ページ

2008年7月12日土曜日

元受刑者への就農支援について

 昨日の朝日新聞の夕刊一面に、「元受刑者を就農支援」という記事が載っていました。記事の内容は法務、厚生労働、農林水産の三省が共同で、刑務所を出所したものの生活を安定させることのできない元受刑者に対して就農支援、つまり農作業で生計を立てさせるよう支援していくという方針が報じられていました。結論から言うと、この方針に私は非常に期待しています。

 というのも、すでにかれこれ四年間も言い続けていますが、今の日本にとって最も対策が必要とされているのが農業対策だと思っているからです。すでに二十年前から日本の農業は「さんちゃん農業」といって、母ちゃん、じいちゃん、ばあちゃんの三者によって支えられていると言われていましたが、その後も若者の就農者はほとんど現れず、そのままスライド状に最初の三者の年齢が二十上がったのが今の状態です。その結果はいうまでもなく、今の日本の農業の大半、確か八割がたの農作業者は六十歳以上の高齢者によって占められていると言われています。

 この前にみたテレビ討論番組でも、日本の農業は今後五年以内に何か対策をとらないと、完膚なきまでに崩壊するとコメンテーターが言っていましたが、まさにその通りでしょう。かといって、若者に今すぐ農業をやれというのも無理な話です。というのも、海外からの安い農産物の輸入によって作物の市場価格はデフレの影響もあり、ありえないくらい低いのが現状です。自給自足で生活していく分には何とかなるものの、将来の子供の学費やの家族の生活費を考えると、とても農業で生計なんて立てやしません。また農業を始めようとしても、肝心の耕作地が家族が農業をしていない場合では持っていません。新たに入手するとしても、入手するのにかかる借金が重くのしかかり、それに圧迫されて自分の生活費すら稼げなくなる可能性があります。

 とはいえ、各地の農村では後継者不足に悩んでいるとよく聞きます。日本人は土地に強い執着があるので、「後継者いないなら若者に分けてあげて」とはとてもできないと思いますし、政府が買い上げて安く新規就農者に売り払うというかつてのGHQのようなやり方も、今の財政状況では難しいでしょう。
 では、この連立方程式を解くにはどんな方策があるか。私が宇沢弘文氏の「社会的共通資本」という本を読んだ後に考えた方策は、ずばり「小作農の復活」です。

 この小作農という言葉の説明からすると、土地を人から借りて地代を払う代わりに農業を行う農民のことで、社会主義国ではよく「農奴」という言葉を使って、連中の解放を主是に掲げています。もっとも、中国は逆にどんどん農民を追い込んでるけど。
 私の考えはこうです。土地を買う金もないし、農業のやり方はわからない。そんな人間をどう農業に向かわせるかとしてやはりまず最初に必要なのは農作業指導でしょう。それこそ、各農村で現在の農業従事者の協力を得て、彼らの余っている土地(これは実際にたくさんあると聞きます)を借りさせて農業を行わせます。そしてある程度定着が見られるようであれば、五年の作業継続をひとつの区切りとして、確かに財政は厳しいですが、土地をその新規就農者に安く国が引き払わせます。それも無理だったら、この際そのまま小作農でもかまいません。引き払う場合なら、その後十年間はその土地の農業用以外の転売は禁じます。

 このようにして、まずは農業という職業訓練を今すぐにでも始める必要があると私は感じています。そしてその代わりに、最低限の生活保障、それこそ衣食住は完全に国が補償します。人によってはそれじゃばら撒き財政ではないかと言われますが、そこまでしなければならないほど日本の農業は追い詰めまれれいると私は感じるからこそ、この方策を推進します。折しも世界で食料価格が高騰する昨今の世の中、自国で自国民の食料をまかなわずして何の国家でしょうか。
 論語にも曰く、
「徳、兵、食、どうしても外さねばならぬとしたら、何から外しますか?」(弟子)
「まずは兵、そして食。徳は何よりも国家を運営するのに必要な条件なり」(孔子) 
 言っちゃ何ですが、この際この孔子の言葉どおりに、日本は軍事費を削ってでも農業支援に向かわせるべきではないでしょうか。もしくは古くは曹操、諸葛亮が採った政策のように、軍隊に農作業を行わせる「屯田」もありかと思います。やけに中国の話が続くな。

 ちなみにもしこの生活保障を行ってくれるならば、私は真っ先にでも農業を行うつもりです。これまで食に困ったことがなかったのは日本のお百姓さんのおかげですし、その役目を次代へつなぐのならば存分にこの身をささげるつもりです。もっとも、一時貧乏したときに、空腹で夜眠れない日々を送ったことはありますが。

 最期にこの方策は現在民主党が主張している方策に近いものがあります。与党からはばら撒き財政だ、財源の目途がないなど批判され、実質その批判どおりだと私も思います。しかし選挙にこの農業問題を取り上げただけでも、前回の参議院選挙で私は民主党を評価しました。まぁ党としてはずっと大嫌いなままだけど。

  追記
 今月の文芸春秋においてノーベル賞経済学者のスティグリッツ氏が、日本の農業支援は生活支援に相当する最低保障で、実行に臆する必要はないと理解を示しています。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 農業支援がそこまで重要だとは、気づきませんでした。農業に興味を持つ学生がそこまでいないので、これから農業をする人はあまり増えないと思うし、さっき調べたんですが、退職した勤労者の就農というのも現在期待できないみたいなので、実質農業の経営は難しいみたいですね。だからこそ農業支援をしなくては、ということなんですね。小作農の復活は確かにいいかもしれません。

花園祐 さんのコメント...

 小作農の復活案は、我ながら複雑な案です。友人とも長い間議論して作った内容なので自信はある一方、小作農というかつてはさげすまれた身分をまた新たに復活してもいいものか、難しいところです。別の友人なんか、「水呑百姓とは言っちゃいけないね」とまで言うし。