昨年に私は「大津の欠陥マンション訴訟について」という記事で「大津京ステーションプレイス」というマンションで起きている施工不良問題を紹介しました。なんでこんな記事を書いたのかという単純にニュースとして面白いと思ったためでしたが、アップ当初から一方の当事者である不動産会社の大覚さんにも閲覧されていたとのことで書いた本人が一番びっくりする羽目となりました。
ただこの事件、はっきり言って誰の目からみても施工会社である南海辰村建設による瑕疵が明らかであるものの、問題発覚後から数年経過しているにも拘らず現在も補償を巡って裁判が続くなど長期化しています。何もこの件に限らずとも欠陥住宅に関する裁判は長期化する傾向があり、安保も大事だけど案外こっち方面の法整備も必要なんじゃないかと、我ならがら突然すぎる気もしますが、一昨日ふと思いつきました。
<欠陥住宅の裁判>
欠陥住宅で裁判となると、発注、または購入した側は施工の際に瑕疵があったことを証明しなければなりません。この瑕疵不良の証明というのが非常に困難な作業で、簡単に述べると設計図と実際の図面がどう違うのか、それらが本当に不良状態のままで施工されたのかなどを裁判長に説明しなくてはならず、素人ではどうにもならないほど専門的な作業です。
たとえば私も取り上げた「大津京ステーションプレイス」の問題では原告は不動産会社、被告は施工会社で、まだお互い同じマンション業界の法人同士での対立構図となっております。しかしこの対立構図が住人VS販売・施工会社だった場合、住人側は欠陥があるとわかっている住宅に住み続けながら専門家を雇って裁判を続けなければなりません。欠陥があるとわかった段階で施工会社などが素直に修繕に動いてくれればいいのですが、反論されて裁判となってしまったらもう大変で、恐らく泣き寝入りする住人も少なくない気がします。
<松居一代の闘争劇>
個人が実際に欠陥住宅問題で裁判を闘った一例として、芸能人の松居一代氏の例があります。お掃除おばさんで有名なこの人ですが、購入した億ションで天井から水漏れがあるという欠陥が発覚したものの施工した清水建設(シミケン)はすぐには対応してくれなかったそうで、実に600日もの闘争を経て和解へ至った経緯を「欠陥マンション、わが闘争日記―ゼネコンに勝った!壮絶600日の全記録」という本にまとめています。
実際に裁判を戦った松居氏の行動力もさることながら、和解に至るまで600日もかかったという事実は見逃せません。しかもこれは当時ワイドショーなどにも取り上げられるなど主に清水建設に対する周囲への影響、そして裁判を闘えるだけの資産を松居氏が持っていたからこそ和解へ至ったのであって、どちらか一つでも欠けていたら果たしてどうなっていたのか、はっきり言えば清水建設は黙殺してたのではないかという気がしてなりません。
<大手だろうと欠陥はあり>
なお「大手だから安心!」という言葉を日本人はよく使いますが、こと建設業界に関しては全く当てはまらないと言っていいでしょう。ちょっと前にも三菱地所と鹿島建設のタッグが南青山で欠陥億ション作っていたのが2ちゃんねるへのタレコミでばれたし、住友不動産も2003年に作ったマンションで販売直後から施工不良が住人などから指摘されていたにもかかわらず黙殺し、11年後の去年になって言い訳できなくなってようやく認めるに至っています。多分これらは氷山の一角で、まだ公になっていない事例はたくさんあるだろうし、「大手だから」黙殺されている例もたくさんあるでしょう。
<瑕疵検査などにかかる費用>
・日本検査研究所
上記サイトはこうした欠陥住宅の検査を専門とする設計事務所のサイトで、ここに瑕疵検査から裁判での鑑定資料を作成する費用をオープンにして公開しています。こうした価格をオープンされるという点で高く評価できるサイトですが、やはり値段を見るとそこそこ値が張るというか、裁判となった場合に個人が負担するとなるときついなぁと思う金額が出ています。
無論この事務所がぼったくってるわけではなく技術的にも手間的にもそれぐらいかかってしまうから問題なのですが、やはり個人がこの手の訴訟で戦うとなるとお財布的には厳しいでしょう。
<欠陥住宅に対する法整備>
ここからが私の提案になりますが、個人では泣き寝入りするしかないような状況を鑑みて、こうした欠陥住宅問題を解決へと至らせる法整備、制度の作成が必要なのではないかと思います。具体的に述べると施工不良と判断する条件例(水漏れや設計違い、構造不良)を作り、その条件を満たした場合は即、販売、または施工会社の責任を認めて修繕義務を課すといった制度です。またその際、修繕が完了するまで住人には代替の住宅を用意させることも義務付けるなど、販売・施工側の社会的責任を重くさせることによって欠陥住宅の建築を未然に防ぐことが目的となります。
このような制度を導入することで訴訟を起こさずとも即修繕を行わせられるようになり、また責任の重大化によって販売・施工側もおちおち手抜きがしづらくなります。正直、今の状態だと手抜き出来るところを手抜きした方が施工側にとってメリットが大きすぎるし。
このほかにも欠陥住宅問題を専門とする仲裁機関を政府が作り、またこの方面専門の弁護士や建築士を育成するコースなども作って訴訟を迅速化するというのも一つの手でしょう。ただこれに関しては友人が、「お金になるとわかったら過払い金訴訟同様に、弁護士たちは勝手に勉強するだろう」という市場原理を唱えており、こうした訴訟を一般化させるだけで十分との認識を示しました。
私個人は住宅を買う予定なんて今現在全くなく、それどころかほぼ一年に一回のペースで引越しを繰り返すなど織田信長みたいに腰の定まらない生活が続いていますが、やはりこの欠陥住宅問題は他人事にはみれないというか、非常に高額な支払いが発生するだけに何らかの社会的な対応が必要ではないかと見ていて感じます。
なお先程紹介した日本検査研究所のサイトでは積水ハウス、大和ハウス、へーベルハウス、トヨタホーム、パナホームの大手ハウスメーカー5社、三菱地所、住友不動産、三井不動産の財閥系3社を名指しで批判しており、見ていて「言うねぇ」という言葉が漏れ出てきます。逆を言えば上から下までもれなく欠陥が含まれているのが現状だと言え、案外この点で日本は中国を笑えんなと個人的に思う次第です。
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