結局一度も入ったことはありませんでしたが、多分今もあるでしょうが京都の嵐山に「ピーピングトム」という名前の喫茶レストランが私がいた頃にはありました。この店の名前に私はなるほどと感心したのですが、このピーピングトムというのはベルギーの有名なチョコレートメーカーである「ゴディバ」が命名に使用したエピソードに出てくる名前で、わざわざそんなところからこんな名前を店に使うなんてなかなか洒落ていると思い、今でも折に触れて思い出したりします。
そのゴディバの名前の由来となったエピソードですが、真実かどうかまではわかっていないものの、昔イギリスのある地方の領主様がその地域の領民に重い税金をかけて苦しめていたのをみて、その領主の后のゴディバが税金を軽減するように領主に訴えたところ、「お前が裸で街中を馬で駆け巡ったら軽くしてやるよ」と、セクハラ親父さならがらの無茶な要求を出してきました。
ゴディバもさすがにこの無茶な要求にはしばらく頭を抱えて悩みましたが、領民のためを思い、ある日ついに決心をして本当に裸で馬に乗って街中に繰り出したのです。そんなゴディバの心境を領民も察し、ゴディバが街に繰り出すや家々の窓や戸を閉め、ゴディバを辱めないよう皆でその姿を見ないようにしたそうです。しかし仕立て屋のトムだけは好奇心に負けて隙間から覗いた所、この様子を見ていた神様が神罰としてトムの目を失明させたそうです。こうしたゴディバの決死の行動を受けて領主も税金を軽くしたそうなのですが、神様もトムの目を失明させるくらいなら始めから領主に神罰を与えりゃよかったのに……。
ここまで言えばわかると思いますが、一人だけ覗き見したトムを揶揄して「覗き見トム」こと、「ピーピングトム」という言葉が出来、日本語的には「覗き魔」とか「出場亀」「田代」といった意味で使われています。なかなか小憎らしいネーミングで件の嵐山の喫茶レストランには興味を持っていたのですが、結局行かずじまいで京都を去ってしまいました。
このエピソードの発祥地はイギリスのコヴェントリーという田舎町なのですが、実を言うとイギリスに旅行をした際に私はその町で一泊した事があり、町の真ん中にあるでかいゴディバ像が建っていたのを見ています。ピーピングトムという言葉も、そこで初めて知りました。
そんなわけでこのゴディバのエピソードにはそこそこ詳しい自信もあるのですが、この前ふとしたことから領主に諌言したのがゴディバではなく男の大臣とかだったらと妙な想像をしてみたのですが、そしたらやっぱり同じように「裸で走って来い」とか言われて、大の男が「うおー、俺の股間の下は暴れ馬っ!」とか言って町の中を疾駆したのでしょうかね。もしそうだとしても町の人たちも言われなくたってゴディバと同じように窓を閉めただろうな、これだと。
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