・プライベートブランド(Wikipedia)
プライベートブランドとは主に小売企業が主体となって行われる、自社で商品を企画・開発してメーカーに生産委託し、自社のブランドで販売するという手法を指します。このプライベートブランドという販売手法によってどのような効果が得られるのかですが、上記リンク先のウィキペディアに各方面のメリットとデメリットがきれいにまとめられているので、そこから引用いたします。
<メリット>
消費者側
・ナショナルブランドとほぼ同品質の製品を、より安価に購入できる。
・ナショナルブランドにはない高品質・付加価値のある製品を購入できる。
販売側
・商品の仕様を容易に変更できるため、小売店・消費者の声を直接反映した商品を販売できる。
・宣伝・営業費用や卸売り業者は不要であるため、ナショナルブランド商品よりも粗利益率が5 - 10ポイント程度高く、販売価格を自由に設定できる。
・原材料・製造方法・仕様を指定することで、商品にオリジナリティのある付加価値をつけることができ、企業・ブランドイメージの向上を計ることができる。
メーカー側
・一定量の販売が確約されることにより、閑散期でも工場稼働率を上げて効率よく生産できるため、コスト削減が可能となる。
・売上を安定させることでメーカーの経営が安定する。
・ナショナルブランドの開発・売込みの土壌を作ることができる。
<デメリット>
消費者側
・ナショナルブランドと同じように見えても原材料や配合比率・加工方法・内容量を変えている場合があり、風味・食感に影響を及ぼしたり、品質が価格相応もしくは割高になる場合もある。
・販売店はプライベートブランド商品を優先して取り扱うためにナショナルブランド商品の取り扱いが削減され、商品の選択の幅が狭められる場合がある。
・当初からナショナルブランドより低価格の商品が多いため、特売商品となりにくい(賞味期限の近い食品などの割引を除く)。
・大半の商品で製造者が記載されていないため、消費者から製造者への意見を直接伝えるのが難しい。
販売側
・全量買い取りであるため売れ残りが出ても返品できず、他社に転売することもできない。また追加生産のタイミングを誤ると長期間品切れになってしまうので、常に在庫リスクが発生する。
・食中毒や異物混入などの事故が発生した場合、製造者に代ってクレーム対応などの責任を負わなければならない。また生産終了後のアフターサービスも行わなければならない。
メーカー側
・並行して生産しているナショナルブランド商品の売り上げが減少することがある。
・商品によっては粗利益率がナショナルブランドよりも10ポイント程度低くなることがある。
・販売側の指摘する規格と誤差が生じた場合、商品の受け取り拒否をされることがある。とくに食品の場合は転売はおろか中身の詰め替えもできず、大量の在庫を抱えたり、そのまま処分しなければならず、本来回収できるはずの費用が入ってこないため、資金繰りが苦しくなる。
・受託生産の依存度が高くなるとナショナルブランドの開発力・営業力が低下し、工場の稼働率が発注元の発注量に左右される。
上記の列記された内容は非常によくまとまっており、この内容を覚えればプライベートブランドに関しては物知り博士と名乗ってもいいくらいです。ただもうこれ以上私から書くことはないと言えばそれまでとなっちゃうので、昨今のプライベートブランドの状況について続いて書いてきます。
まず結論から言うと、プライベートブランドで最も成功しているのは間違いなくセブンイレブン、イトーヨーカドーで展開される「セブンプレミアム」と言っていいでしょう。このセブンプレミアムは消費者にも大分浸透しているように思え、またその品質と価格が幅広い層に評価されて商品幅も年々拡大しているように見えます。実際に私も日本にいた頃にセブンプレミアムの商品を買って試してたりしましたが、商品によってはナショナルブランド商品よりも割高なものもありながら品質に関しては文句がなく、値段を考えれば割に合うかと思えました。
ただこのセブンプレミアムで一番重要な点は、品質や価格がいいから売れているというよりも、ナショナルブランドを完全に締めだしているから売れているという点もあるのではないかという気がします。これも私の体験ですが、ステーキ焼くのに味塩コショウを捜したらセブンプレミアム品しか置いてなく、いつも買っていたダイショーの商品が置いてなかったのでやむなく前者を購入しました。味塩コショウに限らなくてもセブンプレミアムにはこういうことが多く、不満はないのですけど選択肢が狭まっているような印象を覚えます。
そのセブン&アイホールディングスのライバルと言ってもいいイオングループでは「トップバリュ」というプライベートブランドを展開していますが、失敗とまでは言わないまでもライバルには大分差をつけられているように思えます。価格面は確かに安価な製品が多いですが品質に対しては私の周りでは評価は高くなく、私自身も正直に言えば「安かろう悪かろう」という印象を持っています。
さらに近年では2013年にイオンに米を卸していた三瀧商事が国産米として中国産米を偽装して販売していたことが明るみになり、これの煽りを食ってかトップバリュの製品も産地表示などで大きく疑念を持たれるようになったのも追い打ちをかけています。しかも事件が本格的に明るみになる前に週刊文春が産地偽装米がイオンの弁当などに使われていることを報じた際はイオンは事実を否定した上、文春を売り場から撤去するとともに損害賠償請求を起こしており、こう言ってはなんですが事実隠蔽と見られかねないまずい対応を取ってしまっております。
・イオン、店頭から週刊文春撤去 コメ卸の偽装めぐり(日経新聞)
あくまで個人的な意見ですが、この時のまずい対応を消費者はやっぱり覚えているように見えます。そのためトップバリュに対しては「安かろう悪かろう中国産だろう」のイメージが強く、このイメージを解き放つのは並大抵ではないでしょう。またプライベートブランドは文字通りその小売企業の看板を背負った商品であり、商品イメージの悪化がそのまま企業イメージにも大きなダメージを与えることにもなりません。
実際に過去、プライベートブランドのイメージが悪くて販売する小売企業のイメージまで大きく悪化させた例があります。それは何かというと、かつての小売王者であるダイエーの「セービング」というプライベートブランドです。
私が子供だった頃、ダイエーでこのセービングのコーラが1本50円くらいで売っているのを見て、「すげーコーラが半額だ!」と驚きながら親にねだって買ってもらって飲んだところ、あまりの不味さに全部飲み切れずに捨ててしまったという苦い思い出があります。コーラに限らずセービングの商品はどれも価格は極端に安かったものの品質が悪く、アナリストなどからも消費者のダイエー離れを加速させる一因になったとも指摘されています。
私の中でもあの不味いコーラのイメージは強烈で、二度とセービングと名のついた商品は買うものかと北斗七星に誓ったほどでした。でもってダイエーに足を運ぶことも減ったわけですが、ダイエーのその後の顛末は歴史の通りです。
何が言いたいのかというと、プライベートブランドは企業の看板を大きく背負っているだけに品質が悪いと会社そのもののイメージも大きく悪化するという傾向があるのではということです。そのためいくら商品を売るため品質を落として価格を下げるやり方は逆効果で、そういう意味では多少割高であっても高い品質を維持した方がブランドイメージは守れるのではと思います。
そう考えるとセブンプレミアムの路線はなかなか理に適っており、今後もスタンダードの位置を維持していくんじゃないかと私は見ています。
おまけ
マッドシティの潜伏地ではヨーカドーが近かったのでよくここで買い物してましたが、あの店舗は売り場の配置が変な形になってほしい商品がなかなか見つからないことが多かったです。一番苦労したのは100円の羊羹探しだったっけな。
4 件のコメント:
>>プライベートブランドは企業の看板を大きく背負っているだけに品質が悪いと会社そのもののイメージも大きく悪化するという傾向があるのでは
これは逆に言えば品質が良いと会社のイメージもよくなる…とも見れますね。案外これこそが販売側にとって最大のメリットであり、デメリットでもあると言えるかもしれません。
新庄剛志氏の著作「ドリーミングベイビー」に於いて似たようなことが書いてあったと記憶しています。確か「一回おしゃれだというイメージさえついてしまえば安物を着てもおしゃれしてると思われる」みたいな感じだったはずです。この部分を読んだときに氏は非常にシャープな頭脳をしているなと思ったものです。
ここから考えるにイメージ戦略というのは販売側にとって重要です。ただそれと同時に消費者もイメージだけにとらわれずにきっちりとモノをよく見て判断できる冷静さが必要になってくるでしょう。そうしなければ「悪くて高いモノ」を買わされるハメになることもありえますから。
こういったことを考えると
「値切ってナンボな世界の方が消費者はどんどん賢くなろうとして良いのでは?」と思うと同時に
「でもそうなると買い物もギスギスしながら、腹さぐりあいながらで神経削れるなぁ」とも思います。
花園さんとしてはどちらの購入方式が主流の方が社会的に大きい利益になると考えられますかね?
是非ご意見を伺いたいです。
長いデフレ不況の影響からか、昔と比べてどの企業もイメージ戦略が鈍くなっている印象を覚えます。このプライベートブランドも消費者が持つイメージに大きく影響を与えるというのに、安易に「安かろう悪かろう」で商品を作ってしまう業者がいるなど、ちょっとそれはやめた方が良いという指摘をする意味でも書いてみました。
でもって最後のキラーパス的な質問ですが、これはまたじっくり考えて別の記事で回答します。大まかな回答イメージはもう出来てるけどね。
普段食品については全くこだわらない人間としては非常に耳の痛い話です。まさに僕は「安かろう悪かろう」を良しとしてプライベートブランドの食品を買っています。お金がない人間にとっては助かる商品なのですが、今回の記事を読んで一消費者として少し考えを新ためねばならないと感じました。
自分も学生時代は毎日、満腹になるまで食べられたらどれだけいいかをずっと考えながら生活していて質よりも量で食事を考えていました。100円の菓子も、ボリュームの多寡でいつもビスケットを選んでたし。
ただほんのちょっと値段を上乗せすると物の品質っていうのは変わります。そうした消費者の姿勢を受けて小売りも売り方を考えてくるでしょうし、いい消費者でありいい供給者が揃ってこそいい循環が生まれると考えこういう記事もたまには書いてみました。
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