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2020年5月14日木曜日

手段の数が勝敗を決める

 最近仕事で使う知識の解説本を読んでいますが読んでてよく思うのは、「こいつ説明下手だな」っていう感想です。割と専門知識を取り扱う本なのでわかりづらいのも仕方ないですが、そうした理由以上に私がこのように感じるのは、私自身が異常なくらい解説や説明が得意だという事情があるかと考えています。

 やや調子に乗った見方ですが、こと解説方面の文章を書かせたら私の右に出る日本人はほとんどいないと思います。自分でもそう思うくらい解説や説明文章を書くのが得意だと自認しており、この方面では未だに新たな表現技法を開発、試みたり、また過去に事情関係が複雑な歴史事実を記事化した際に「内容がわかりやすい」というコメントを得たことから、そこそこ自信を付けました。
 そうした理由もありますが、私自身が一番自分の解説文章に自信をつける理由としては、他の解説文章を読んでてどこをどう直せばもっとわかりやすくなるのかが一見してわかるようになったということの方が大きいです。単語の位置関係、説明の順番、用語tipsの配置を初め、一読してその説明文章がどうしてわかりづらいと感じるのかという理由や改善点が意図せずともすぐ見つけ出すようになっており、自分の説明技法が優れているとよく実感します。

 偉そうな言い方を続けましたが話を真面目な方向に戻すと、ではわかりやすい文章を書くにはどうすればいいのかという問いについて答えるとしたら、単純に文章で説明するテクニックをどれだけ持つかが一番大きく左右すると思います。きちんと自分自身で認識しているか否かに係らず、説明内容に合わせて適切な表現技法を選べるか、また選べる以前に適切な表現技法を持ってるかは、この方面で差をつける要素だと考えます。

 いくつか具体例を挙げると、例えば以下の文章を見てどうすればよくなるのか考えてみましょう。

「A社の自動車販売台数は今年78.9万台で、2018年に比べて45%増加しました。またB社の自動車販売台数は55.4万台で、2018年比で25%減少しています。市場シェアはA社が1.3%、B社が1.1%です」

 中国語の自動車業界経済記事によく出てくるようなテキストですが、原文がこのように描かれてあると、翻訳ライターはよくそのままの文章でこんな風に書いてしまいます。まぁ見ての通り、悪い例なのですが。

 修正箇所のポイントを挙げると、文章というのは短ければ短いほどいいのが大前提ですが、短過ぎてわからないと評価はゼロとなります。ではわかりやすく書くためなら長い方がいいのかというと、まぁその通りですが、それでも短くできるのには越したことはありません。
 上記文章の場合、同じ単語が何度も出てくるのがポイントです。その上で、中国語だとあまり使われず、案外日本語ならではの表現技法である括弧書きを私なら用います。そんな具合で修正するとしたら、

「2019年における各社の自動車販売台数とその市場シェアは、A社は前年比45%増の78.9万台(市場シェア1.3%)、B社は同25%減の55.4万台(市場シェア1.1%)でした」

 単語に関してはイメージしやすいように「今年→2019年」、「2018年→前年」とした上で、年次比較においては最初に「前年比」を出した後は「同~%」と省略しています。今回出てくるのは2社だけですが、これが5社くらいあるとこの省略が非常に生きてきます。
 また市場シェアの数字は括弧書きにして販売台数と一緒に並べていますが、仮に前年比増減がなければ「市場シェア○○%」とはせず「市場シェア」という単語も取っ払って「○○%」だけにしているでしょう。この手の数字は変に文章を切り分けず、対応する数字の近くに並べるが良です。

 上記の表現技法は経済記者時代に学んだものですが、経済記事の場合はとにもかくにも属性の異なる数字がたくさん出てくるため、如何にわかりやすく、直感的に並べるかに非常に特化しています。もっとも括弧書きは割と自分で開発したものが多いですが。

 今回こうしてわかりやすく説明する表現技法を少し紹介しましたが、こうした技法をどれだけ持っているか、またいざ実際に文章を書くときにパッと出てくるかが、表現者としての実力が分かれるところになります。こうしたことを考えると、文章にも限らないと思いますが武器となる手段をどれだけ持っているかがどの分野でもやはり実力を分けるところになるのではないかと思います。ドラテクで言ったら、四輪ドリフトだけじゃなく、溝落としとかブラインドアタックも持ってる的な意味で。

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