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2008年11月4日火曜日

史実としての三国志

 なんか今日のこの「ブロガー」は妙です。通常、記事を書く際の画面ではリンクボタンとか文字を太字にさせるボタンがあるのに今日は表示されません。まぁ使う予定がないからいいけど、何してんだグーグルは。

 それでは本題ですが、昨日の史記の話を書いたところ三国志にはフィクションが多いと聞いたがという質問をコメントで受けましたが、これは実際かなり多いです。
 まず基本知識として一般に三国志と呼ばれる書物には二種類あり、三国時代が終結した直後に陳寿によって書かれた歴史書の「三国志」がすべての原典で、これはもう一つの三国志と分けるために一般には「正史三国志」と呼ばれています。これに対して十四世紀に羅慣中によって脚色をふんだんに入れて書かれたのが「三国志演義」といって、通常三国志という場合はこっちの方を指します。フィクションが多いと言われるのもちろんこっちの方です。

 それでは演義にどれくらいフィクションがあるかなのですが、現地中国においても清代の歴史学者の章学誠が、「七分が真実で三分が虚構」と評しており、書かれている内容の大半は確かに真実なのですがその中にちょびっとずつフィクションが入っているために非常に読者は混乱するとも先ほどの章学誠は述べています。実際に私から見ても大体この割合で演義は書かれており、そのためよく三国志を知っている方でもフィクションと知らずに実際の歴史だと思い込んでいるということが多々あります。

 では具体的にどの辺がフィクションかですが、やっぱり代表的なのは今映画が公開されている「レッドクリフ」の題材となっている赤壁の戦いの辺りでしょう。演義の中では諸葛亮が風を呼んだり周喩を馬鹿にしたりなど鬼人の如き活躍を見せ、戦いも派手な火計で一挙に総崩れともなるほど大掛かりな戦闘となっていますが、現在の研究によるとこの赤壁の戦いで曹操軍が負けた最大の原因は疫病にあるとされ、また実際の戦闘でも諸葛亮はほとんど何もせず、実質周喩一人で曹操軍を蹴散らした戦いのようです。これは周喩に限るわけじゃありませんが、やっぱり諸葛亮が人気なために彼と相対する人間は相対的に実際の歴史より低く見積もられて書かれてしまいます。曹操軍についても同じように、特に夏候淳や夏候淵らは短慮な武将としてかかれ、実際は優秀な武将であったにもかかわらず引き立て役にされてしまっています。さすがに、張遼は悪く書かれていないけど。

 この張遼ですが、私の中学時代の後輩なんかはこいつが一番好きでゲームでも贔屓して使っていました。この張遼は魏軍の中で呉との最前線に立って守り続けた武将で活躍のシーンも有り余るほどなのですが、彼の場合は非常に珍しく、演義でも活躍しているのに実際の歴史ではもっとすごい活躍をしています。
 何でも呉軍が十万の軍勢を引き連れてきた際には自ら奇襲をかけ、なんと七百人の兵隊で追い返したらしいです。しかもその際に逃げ遅れた部下を見つけるや再び敵軍に突撃し、部下を拾ってから帰還したというのですから化け物です。

 しかしそれにしても、一番演義で悪く書かれてしまって損を食ったのはまず間違いなく魏延でしょう。演義では劉備の元に初めてやってくるなり諸葛亮に、こいつは反骨の相があるからいつかきっと裏切るから殺してしまえとまで言われてしまいます。ちなみにこのシーンでは「ジョジョの奇妙な冒険」の名セリフがパロディされて、
「くせぇー、こいつは反骨の臭いがプンプンするぜっ! 早いとここいつの首を切っちまいな、劉備さん!」
 というネタがあり、一人で大爆笑してしまいました。

 実際にはこの魏延は劉備に深く信頼された知友兼備の武将で、劉備の絶頂期に魏から要衝の漢中を奪った際には皆劉備の義弟の張飛が太守となるだろうと思っていたところ、なんと劉備はこの魏延を大抜擢してその地を守らせています。しかし実際の歴史でも諸葛亮が死んだ際に魏に裏切ろうとして処刑されたため、演義では徹底的に腕力はあるが短慮な武将、たとえるならミニ張飛とも言うべき役柄に不当にもされてしまっています。

 そして極めつけというべきか、私が現代日本三国志の一つのスタンダードとなっている横山光輝氏による漫画版三国志を友人に貸したところ最も多かった感想が、
「魏延、普通じゃんっ!」
 っていうものでした。
 というのも、近年一挙に三国志が広まるきっかけとなったゲームの「三国無双」シリーズで魏延は変な仮面を被って片言の言葉しかしゃべれない世にも奇妙なキャラクターにされてしまい、これから入った友人らはてっきり魏延は異民族などの出身者かと思っていたそうです。まぁ実際、初めて見た時に私もこれはひどいと思いました。「戦国無双」の上杉謙信は石原良純の顔にしか見えないし……。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 なるほど。そういうことだったのですか。僕も横山光輝氏の三国志はアニメで見たことあります。OPの「時の河」は歌詞も歴史ものに合わせてあって、いい曲だと思いました。

 戦国無双は少しやったことあります。
 謙信が石原良純ですか。顔だけなら似てる気もしますが性格はかなり違いますね。笑

花園祐 さんのコメント...

 逆に私は横山光輝氏のアニメ版三国志は見ていないんですよね。今の日本の三国志ファンの多くはそのアニメと、光栄のゲームと、あと宮下あきら氏原作の「天地を喰らう」から入ったといわれています。

 前にも書いたかもしれませんが、私が中国語を学びたいと思ったのはすべてこの三国志が原点です。最初は第二外国語の授業を取るだけ(それでも上級クラスを選んだが)でいいと思っていたのが、留学までしていっぱしの専門家になったことを思うにつけ、三国志は自分の人生を大きく方向付けたのだと思えます。