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2015年6月8日月曜日

プライベートブランドで得するのは誰か?

 先日書いた「安けりゃいいってもんじゃないプライベートブランド」の記事で、友人からコメントで下記のような質問を受けました。質問主に対してはその後でスカイプで連絡を取り既に回答をしましたが、折角だからブログ上でもこの問いに対する私の回答を下記に記します。

<質問内容>
 「値切ってナンボな世界の方が消費者はどんどん賢くなろうとして良いのでは?」と思うと同時に「でもそうなると買い物もギスギスしながら、腹さぐりあいながらで神経削れるなぁ」とも思います。花園さんとしてはどちらの購入方式が主流の方が社会的に大きい利益になると考えられますかね?

<回答内容>
 結論から言えば消費者が賢くなって商品の価格と品質にシビアになれば小売り側としても対応せざるを得なくなり、「価格に対する品質」は確実に向上していくでしょう。ただ消費者の要求が異常に高く、たとえば商品やサービスの質がいいにもかかわらずさらに価格を下げるような要求が続くとサービスの供給側は疲弊することとなり、結果的には上記の価格に対する品質は悪化することとなるでしょう。
つまりいい消費市場は品質に対し相応の代価を支払う消費者と、代価に対し相応の品質を提供する供給者の二者が揃って初めて成立すると言えます。そういう意味では消費者も供給者も互いに賢くなることが求められるわけですが、実際の商取引上は供給側の方が有利というか消費者をだましやすい立場にあるため、消費者を保護するような法体系が必要だと私は考えます。

 と、上記のような回答をした後、追加で下記のような新たな質問を受けました。

<質問内容 その二>
 プライベートブランドによって商品を生産するメーカーのメリットは大きいのでしょうか?

<回答内容 その二>
 恐らく、メーカー側としては本音ではプライベートブランドなんてやりたくないのではないかと思える。

 実はこのトピックは最初の記事でも書こうと思っていた内容でしたが、最初の記事ではかなり文章が長くなってしまったためやむなく省略していた内容だっただけに、この質問が来て内心うれしい思いがしました。そもそもの話をするとこのプライベートブランド関連の記事ネタは冷凍たこ焼きが好きな友人との会話をまとめたもので、その際に一番盛り上がったのもこのメーカー側の影響話でした。

 そんなわけで解説に移りますが、プライベートブランドとは販売業者、たとえば「セブンプレミアム」で言えば販売を行うセブン&アイ・ホールディングスが企画・開発し、食品メーカーなどに生産してもらう商品を指します。この販売手法の各方面に対するメリットとデメリットは前回記事でまとめましたが、販売側のメリットとしては自社の開発製品として売り出せるため粗利率の上昇、並びにブランドイメージの向上があり、メーカー側としては工場稼働率の上昇、自社ブランド(=ナショナルブランド)製品を売り出す下地作りが出来ると挙げられています。

 しかし実際には、こう言ってはなんですがメーカー側にはほとんどメリットがないというのが実態のようです。一つ例を出すと、味塩コショウを作っているある食品メーカーが小売業者からプライベートブランドの企画を持ちだされ、その話に乗るとします。小売業者と一緒に開発するとはいえ変わるのはパッケージ程度なもので、味塩コショウの中身自体は従来品とほぼ全く変わることはありません。ですがプライベートブランド化に伴って商品の卸値は引き下げられるので、メーカー側としては味塩コショウの粗利率は下がってしまいます。
 さらにそうして開発された味塩コショウは、持ちかけてきた小売業者のブランドで売られるため、他の小売業者に対して並行販売することが出来なくなります。契約した小売業者がある程度まとまった量で購入し続けてくれるとはいえ商品の横展開はできなくなるため、メーカー側としては決して面白くないでしょう。

 ではここで疑問ですが、粗利率は下がるし横展開も出来なくなるなど一見するとデメリットの方が多いように見えるのにどうしてメーカーはプライベートブランドの企画に乗っかるのでしょうか?これは私と友人の推論ですがメーカー側としては、本音ではやりたくないものの小売業者に圧迫かけられて無理矢理やらされているというのが実情のように見えます。
 実際にイトーヨーカドーやイオンの売り場を見ているとプライベートブランド商品がずらっと並んでいる棚には通常のメーカーブランド商品がないことが多いです。つまりプライベートブランドに協力しないと売り場から商品が締め出されるため、やむなくデメリットを覚悟でメーカーは作ってるのではないかと思えます。さっきの味塩コショウなんかそれで、前から気に入っているダイショーのが買えなかったし。

 実際、こういうことがまかり通るほど現代社会では小売企業のイニシアチブがどこの業界でも強いです。別にこうしたやり方を否定するつもりはないしひどいやり方だとは思いますが、メーカーとしては何らかの形でナショナルブランドを確立させないと今後どんどん埋没していく可能性があります。対抗手段としては同じメーカー同士で何かしら連合を組むとか、大手の小売業者に対抗するため第三極となるような企業を応援するとかやった方が良いのではと個人的に思います。

 なお小売業者がサプライチェーンの中でメーカーの力を上回るように至る、一つ大きなきっかけとなる事件が過去にありました。ちょうど頃合いだし前から準備もしていたので、次は私がそのきっかけとみなしている松下・ダイエー戦争についてでも書いてみましょう。

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