2010年1月4日月曜日

公定歩合とデフレ対策について

 友人にはあまり相手にするなと言われるのですがネット上の経済談義にてよく、下記のような発言が見受けられます。

「デフレデフレというけど、デフレの反対のインフレを誘導する、つまり日銀が万札をどんどん刷ればこんなのすぐに解決できるだろう」

 もちろん私の認識の方が間違っているのかもしれませんが、この様な発言を見るにつけどうしてこう頓珍漢なことを臆面もなくいえるのだろうか、なんかいろんな意味で疲れてしまいます。
 結論から言えば、現在の日本でデフレ対策のためにインフレを誘導する事は不可能と断言してもいいかと思います。というのも日本はすでに十年以上も、万札をそれこそ湯水の如くジャブジャブ刷っているにもかかわらず市場に全く流通せずにデフレが進行し続けているからです。

 日本のお金は日銀こと日本銀行が発行しており、どのようにして貨幣流通量をコントロールしているのかというと、あんまりはしょるのはよくないのですが単純に言って金利こと公定歩合を上げ下げすることで制御しています。この公定歩合というのは、なんか最近名前が変わって「政策金利」になっているそうですが、中央銀行である日銀が一般の民間銀行に貨幣を貸し出す際の金利で、この金利にしたがって我々が民間銀行に預けるお金の金利も上下します。ですので市場にあまり貨幣が流通してもらいたくない過剰なインフレ時にはこの公定歩合を上げることで民間銀行の金利も上がり、高い金利があるので一般預金者もお金を銀行に預け、市場からお金が減っていくとされています。

 逆にデフレ時には、「銀行にお金を預けても金利がつかないのだから、とっとと使ってしまえ」と思わせるために公定歩合は下げることで民間銀行の金利も下げさせ、市場にお金が流通するように仕向けるのですが、百聞は一見にしかずとも言うので日本の公定歩合の推移を見てみましょう。

基準割引率および基準貸付利率の推移(日本銀行サイト)

 見てもらえばわかるとおりに1973年から1991年までは大まかに5%前後で推移しているのですが91年以降は下がる一方で、95年からはとうとう1%を割ってしまいます。最近はほとんど使われる事はなくなってしまいましたが、一時期によくテレビの討論番組などで使われていた「ゼロ金利政策」というのはこの公定歩合が1%を割り切った状態の事を指しており、先進国でここまで下げたのは実は日本が最初です。
 それにしても、01年の0.5%から0.1%の下げ方なんて真面目にやっているのかと言いたくなるような下げ方です。

 この「ゼロ金利政策」がどのような意味合いを持っているのかというと、単純に行ってデフレに対して日銀が打てる手段がもうなくなっているということです。たとえるなら壁に背中をつけてボクシングをやるようなものでデフレの進行に対して金利政策は出し尽くしており、逆に言うのならばこれだけやって貨幣を市場に出回らせようとしても一向に出回らず、デフレの進行を食い止める事ができないと言うのが今のデフレの手ごわい面だという事です。

 これはあくまで私の持論ですが、05年の郵政選挙にて自民党圧勝した際に一時的に日本の景気はよくなりましたが、私はあの瞬間になんとしてもこの「ゼロ金利政策」を撤廃し、公定歩合をそれこそ1%にまで引き上げるべきだったと思います。0.5%と1%では絶対値上は0.5%の差ですが倍数上は2倍であり、言うなれば預金金利が従来の2倍になります。当時はまだ余裕があり、あの一瞬でもいいから金利を引き上げていれば今ほど壁に背をつけずに、一歩後ろに下がる余裕くらい作れたのではないかと思います。
 これと同じような考え方を当時持っていたのは他でもなく竹中平蔵氏(当時総務大臣)で、日銀の福井俊彦総裁(当時)に対して執拗にゼロ金利からの脱却を迫っていたもののとうとう日銀が決断に至らずわずかにしか公定歩合を上げなかったことに対して、かなり強烈な表現を使って批判していました。

 では現在のデフレに対してどのように対処すればいいのか、はっきり言って現時点で有効だと思える手段は私には浮かびません。敢えて言うならどこかで数年に渡るような大規模な戦争を起こすか、日本のブロック経済化を進めた上で国内の生産力をなんらかの方法によって急減させるという劇薬的な手段なら、多少の道筋は見えてくるかと思います。
 はっきりいって現在のデフレ、ひいては世界的不況は過去かつてないものであって、従来の対策が果たして効果があるのか非常に疑わしいものです。浜矩子氏ではありませんがまずは現状分析を先にやり、その上で何が有効なのか一から対策を練ることこそが最速の手段でしょう。

 まぁまずやらなきゃいけないことは、金融関係企業への規制強化以外の何者でもないのですが。

7 件のコメント:

  1. いい年こいて経済のことが何もわかっていない人も少なくないかもしれませんね。

     私の友人も言っていましたが、不況だと言っていても不況だと感じることはないし、経済の動きを実感しにくいと言っていました。確かに普通に生活する分には、物の値段が少し変わるぐらいで、そこまで生活に変化は現れないよなって気がします。

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  2.  この記事はできるだけ単純に今の経済状態を説明した記事ですが、きちんと中学や高校で公民の授業を受けていないとわからない内容でしょうね。

     言われるとおりに不況と言っても、あまりに意識するのはかえって精神的にもマイナスでしょうし、もう少し楽観的に構える方がいいでしょう。ただデフレについては気がつかないところでヒタヒタと進行していて、気がついたら大変なことになっている事もあるので少し注意した方がいいでしょう。少なくとも、1000円ジーンズは安すぎないかと疑うくらいは……。

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  3. 政府には、インフレを起こすとても簡単な方法があります。それはヘリコプターで諭吉をバラ撒くことです。

    100年前の世界恐慌のとき、今回と同じように猛烈なデフレが起き、人々が一斉に銀行に駆け込んで次々と預金の引き下ろしをはじめるので銀行がバタバタと潰れていきました。

    その時の大蔵大臣の高橋是清が何をやったかというと、片面しか印刷していない急造のお札を大量に印刷して、銀行にドカンと「融資」をしました。
    引き下ろしたければいくらでも引き下ろせばいい、好きなだけ返済する、と。これを行ったところ銀行や企業の倒産がおさまり、恐慌からいち早く脱出することに成功しました。

    100年前と同じことを今やれば、すぐデフレなんて脱出できます。とても簡単であるし税収がすぐに回復するから確実に財政再建に近づけるのですが、なぜか鳩山政権はデフレをどんどん加速させる政策を一生懸命やってますよね。なんでみんなあんなにデフレが好きなんでしょうね?

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  4.  Yukiさん、コメントありがとうございます。

     折角コメントいただいたのに申し訳ないのですが、私は過去の高橋是清の方法では現代のデフレは克服できない、というよりすでにやっていても効果が出ていないと考えております。
     すでに日本政府もデフレを克服しようと、この記事で書いたように日銀の公定歩合を実質0%にまで下げてそれこそ湯水の如く万札を刷っていますが、それら通貨は一向に市場に流通しないままでおります。また万札をヘリコプターで撒けばいいという案ですが、すでに麻生政権時代において総額2兆円もの定額給付金が国民にばら撒かれましたが、これが何かデフレの克服に貢献したのかとなると全く無意味に終わったとしか現状では見れません。

     この記事の後半に書いておりますが、今の日本や世界で起きている不況は明らかにこれまでの不況とは一線を画すものであって、昔に有効だった政策が必ずしも今でも有効であるとは言い切れないと私は思います。そもそも高橋是清の昭和恐慌は銀行への信用不安だったのに対し、今回は銀行というより老後や失業後といった将来への社会保障への不安が通貨の流通を妨げているように思え、原因が全く違うかと思います。

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  5. 経済学では「フィリップス曲線」という言葉があります。

    これは、景気が良くなって失業率が低下しきって人手不足になると物価が上昇し、景気が冷えきって失業率が上がると物価が下落する現象を示したものです。

    今の日本では、地価が年率-10%で下落し続けるなど、すごい勢いで物価が暴落し続けています。これと同時に失業率が極めて高い水準で推移しています。(就職を諦めてニートになったり年金暮らしをしている人、雇用調整金を貰って社内失業している人を合計すると25%〜30%くらいに達するでしょう)

    日銀が金利をゼロにしているとおっしゃっていますが、実質金利(名目金利+物価下落率)は、極めて高い水準です。例えば、土地を買うことを考えると、買った土地が一年後には10%値下がりする場合、名目金利が0%であっても、実質金利は10%になります。

    そのため、誰もモノや土地を買わずひたすら現金がタンスに積み上げ続けられています。

    麻生政権の2兆円バラまきに効果なかったのはゼロが二つ足りなかったからです。前回の世界恐慌の時のアメリカでは、小出しのニューディール政策だけでは恐慌を脱出することが出来ず、結局は第二次世界大戦に突入して軍事費をバンバン支出しはじめることでようやく縮小均衡から脱することができました。

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  6.  うーん、おっしゃりたいことも分かるのですが、どうもスタンスの違いゆえにYukiさんの案に私は同意できません。
     物価下落が大きく実質金利は思われている以上に高いというのはその通りだと思いますが、その状態こそがまさに「デフレ」という現象であって、ちょっとこの順番が逆なのではないかと私は思います。

     恐らくYukiさんはデフレだからみんながお金を使わずタンス預金が増えているのだと言われてるのかと思いますが、私は逆に、別のある原因が先にあってみんなお金を使わなくなり、それゆえにデフレが起きたのだと考えています。そしてそうやって起きたデフレによって更にみんなお金を使わなくなる、この負の連鎖のこそがデフレスパイラルであって、Yukiさんの案だと根本的原因への対処ではないように私は思うわけです。

     ではその根本的原因というのは何かというと、この点は議論の余地がありますが私は日本人が持つ老後や年金といった将来の不安において他ならないかと思います。そして何故そのような不安を覚えるかというと、国家の借金が大きくなり払った掛け金が返ってこなくなるかもしれないと、漠然と感じているからじゃないかと考えています。

     最初にスタンスの違いと話しましたが、私はどちらかといえば新古典派に属して、ケインズ的手法についてはかねてより疑問視しています。Yukiさんの言われる通りに、アメリカのニューディール政策は二次大戦の開戦がなければ失敗に終わっていたと思います。私はそもそも、財政出動は一時の景気浮揚に影響を与えても、根本的な解決にはつながらない政策だと考えております。

     そう思うのも日本は失われた十年の間に何度も財政出動を繰り返しておきながらとうとう何の効果も残さず、それについてケインジアンは皆口を揃えて、「財政出動額が足りなかったのだ」と言っていますが、私には何故、どれだけ足りなかったという分析なくしてこのような言い方をするのはやっぱり根本的に間違っていたのではと思います。第一、そうして積もり積もった借金が原因で今の社会不安が起き、デフレになったというのならなおさらだし。

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  7. 90年代の景気浮揚の失敗は、結局「穴を掘って穴を埋める」ことを繰り返したためであると思っています。
    GDPの増大に一切寄与しない公共事業には私も全面的に反対です。

    しかし、だからといってすべての公共事業が無意味かといえば、それは違うのではないかと思いますね。

    50年100年先にも必ず使い続けられるような、有意義な事業については多少金額が大きくても、積極的に取り組むべき時期なのではないかと思いますね。

    たとえば、今ロンドンとパリは高速鉄道や車を使って行き来をすることが可能です。ドーバー海峡にトンネルを敷設して、カートレインと高速鉄道を走らせているからです。イギリスはこの効果もあって大きな経済成長を遂げました。

    これと同様のことを対馬海峡や黄海で行えば、日本と韓国、中国の間で物流や人の往来が容易となり、著しい経済効果が期待できます。対馬海峡トンネルでおおむね10兆円ほど必要だそうですが、それっぽっちで済むならむしろ安い気がしますね。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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