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2019年1月4日金曜日

何故誤った報道が信じ続けられるのか

 先日広州を旅行した際に現地であった友人に、「日本人は中国で電子決済が普及している背景は、中国は偽札が多いからっていう理由を信じてるよ」と伝えたところ、「単純に便利だからなのにね」と鼻で笑われながら返事されました。
 断言してもいいですが、「偽札が多いから」という理由で電子決済を使っている、若しくは使い始めたという中国人は業者側はともかく消費者側にはほぼいません。少なくとも私の身の回りでそのような理由を口にする人間はおらず、しかも日本での報道内容を伝えると決まって上記のように「なにそれ?(^ω^)」って感じな反応されるのがオチです。そうした前提でいうならば、先ほどの日本の報道はほとんどデマと言っても差し支えないレベルだと私は考えています。

 しかし、未だに電子決済関連の報道や掲示板を眺めると、未だに先ほどの偽札関連の理由が取り沙汰されています。明らかに事実と異なった内容にもかかわらず未だにこうした見方が浸透している背景としては、以前このブログでも指摘した通りに、「そうであってほしい」という日本側の願望があるからだと思いますがそれとともに、この内容が間違いだというカウンターメディア的な報道が少ないせいだと思われます。

 今言及したカウンターメディア、誤報に対して誤報を指摘するメディアというものは海外報道において、国内報道と比べるとやはり不足しがちです。このほかにも例を挙げると前回大統領選における「ヒラリー圧勝」も、現地の米国人の草の根の声を完全に無視した誤報でありましたが、このおかしさをきちんと指摘したのは私が見た限り元アナウンサーのコラムニストだけでした(ヒラリーは米国人女性からめちゃ嫌われてるという内容)。
 私が言うまでもなく、海外報道というのはそのニュースを受ける読者とは程遠い世界で、自らその報道内容が正しいかどうかを確認する術はありません。またメディアの中でも、実際に現地で情報を発信する人間は限られ、また国民感情もあって煽り系の内容の方が受けやすいということもあってか、報道内容の誤りを指摘するどころか誤った内容に乗っかろうとする、それどころかより大げさにしようとするメディアすら見受けられます。

 こうした海外報道の現状については新聞記者時代から私と当時の上司は苦々しく思っており、例えば中国のGDP成長率も高ければ、「バブルで危険だ」と言われ、下がると「成長鈍化で危険だ」と言われ、どう転んでも批判的にしか書かれずバイアスのかかった報道しかされません。おまけに前向きな統計指標が出ると「統計が操作されている」と否定され、後ろ向きな統計指標が出ると「それみたことか崩壊が始まった」と鵜呑みに信じられ、実際に私が報じた内容についてもそういうこと書いてる人がいて、「じゃあ何見せれば納得すんのあんたさ?」とはっきり言ったこともあります。
 っていうかこういう人に限ってデータの発行元を見ていなかったりするので、少し前の記事で敢えて民間不動産会社の取引価格データを引用したら、「中国は統計が操作されている」という声が案の定出てきました。民間も操作できるのかっていう点と、外資系企業のデータならどうすんのかっていう風に落とし穴とかたまに用意したりしていますが、否定するならするなりで操作されている根拠とか出せよと(同類指標との差異など)この頃ガチで言いたくなってきました。

 話は戻りますが、そうした現状をよく見ているだけにJBpressでの話が来たときは「そりゃ俺のような人間が求められるだろう」と素直に思いました。海外報道を現地で書くのと東京で書くのとでは全く意味が異なるだけに、多少負担がでかくても自分がこういう仕事をしなければ日本の海外報道は落ちるだけ落ちるとみており、現実に今実際に私がこの分野で支える立場にあるという自覚があります。

 もっとも自分がカウンターメディアを気取って他社の誤報を、ブログでならともかく、いちいち指摘して批判しても意味がないとは思って控えています。理由としてはそんなことしても大半の日本人は私の主張よりバイアスのかかった報道の方を信じやすいし、またいちいちそういう批判に構ってられないという事情があります。
 それであればまだ自分が直接見たり聞いたり調べた内容をきちんと報じて、それでアクセスを稼ぐことによって、自分なりに根拠のある報道で力を見せつけることがこの方面の質の向上につながるという風に考えて活動しています。この辺は友人が良く評価してくれているのか、日本の報道に「それは違うよ」的な記事を出す際は、「特定の団体や個人を批判してないのがいい」と毎回言います。ケンカしてもいいけど、ケンカに費やすエネルギーがもったいないというのも本音ですが。

 無論、自分も誤った報道をしていないのかという懸念は常にあります。それだけに自分も気を付けなくてはいけないのですが、これだけネットが発達した時代でも冒頭のような誤った認識が広がるというのは、なかなか難しい時代だなと感じます。

2 件のコメント:

潮風太子 さんのコメント...

3.あけましておめでとうございます。
入ってなかったようなので改めましてm(__)m
最近の日本での中国ネタというと、
日本では考えられないような事故や事件を、
防犯カメラやらドライブレコーダーの映像を中心に、
面白可笑しく報道するというのが定番となっていて、
その背景には、どこか中国をある意味蔑んでみることで、
変な留飲を下げているような感があり、
さすがの中道右派の私でも「ちょっと待てよ~?」ってな、
カンジのときが多々あります。
今の中国人はまったく現金を持たなくなったとか、
例の709事件に関しても、
いきなり人権派弁護士たちが理由もなくある日突然、
逮捕され長期間にわたり拘留されているという報道だったりで、
元々の理由などは一切報道されていなかったりなど、
こういうこっていいのかいな?と、
思っているところに花園さんの地べた目線のリアルタイムな、
ネタを拝読するにつけ、
非常に貴重な中立中道の見方を確認させていただいております。
排気ガスやらPM25やらで過酷な状況かと思いますが、
今後とも「真実ネタ」を楽しく拝読させていただきますので、
真実のリポートの方、宜しくお願い申し上げ、
新年のご挨拶とさせていただきます。
今年も宜しくお付き合いのほど(^^)

花園祐 さんのコメント...

 こちらこそあけましておめでとうございます。
 自分の視点も完全にバイアスがないかと言ったらそうでもないですが、少なくとも日本での報道に比べればまだリアルな中国の実態を伝えているとは思います。やはり先日もちょっと記事を意図せずに無断転載していた人とのやり取りでも、「拘留されたりするかもしれないから日本に帰られては?」とリアルで言われました。要人でもないのにそんなしょっちゅう拘留されるなんてことは実際にはないのですが、普通にこう思うような報道が日本でされているのだなと再確認しました。
 まぁ違法カジノで捕まって、リアルに「マジで臭い飯だった」と言っていた人は普通に周りにいますが。