まず前回に書いた記事の中で取り上げた、日本人の自意識の向上についての参考文献を紹介します。
「他人を見下す若者たち」 速水俊彦 講談社現代新書 2006年
ブックオフで見つけました。
それでは今日の本題です。昨日、政府は中学校向けの社会の資料集における日本の領土問題の範囲に、これまでの北方領土問題に加え韓国と領有権でもめている竹島問題を記載することを義務付けること発表しました。このニュースに対してどの新聞も今朝は一面に持ってきて、テレビでもバンバン流しています。
そして当事者である韓国はというと、入ってくる情報では早速民間団体がデモをやり、韓国政府も駐日大使を抗議の意味を込めて召還することを発表しました。
もっとも、この駐日大使の召還については韓国政府も一時的なものとあらかじめ発表しており、事態を深刻なものへとする意思はなさそうです。日本への抗議というよりはむしろ、私はこれは韓国国民に対するパフォーマンスな気がします。
というのもこの竹島問題では現状で、圧倒的に日本が有利な立場にあるからです。私は日本の言い分しか聞いていませんが、この竹島の領有権では私は日本に分があると思います。その理由というのも一点につき、竹島を含む韓国が主張する領土線は、あの李承晩ラインだからです。この李承晩ラインというのは、韓国の初代大統領である李承晩が訳のわからない主張をして、それこそ文字通りに地図上に勝手になぞった線を領土線として戦後のどさくさにまぎれて決めたものです。さすがにこの勝手な行動に対して、アメリカですら怒ったといいますし、日本の側としても、この勝手に決められた領土線を侵害したとして当時多くの日本の漁船が拿捕されたことを考えると、いささか腹の立つ思いがします。
そんなんだから李承晩の後には誰もこの領土線を主張しなくなりましたが、竹島だけは領有権があるとして未だに主張しているという話を聞きます。それ以前の過程を考えても、また国際司法裁判所で白黒つけようという日本側の提案を毎回韓国側が拒否している(これは韓国のジャーナリストも認めている)ことを考慮すれば、私は竹島は日本側に分があると思います。
それでなぜ日本が圧倒的に有利な立場にあるかですが、以上の領有権の論拠だけでなく、日本側はこの問題をいくらでも好きに主張できるからです。逆に韓国はというと、そうじゃないと私は思っています。
それはなぜかというと、韓国は前の記事でも書きましたが、「愛国無罪」という言葉があるくらい愛国心が強い国家です。しかし今の日本からすると想像しづらいものですが、ナショナリズムというものは追い風になると非常に心強いものの、逆風へと容易に変わっては国の政府を一挙に追い込みかねない思想なのです。
日本の場合だと、戦前の軍隊に蔓延した強烈なナショナリズムが二・二六事件や五・一五事件といったクーデターや暗殺事件が連発しました。これも昨日に書きましたが、過ぎたるは猶及ばざるが如しで、ナショナリズムは今の日本みたいになさ過ぎても困るし、ありすぎても政府にとっては困るものなのです。
現在、私の目からすると韓国や中国のナショナリズムはあり過ぎる状態にあります。中国については毎年のサッカーのアジアカップで言うに及ばずですが、韓国においてもこの竹島問題では逆批判があると聞いています。その逆批判というのも、
「日本が竹島について領有権を主張しているのに、政府は何も対抗策を出していない」
というような、国民から政府への批判です。先ほど言った、大使召還がパフォーマンスといったのは、こうした批判をかわすためではないかと睨んでいます。
片や日本は普段弱気な政府が急に強気になり出すと、以前ではそうも行きませんでしたがこのところは国民も「よく言った」的なノリで支持率回復につながるようになってると、ここ数年間観察してきて思います。つまり、日本側はこの竹島問題でどんどん強気に発言できる立場にあるのに対して、韓国は日本に強気な態度をとられるたびに国民を納得させなければならないお家事情があり、本音では頼むから黙っててくれといいたい状況にあるのです。まだはっきり出ていませんが、恐らくこの問題が長引けば、韓国大統領への支持率は落ちていくと思います。
ただ、今回のこのニュースで気になる点がいくつかあります。そのひとつはタイミングです。
実は先週に、アメリカの新聞に韓国の複数の団体から、
「知ってますか? 独島(竹島)は韓国の領土なんだって」
という意見広告が載っていました。そんなことがあった次の週にこれですから、何かしら政府内で動きがあったか、もしくはたまたま偶然だったのか、現状ではどっちかを判断する材料がありませんがこのタイミングの不気味さには思うところがあります。まぁ教科書の内容なんですし、前々から決まっていたけど意見広告載せてきたから牽制のつもりでこのタイミングで投げちゃえ、というような感じだとは思いますけど。
最期に、この問題に対する朝日新聞の今朝の社説に触れておきます。
「だがここは冷静になりたい」
社説の中のこの一言に尽きます。内容を要約すると、もっと話し合って日韓で仲良くなろうよ、というような社説で、どこをどう見てもこの問題の背景、歴史、果てには朝日新聞としてはどっちに領有権があると思うのかという立場すら書いていません。これじゃ新聞失格と言われても仕方ないでしょう。
さらにおまけに言うと、以前ある人から、このところの朝日新聞は一面から三面までどこをどう見ても事実関係の報道しか書いておらず、問題の具体的な解決方法の提案や今後の見通しを書かなくなり、三流に落ちているという批判を聞きましたが、この社説においてもどうすれば日韓が納得するかという話は一切書いていませんでした。
敢えて私の立場から言うと、日本は現状で圧倒的に有利な立場にあるのだから、ここはひとつ佐藤優流に「領土問題で相手が要求を出してきたら、もっと大きい要求をこっちも出す」という鉄則に則り、日本の韓国大使に一足早い夏休みを日本でとってもらうとかいいかもしれません。夏休みの期限は、駐日韓国大使が頭下げて戻ってくるまでとか。
このところ朝日を誉める記事が多かったから、たまには批判しないとね。
2 件のコメント:
竹島問題ってずっと討論されているけどなかなか解決しませんよね。韓国のほうでは国民全体の意思で竹島を自国のものとしようとしているのに、日本では国民の間ではそんなに関心がないのが気になっていました。結局どっちのものなんだろうというのが僕の正直な感想です。両国とも主張に根拠があるし、歴史的にもなんか江戸時代に日本が韓国に対して「竹島は韓国領である」という文書を送っているらしいし、本当にどっちの領土なのか決定力にかけている問題だと思います。だから、解決しないんだろうけど。結果的に、韓国の竹島に対する熱気が日本人が竹島に目を向けるきっかけになったのは、よかったかなと思います。今までは、日本人は関心がなさすぎたから。
日本の場合はネット(主に2ちゃんねる)での韓国批判からこの竹島問題が広がったように思います。逆を言えば、国の政府側からは北方領土問題ほど大きくこの問題を国民に提示していなかった気がします。
私も、この問題についてはまだはっきりしたことは言えません。日本側からの意見だとやはり日本に有利な意見ばかりになりますし、一番ベストなのは韓国語を覚えて向こうの主張を見てみることですが。この際英語でもいいけど。
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