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2010年1月17日日曜日

人口減の何が問題なのか

 Sophieさんの「フランスの日々」をこのところ見ていると、なんかしつこく面倒そうなコメントをしている人がよくやってきていて傍目にも大変そうに映ります。私のブログではあんまりそういう変なコメントは少ないですけど、記事の内容にあまり関係なく感情的にただ賤しめるだけのコメントとか来るとやはり頭に来るものです。
 折角ですので一つ晒すと、出張所の方の「私選、三国志名場面トップ3」という記事にて、特に記事中では言及していませんが小説の三国志演義の名場面をピックアップしているのに何故か、「正史を知らんな。いつもの悪い癖?話にならん。」という、勝手に正史準拠だと決め付けてコメントしたこのbuteiという人にはこんな読解力もない人間でも文字の読み書きは出来るんだと、怒りを通り越して笑っちゃいました。ちなみにこの記事で挙げた三つの場面は、正史でも演義でも大差ない場面です。

 逆に辛らつなコメントでもそれが非常に的を得ている、私が見落としている内容の指摘である場合は逆にうれしく感じます。ブログ上だけではありませんが、実際の議論でも人を批判する際に落ち着いて着実なことを指摘する人はこちらからの意見にもよく聞く耳を持ってくれる人が多いのですが、その逆の批判をする際に入れなくてもいい罵倒語を必ず入れる人ってのはあまり関わっても得るものが少ないです。

 そういったことはさておき、このところのSophieさんのこれからの日本について提起している記事に寄せられているコメントにてよく、「日本は少子化だから駄目だ」、「人口減の中でそんなうまくいかない」などという意見がよく目に付きます。

 この人口減という言葉ですが、結論から述べると私はこれは世間で言われているほど日本の国力、というよりは日本人の未来を削いでしまう原因ではないと前から考えています。そうは言っても人口が減れば税収は減るし、年金制度は成り立たなくなるし、働き手もいなくなるじゃないかとみなさん思われるかも知れません。
 しかしここで冷静に考えてください。人口が減るということはその人口を支えるために必要な作業、資金、人員の数も同時に減るということです。一例を挙げると一億人の社会の人口を支えるために必要になる食糧生産量は、人口が半減するとそのまま必要な量も半減します。同様に介護に必要な人員、年金制度維持に必要な税収も半分になり、人口が減ること即すべてが成り立たなくなるという意味ではありません。

 しかしそうは言っても今の日本は急激な少子化社会で、これまで勤労者十人で一人の老人の年金を支えていたのに対してこのまま行くと勤労者二人で一人の老人の年金を支えなければならなくなるので、日本人一人当たりの負担が大きくなるというのは事実です。しかしこれなんか自分も結構調べましたが、団塊の世代に当たる1946年から1948年生まれの人口が今の日本の中で突出しており、言い方は悪いですがこれらの方が年金を受け取り始めて亡くなられるまでの受給期間を乗り越えさえすれば日本の人口ピラミッドの構造は大分改善されます。因みに平均寿命を80歳とするとその乗り越えねばならない期間は2011年から2028年の18年間です。

 私は以前からそういう風に考えており、いわばこの18年間をどうやり過ごすか、この間のみ時限立法のようにして新たな税金を徴収したり基金を積み立てさえすれば最悪の事態は避けえたのではないかと考えていました。
 しかし現実はというと、この年金の問題が大きく取り扱われるようになった2004年から6年経った今でも、なんら制度の改革や対策は打たれませんでした。

 ここで今日二つ目の結論ですが、日本の人口減が何故ここまで大きな問題になったのかというと、政府がこういう風に少子化になっていく傾向が明らかにわかっていたにもかかわらず、そのような社会に対応した制度へとなんら改正せずに元の制度を維持し続けていたから問題になっているのです。言ってしまえばそもそもの少子化対策も90年代初期にはこのままじゃまずいとわかっていたはずなのに、今の今までこれという少子化対策がなされてきませんでした。また年金制度についても、早くからとっかかっていればどうとでもなんとでも対応はまだ効きました。つまり人口減自体が問題ではなく、その傾向に対して何の対策もせずに放っていた政府が一番問題なのだと私は言いたいのです。
 さらに言うと日本政府、というより官庁は90年代からほぼ一貫して日本の経済力が毎年5%前後成長することを前提にしてこの様な制度を作り、維持し続けてきました。しかしのっけから日本の経済成長はそんな5%はおろかマイナス成長する年もあり、そうした低成長時代もまるきり想定されておりません。

 こうした問題は現在進行形でまだ続いており、手を打つのが遅ければ遅いほど傷口が広がっていく問題です。更にここで思い切って対策を打とうとしても、すでに国債が山と詰まれた現状では十年前、二十年前と比べると使える手段の幅も大きく狭められているのも事実です。
 基本的に世の中というものは単純な図式を求めたがるもので、この問題も「日本の社会が悪いのは少子化、人口が減っているからだ」、という意見がわかりやすくて単純なもんだからあちこちで飛び交っているのでしょうが、一体これらがどのようにして社会に悪影響を与えるのかきちんと認識しておく必要があるでしょう。また政府の、「日本が駄目なのは少子化のせいだから、もっと子供を生めよ増やせよ」という意見に対して、「日本が駄目なのは少子化に対応する政策を作れない政府が悪い」と言い返す態度も時には必要かと思います。

  補足
 人口が減る場合、その当該社会の中はともかく外国との通商が絡むとGDPが下がるので国力が落ちるのは事実です。日本は食糧を海外から調達しているのでその点ではちょっと弱くはなりますが、その分自給率を上げるなどといった対策で人口減社会に対応はまだ可能だと私は思います。

2 件のコメント:

Madeleine Sophie さんのコメント...

花園さん、コメントの件は共感します。多くの読者がいるブログも中身の無いコメントを回避する方法がなくてコメントを承認制にしたりしてますね。ウチもどうしようかな〜ってところですね。承認する手間も面倒なので現状維持にしていますが。

日本の人口減少については花園さんと同じくそれ自体が問題とは思いませんが、いろいろな制度を変革して行かないといけないでしょうね。「フランスの日々」では移民という選択肢を考察して行こうと思っていますが、今月は忙しくて出来そうにありません。反対意見も多そうな話題ですしね。興味があれば花園さんもぜひ、移民についても考えてみてください。

花園祐 さんのコメント...

 こうして意見を主張するブログをやる以上、わけのわからないコメントにも対応するのも義務だと言い聞かせていますが、それでもやりきれないものとかありますね。

 移民については実は密かに準備をしているのですが、目下のところ日本では外国人参政権の議論で揺れており、それに関連する形で書いてみようかと思います。
 結論を先に書くと、この記事でも書いているように日本は少子化への対応が遅れたため、移民を受け入れざるをえないと見ております。