同会社(代表は木村浩一郎氏)というバックオフィス会社で一体管理しているので、実質的には監査法人の内部通報体制も機能していないことになります。また、通報内容が最近まで、幹部のカレンダーに貼り付けられ、社内では誰でも閲覧可能でした。再び、不正会計の温床になっているかも知れませんね。
PwCのパワハラ問題はよく聞きますが、今のところ世間の関心はやや薄いのかなという気がします。PwC自体が大手メーカーと比べると一般認知が低いことが原因でしょうが。
聞くところによるとあらた監査法人(PwC)は割と狭い所帯であることから、やはり内々の管理でちょっとと思われるところがあるそうです。どちらにしろ、組織としてちゃんとした対応を取ってくれればいいのですが。
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