先日、私がこのブログで悉く毎日の記者をこき下ろす記事を読んだのか、「毎日の記者でもこんないい本書いてるぞ」と言って、友人がある本を紹介してきました。どうでもいいですがその友人は冷凍庫にいつも冷凍たこ焼きを常備しています。
上記の本は毎日新聞の米国支局などで働いていた方が日本以上に経営が大きく傾いている米国の新聞業界について丹念な取材をした上、現状と今後の展望についてまとめられた本です。一言で言って非常によく整った内容で、米国のジャーナリズムが今どんな状態にあるのか、またインターネットの普及によってかつてと比べて圧倒的に経営環境が悪化する中でジャーナリストたちはどのように時代へ対応しようとするのかがしっかり書かれてあり、毎日にもこんないい記者がいたのかと唸らせられました。
この本についてつきっきりで解説してもいいのですが、今回は敢えてこの本に書かれていて私が特に注目した点について紹介しようと思います。それはどんな点かというと、地方新聞が減少するにつれて地方議会選挙で現職議員が有利になるという米国の調査結果です。
最初にまずアメリカの新聞業界の現状について少しだけ触れますが、端的に言えばインターネットの普及に伴う新聞離れが日本の状況なんかよりもずっと深刻で、特にリーマンショックのあった2008年以降は全米で新聞社の経営が一気に傾き、新聞社で働く記者の五分の一が退職する羽目となっております。
こうした中、米国の新聞各社はこぞって、「何故市民は新聞を読まないのか」という理由を調査し、その上でネットとどのように連動して購読料を得るのかを必死で模索したり、安価で質の良い報道をどう行うか、他社とどのように連携すればベストなのかと様々な取り組みを行っています。日本でもこういう動きが全くないわけではありませんが米国と比べるとやはり鈍く、というのも日本の場合は新聞配達システムが異常なまでに完備されているため米国ほど新聞離れが急激ではなかったという事情が作用しています。
そのように米国の新聞業界、というよりメディア業界は激しく揺れ動いている最中なのですが、先ほどの新聞離れの原因を探る調査の中で一つ面白い結果が出ており、それが地方紙が減ることによって地方議会選挙で現職議員が有利になるという調査結果です。
米国は日本と比べると、というより日本の新聞業界だけが世界的にも珍しく朝日や読売といった全国紙のシェアが極端に高い国なのですが、米国にもワシントンポストなど全国紙はあるもののどちらかと言えば州や都市ごとに発行される地方紙を購読する層の方が多いです。ただ地方新聞社は全国紙の新聞社と比べると経営体力は弱く、リーマンショック以降は経費節約のため取材範囲を狭めたり、下手したら倒産するケースが増えており、発行される地方新聞の種類は減少傾向にあるそうです。
そうした中で起きている変化というのが、先ほどの地方議会の選挙結果です。一体何故地方新聞が減ることで選挙に影響が出るのかというと、地元の選挙について各立候補者の主張にまで掘り下げた取材をして報じる記事が減るからです。
地方紙がメインに扱うトピックは言うまでもなく地元のローカルニュースです。逆に全国紙は日本の全国紙よろしく、大都市ならともかく小さい地方自治体の議会選挙なんて細かく報じることはないでしょう。なので各立候補者の政治信条や政策案などを細かく報じる地方紙が減少すると有権者たちは地元の選挙戦の情報が得られないためか、自然と「前もやっていたんだし」とばかりに現職への投票行動を強め、新人議員が出辛くなっていくというのが今、米国で起こっているそうです。
この話を見てパッと思いついた言葉は、「日本は何年前からだ」という一言でした。日本にも地方紙はもちろんありますが米国ほど流通量は多くなく、大半の日本人が読むのは全国紙です。地方議会選挙について関心を持つ市民は大都市を除くと傍目から言ってそれほど多くないし、また地方紙を除くと立候補者についていちいち報じるメディアは皆無と言っていいでしょう。
日本はただでさえ地方紙を読む層が多くない上に、近年は地方新聞社の経営悪化によって取材の範囲も狭まっているとよく聞きます。つまり何が言いたいのかというと、日本の地方議会の混乱や腐敗は地方紙の衰退が大きく作用しているのではと言いたいわけです。
日本の地方議会の混乱に関しては昔から何度もこのブログで私も狂犬のように吠えてきましたが、去年の号泣議員みたいなカス議員の話は枚挙に暇がなく、なんでこんなのが受かるのかっていうとメディアの監視が機能せず世間もほとんど関心を持たないということに尽きるでしょう。そして一番監視を行うべき立場にある地方紙がこのところ元気がなく、米国の様に現職ばかり受かって新人地方議員が生まれてこないという悪循環が以前から続いているのではないかと私は考えます。
私は以前から日本の政治の混乱は政治家が育たない土壌に原因があり、それは国会というよりも政治経験を鍛えることのできる地方議会がきちんと機能していないせいだと分析してきました。今もこの考えは変わっていないのですが、地方議会の問題点や、逆に有望な新人をきちんと報じて有権者に伝えられるメディアがいないというのが案外、根本的な原因ではないかと思えてきました。
ではこれからの日本のために地方紙にはもっと頑張ってもらうしかないかと言えば、ちょっとこれには私は「うーん」と言ってしまいます。なんでかっていうと日本の地方紙最大手の「中日新聞」は逆恨みもありますが大嫌いだし、ほかにも具体名は挙げませんが大きい地方新聞社は大概にしろよと言いたくなるほど偏向的な報道が見られます。田中康夫の時は酷かったし。
一番期待したいのは米国流ですがNPOで、地方議会の現状は選挙において有権者へ適切に情報を送るような組織が育ってもらいたいというのが一番の希望です。私自身がそういうNPO作りたかったのもありますが、さすがにもうこれ以上は運命に翻弄されたくないしなぁ。
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